勝利の宴
レオニールを破り、大事を一つ終える。
「勝利だ!!」
誰かが高らかに叫んだ。
敵の進行を食い止め、敵将を打ちとったマリア軍はそれぞれが宴をやっている。
勝利の宴だ。
生き残りの兵達はその生を喜び、また死んでいった兵達の分まで騒ぐ。
酔った兵達は叫び、踊り、語り合っていた。
木材で組み上げた土台に火を放ち、大きな炎を作り、その周りで大声で叫びまわている。
「姫様。よくやった」
そう語るのはガイウスだ。
ガイウスは酒で赤くなった顔をして、マリアに話しかけた。
「ありがとうガイウス。貴方もよくやってくれたわ」
マリアは笑みを浮かべてそう答えた。
「俺は今回は何も出来なかった。自分の力不足が悔しくてなぁ」
「そんなことないわ。私の我儘をよく聞いてくれたし、よく熟してくれたじゃない!」
「そもそも騎士とは、己が先頭に立ち兵を導く事が仕事だ。それを持って騎侯士の望みを叶える事。だが、今回は姫自身を先頭に立たせてしまった」
ガイウスが静かに言った。
それをみたアルマンが口を挟む。
「確かに。俺らは正直楽勝だった。一番大変だったのは姫とその兵だ」
「ガイウスとアルマンが居なければ出来なかったことよ」
ガイウスとアルマンが居なければどうしようもなかった。
それは事実だとマリアは実感していた。
例えば、彼らがマリアを見捨てていたら、私はここには居ないだろう。
そのリスクは勿論あった。
マリアは新参の騎侯士といっても過言ではない。
それは本物のマリアも含む。
騎士と兵の信用がないのだ。
だが、2人は答えてくれた。
敵の殲滅をやってくれた。
だから勝てた。
「それでも、あんなこと考えても、実行する奴は少ないだろ」
そう言ってアルマンは大声で笑った。
「ええ、危なかったわ」
結果を見ればこちらの消耗は少ないが、一瞬一瞬が命がけの戦いだ。
逆の結末になっていてもおかしくはない。
「でも、それでも勝てた。だからそれを肴にして呑みましょう?」
ガイウスとアルマンは姫のその言葉に同意した。
そして3人は乾杯をして、酒を煽った。
冷えた酒は熱くなった喉に流れ込む。
まだ、勝戦のムードが冷め切っていない。
嬉しい気持ちがまだ続いているのだとマリアは感じていた。
「そういえば、シオンはどこにいるんだ?」
アルマンが問うてきた。
「さぁ?でも彼女。こういう席は苦手だって言ってたわ」
「そうか。残念だな・・・」
アルマンはそう言って落ち込んだ。
そして、自分の兵のもとへ酒を持って、歩いていく。
「おーーい!!呑むぞーーー!!」
「おおおおお!!」
アルマンは自分の兵と宴を始めた。
その声は、ともすれば戦場での雄叫びより大きいかもしれなかった。
それを見てマリアは笑った。
「ふふ。楽しそうね」
「アルマンも不安であっただろうな」
「そうね。信用出来ない将の下ってのは、彼にとっては耐え難い事だったでしょうね」
マリアが言った台詞をガイウスが否定した。
「そうではない。あんな作戦を騎侯士本人やらせるのは、騎士としては恥なのだ。今回は必要があったとはいえな・・・」
「まぁ上手く行ったからいいじゃない。今度だって上手くやるわ」
ガイウスは静かに笑った。
ガイウスは酔が入ると静かになるようだ。
「今はそれでいいだろうな」
そう言ってガイウスも兵達のもとへ酒を持って歩いていく。
「今日は宴だ!!存分に騒げ!!」
「おう!!」
ガイウスも彼自身とマリアの兵を囲んで酒を飲み始めた。
マリアはそれを見てため息を一つ。
そして声を発した。
「貴女はどうするの?シオン」
マリアはそう声をかけると、シオンは後ろからマリアの後ろから登場する。
「はは。私はいいさね。苦手なんだよ。こういうの」
「でも、貴女も部下がほしいなら、こういうことも出来なきゃね」
「覚えてくれていたとは嬉しいね」
そう言って、マリアの隣は近づいて座った。
「姫様はよくやったよ」
「マリアでいいわ。様も何も付けないでくれると嬉しいわ」
「マリアと呼び捨てにしろってのかい?いいのかい?」
「2人で話す時はそうしてもらったほうが私も気が楽なの?ダメ?」
「まぁいいさね。じゃあマリア。よく勝てたねぇ」
「貴女がいなければ出来なかったわよ。最初でいきなり死んでたのではないかしら?」
「はは!英雄には剣は通用しないってジンクス知ってるかい?」
「なにそれ?」
「将の資質が本当にあるものなら、死ぬべき所でしか死なない。それ以外では絶対死なない。そういう意味さ」
「そんな事あるの?」
「あるじゃないか!戦場での姫様がまさにそれだったと思うよ。私はね」
「私はそんな資質ないわよ」
「私もわからないさ。ふふ」
シオンはそう言って笑った。
そして問う。
「これからどうするつもり?」
「そうね。戦後処理というなら、王に謁見して、報告するわ」
「そうか・・・。まぁ大丈夫かい?」
「そうね懸念があるとしたら・・・。シオンが付いてきてくれると無いかな」
「は?どうしてそうなるのさ?」
「それは私は貴女に命を預けられるからよ」
そう言ってマリアはシオンに笑いかける。
それを見たシオンはため息をついた。
「はぁ。やっぱ王族は変わってる。いきなりそこまで信用できるもんかね?」
そのため息を付いたあとのシオンは、笑みを唇に浮かべていた。
エピローグ開始します。
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