覚悟の朝
一夜を過ごしたあと、ミヤビは決心する。
生きるために何をするべきかを。
ミヤビは太陽を浴びて目を覚ました。
まだ起きたばかりでまどろみの中にいる。
綺麗でふかふかのベットは気持よく、それだけにまだ眠っていたいのだ。
目覚めのあまり良くないミヤビはそのまま横になったままだ。
もう一眠りしたい気持ちで一杯だった。
「!?」
だが不意に目が覚めた。
昨日のことを思い出したからだ。
昨日は飲んで寝ちゃって!!
ミヤビは顔が赤くなる。
ご馳走してくれたマリアに情けない姿を見せてしまった。
申し訳ないという気持ちで一杯だった。
そのうえドレスのまま寝てしまって、皺を付けてしまった。
その恥ずかしさから、ミヤビは飛び起きた。
そして急いでドレスの皺を手で伸ばす。
「って伸びるわけ無い!」
焦って取り乱している。
そこに声をかける者がいる。
「ミヤビ様。おはよう御座います」
「えっ!」
扉に近くに男が立っていた。
男は昨日ミヤビを部屋に運んだ男と同じ外見をしていた。
ミヤビは慌てて弁解する。
「いえ、これは!あっ、昨日はお騒がせしました!」
「大丈夫ですよ。朝食の準備が整いましたので起こしに参りました」
「はい!今行きますシンさん」
「・・・・」
シンと呼ばれた男は無言になる。
呼ばれた名前は正しい自分の名前である。
それはつまり彼女が自分とリンを見分けたことになる。
その衝撃があった。
だが、シンは追求しなかった。
それは些細な事だというように。
「用意することはありますか?お手伝いしますが」
ミヤビは慌てて手を振って応える。
「いえいえ!!参りましょう!!」
「はい。ではこちらへ」
そう言って扉の向こうを示した。
シンとミヤビは廊下に出て、その長い廊下を歩く。
シンが先導して先に歩き、ミヤビはその後に続く。
2人はその間無言だった。
しばらく歩くと、昨日夕食を食べた部屋に出る。
大きくて長い長方形のテーブルが中心に置いてあった。
その端にはマリアがもう既に座っていた。
「あら、おはよう」
マリアは微笑んで挨拶した。
それに対し、慌てて返事を返した。
「おはようございます」
見ればリンがマリアの傍らに佇んでいた。
ミヤビはリンにも頭を下げる。
「さぁ座って。朝食をいただきましょう」
マリアはそう言って座るように促す。
ミヤビもそれに応じて、昨日と同じマリアの右側に座る。
すぐに、料理が運ばれてきた。
サラダとパンなどが並ぶ。
それらを掴んで口に運ぶ。
やはり美味しい。
食べながらマリアと話をする。
「ねぇ昨日の花畑行ってみない?」
「今日はどの服を着ましょうか」
「城を案内しなければね」
そういう話を次々とマリアはする。
ミヤビは頷きと単純な返答のみで答えていた。
ミヤビは昨日から考えていることがある。
自分の身の振り方についてだ。
この世界は今までの現実とは違う。
とりあえずそう思うことにした。
その上で、この世界でどうやって暮らしていこうかと考える。
この世界のことは殆ど知らない。
知っているのは昨日のマリアの話と、花畑があり大きな城があるということ。
そしてマリア達がいること。
そう思い意を決した。
「メアリ様・・・」
「ん?どうしたのミヤビ」
「ここに住ませてください」
ミヤビはマリアにそう言った。
マリアはその言葉を聞くと嬉しそうに頷いた。
「それは良い!よろしくね!ミヤビ」
そう喜ぶマリアに対してミヤビは言葉を続けた。
「もう一ついいですか?私に、仕事をください」
「仕事?」
マリアは首を傾げた。
「そうです。ただで済ませていただくのは申し訳ないです。仕事をさせてください」
「そんなこと気にしなくていいのに・・・。でもそうね。それもいいかもしれないかもね。ジャクリーン」
マリアはそう言って手を叩いた。
叩いた音に反応して、初老の女性が部屋に入ってくる。
老婆は黒を基調とした服の上に白いエプロンドレスを来ていた。
いわいるメイド服なのだとミヤビは思った。
そのメイド服を着た女性は、皺の入った顔の中のキリっとした目でマリアとミヤビを見た。
ミヤビは威圧的にも取れるその女性をみて怖そうな人だと思った。
そして女性はマリアに向かって静かに呟いた。
「お呼びですか?マリア様」
「うん。この子はミヤビというのだけど、仕事がしたいって言ってるから使ってやって」
その言葉と聞くと女性の目がギロリとミヤビを見た。
「この娘ですか?本気ですか?」
ミヤビにもマリアにも問うようにそう呟いた。
とりあえず、ミヤビは一つ頷く。
マリアは一言付け加えた。
「ああでもあんまりこき使ってやらないで。私もミヤビと遊びたいから」
女性は頷いた。
「分かりました。ですが、食事の後、しばらくこの子を私に預けていただけますか?」
「それは勿論。お願いね」
「では、ミヤビと言いましたね?食事のあとここに残りなさい」
「は、はい・・・」
「声が小さいです」
「ハイ!!」
「お淑やかさにかけますね。まぁいいでしょう。では」
そう言って女性は部屋から出て行った。
それを見てマリアは笑った。
「彼女はジャクリーンメイド長。私付きのメイドたちをまとめている人よ?優しい人だからよろしくね」
「は、はい」
ミヤビは気後れしながらも返事をした。
そして残りの食事を食べ終わり、メアリを見送ると部屋に1人になる。
メイド長ってなんだか最強ってイメージあります。