夜中の来訪者
王の口から語られた事実はマリアを蝕んだ。
そこに現れた来訪者はよく知る顔だった。
マリアは王との謁見を終え、自室に案内された。
王から告げられた事実に対して、マリアは耐えていた。
努めて平静を保とうとしていたのだ。
だが、部屋に戻った瞬間にそれは崩れた。
部屋の扉を閉められると同時に、マリアは床にへたりこむ。
「なんでよ・・・。またなの・・・?」
そう呟いた。
以前のメイド仲間と同じだ。
マリアが疾走して彼らは自分と二度と会えない状況になった。
今回はその原因のマリア自身が、死んだのだ。
マリアは混乱する頭で考えた。
シンにどう伝えよう。
ガイウスには?ジャクリーンには?
そんなことを考えている。
そして何より、自分がマリアとして生きなければならない。
その事実が重く感じられた。
今までは"マリアのため"と割りきって行動できた。
だからこそ、大胆な行動も出来たし、それを達成することも出来た。
だが、今の私は本当に一人で・・・・?
一人で生きていかなければならないし、一人でこなさなければならない責任もある。
「・・・・・」
呆けるマリアに、シオンは声をかける。
マリアは返事をしなかった。
正確には返事が出来なかった。
何を言われているか、周りがどういう状況かが分からなかったからだ。
そうして何時間も過ぎる内に夜になる。
「あ・・・・」
涼しい風が、マリアの頬をなでてマリアは正気に戻った。
マリアは腰を上げて、ベットへ行く。
城は静かで、もう夕食の時間は終わっているだろう。
特に空腹でも無かったためどうでも良かった。
そうなると、湯浴びも無理ね。
そういってベットに移動し、腰掛けた。
ベットの軋んだ音がした。
「ふぅ。これからどうしよ・・・」
この時は"マリア"は"ミヤビ"に戻っていた。
「また・・・」
またと呟き今までのことを思い出す。
初めは元の世界で家を飛び出し、城で働いてそしてマリアになって領地を守った。
それも全て自分が"しなければならない"と思っていたからだ。
だが、今ではそれは通用しない。
何も考えず、"しなければならない"という状況はどれほど楽か、マリアは知っている。
"何をしたいか"という想いの重さも。
そのことにしり込みする。
「ふぅ」
また、マリアが溜息をつく。
「マリア様。いかが致しました?」
マリアに声をかける人がいる。
「誰!?」
マリアは驚いて咄嗟に誰だと問いながら、声の方向へと視線を動かした。
「シンでございます。姫様が心配になって追いかけてきました」
マリアが目を凝らして、その人物を見る。
闇に浮かぶのはシンの姿だった。
だが・・・。
「生きていたのですね。リン様」
「やっぱり、騙せませんね。ミヤビ様」
そういって男は笑った。
そうして、金属音を響かせた。
それは刃物を抜く音だとマリアは直感した。
「何故、ミヤビ様がマリア様になっておいでなのですか?」
「なんででしょうか?私が知りたいくらいです」
そう言いながらマリアは手に力を入れて拳を握った。
「はは!いいですね。呑気で!!」
リンはそう言いながらマリアに向かって走ってきた。
シンの刃がマリアに向かって走る。
直前に迫る刃に対してマリアはベットに寝そべる様に体を後に倒した。
そしてマリアはそのまま後転をし、その勢いでシーツを上方に投げた。
上方に投げたシーツは、マリアとリンの間でヒラヒラと舞う。
リンはシーツによって視界を遮られたが、マリアのいるはずの場所を予想し、そこに刃を走らせる。
「ツッ!」
リンがベットに刃を突き立てる。
だが、手応えは無い。
「どこだ!?」
リンがシーツを手で払う。
その先にマリアの姿はない。
「!?」
リンは焦った。
仕留め切れなかった。
長引けば不利になる。
「どこだ!?」
またリンは怒声を上げた。
「ここよ!!」
リンは下方からその声を聞いた。
そして、足を横薙ぎに払われる。
ベットの下だ。
マリアは後転したあとそのままベットの下に潜り、リンに向かって足払いをした。
リンは足を蹴られ倒れる。
マリアは手応えだけでリンが倒れたと判断すると、ベットから這い出て、扉へ走る。
逃げるためだ。
「くっ!!」
リンは苦しそうな声を上げ、体を起こそうとする。
その時のはもう、扉の寸前までマリアは走っていた。
リンはそれを見ると、苦し紛れというふうに刃を投擲する。
マリアに向かってだ。
刃はマリアに向かって真っ直ぐ飛んで行く。
マリアは扉にたどり着く。
「鍵が!!」
鍵がかかっていて、外す時間がいる。
マリアは振り向いた。
リンの行動を見て対応しようと思ったからだ。
振り向いてた瞬間は、リンが刃を投擲した瞬間。
「は!!」
マリアは驚いた声を上げ、腕で顔を覆う。
そのマリアにリンの刃が迫る。
マリアが怪我を覚悟した瞬間、声が響く。
「全く姫様の護衛ってのは、退屈しないねぇ」
マリアが恐る恐る目を開けると、目前に見えたのはシオンの背中だ。
シオンは指の二本で飛んでくる刃を挟んで止めた。
「アンタ誰だい?シンに似てるけどさ」
シオンはリンを睨みつけた。
「・・・・」
リンはシオンの質問に答えず沈黙していた。
沈黙しているリンを見てシオンは頷く。
「そうかい。なら黙ったままでいいから、死にな!!」
そういってシオンは刃を投げ返そうとした。
「シオン、待って」
シオンはマリアの静止の声で動きを止める。
「リン様。うちに来るきはありませんか?」
「誰が!!私は姫の無念を晴らす!!それまでは誰の下にも就かない!!」
マリアはその答えを聞いて頷いた。
「今から私を殺しますか?私とこのシオンが相手になります」
「くっ」
「無理なら逃げなさい」
「!!」
リンとシオンは驚いた。
「いいのかい?アンタを殺そうとしたんだよ!?」
「今回は不問にするわ」
「大した余裕だな。偽物!!」
「本物も偽物もありません。私がマリアです」
「っ!」
リンは険しい顔になった。
そうして、立ち上がり窓へ向かった。
「クソッ!」
リンは窓から飛び出そうした。
「今度来るなら、昔話をしましょう?今度はシンも一緒に」
「・・・・」
リンは答えずに窓から飛び出した。
それを見てマリアとシオンは安堵した。
そしてシオンはマリアに話しかけた。
「なんだか。私の分からない話になってるね?」
「そうでもないわ。貴女も関係有るわ」
そういって、マリアは唇を噛みしめる。
その後決断した。
これからどうするべきかを。
そして、シオンに言った。
「領地に帰ってから、大事な話があるの。シオン。貴女が私の配下になるなら聞いてくれるかしら?」
「うーん。考えとく。でも私はあんたの秘密にどうこう言おうって気はサラサラないから、秘密にしておいてもいいんだよ?」
「うん。ありがと。でもどうせシンにもガイウスにも話さなきゃいけないことが出来たみたい。その時は貴女も居て欲しいと思う」
「なんでだい?」
「シンが襲ってこないようによ」
「それ、笑えないよ」
「分かってる」
2人はそう言って沈黙する。
その沈黙を破ったのはシオンだ。
「あーやめやめ。暗い話は嫌いだよ。さぁ私が一緒に寝てあげるからアンタも寝な」
「えっ?一人でも寝れるわ」
「危なかったら私が守ってやるよ。その為に近くに居な。大丈夫。こー見えても私は兄弟多いから」
「え?そういう問題じゃ・・・」
シオンは意見するマリアを掴んでベットに投げた。
そしてその隣に寝転んで目を閉じた。
しばらくすると、シオンの寝息が聞こえてくる。
それをみてマリアは笑った。
「ふふ。ありがとうシオン」




