夕食にて
ドレスを着せられたあと、夕食をご馳走になる。
だがミヤビはマナーに自信がなく、迷いを持つ。
長いテーブルの端でマリアが夕食を食べる。
そして、その直ぐ右側にミヤビは陣取り食事をしていた。
何枚もの食事が乗った皿がどんどん出てくる。
その食事を何本も用意してあるナイフとフォークで食べるのだ。
ミヤビは困惑していた。
流されて今ここにいることもだが、まず食事のマナーなんてミヤビには理解不能の領域だ。
これまでそんなものが要求されるような生き方はしていない。
いままでは、コンビニなどで済ませたり、自分で作ったりしていた。
稀に母が作ることもあるのだが、ここまでの食事は生まれて始めてだった。
えっと、外側から使っていくんだっけ?
その曖昧な記憶に準じる。
そうして、サラダや肉を順々に消化していった。
その苦労をよそに、マリアは楽しそうに笑う。
ミヤビが久しぶりの客であること。
あの花畑のこと。
それらを少しずつ話していった。
時には、ワインを傾けてていたり、ワインをミヤビに勧めたりした。
ミヤビは自分は呑んだことが無いからと主張していたが、少しだけと半ば強引に勧められた。
ミヤビは恐る恐る口を付ける。
一口目の印象は、"苦い"と"酸っぱい"だった。
ミヤビは険しい顔になった。
昔少しだけ呑んだ、缶ビールよりよっぽど酸っぱかった。
だが、缶ビールと比較すると、苦さも少なかったので飲みやすいといえば飲みやすい。
マリアはミヤビの険しい顔を見て、また笑った。
「それも早く慣れなければね」
そうマリアは言った。
マリアはもうミヤビを城に招いて住まわせていると思っているようだった。
実際、ミヤビも諦めかけている。
マリアの熱意は素晴らしいものであったし、ミヤビには上手く断る理由も持ち合わせていなかった。
「ねぇどこからきたの?」
マリアが切り出した。
ミヤビはその言葉に困惑する。
今までは車が道路を走り、人々がせわしなく動きまわる所にいた。
こことは全く違う場所だ。
どう説明したものか・・・。
ミヤビはタドタドしくも失言をしないように答えた。
「遠くの日本という国です」
「ニホン?聞いたことないわ」
やはりここは日本ではない。
とは言っても、こんな洋風な城が鎮座して、綺麗な花畑があるところなど日本では聞いたことがないのでそれは予想していた。
それに、マリアの外見はヨーロッパに風貌そのものだ。
今は自分もだが。
「そのニホンからどうしてここへ?」
ミヤビは困った。
自分でもそれがわからないのだ。
だが、わからないと言えば相手に不審に思われるかもしれない。
どう答えたものか。
うつむいて考えていた。
「言えないのね。じゃあ貴女は神に使わされたのかもね。そういう事にしておきます」
マリアはそう言って納得したようだった。
ミヤビはその言葉がどういう意味なのか理解に苦しんだが、返答せずに済んだのは気が楽だ。
納得してくれたついでに聞いてみようと思った。
自分のいる場所がどこなのか。
「ここはどこなのですか?」
その質問を受けながらワインを傾けていた。
グラスで言えばもう4杯目になろうだろうか。
顔色すら変わらない所を見ると、マリアは相当お酒に強いらしい。
「そうね。じゃあ最初から説明しょうか。ここはアリスティア王国でこの城は私の家であるマキシレオーネ家の所有物よ」
いきなりミヤビは困った。
えーっと・・・。
その2つに聞き覚えはない。
「アリスティアは、マキシレオーネ家の長、フランツ・マキシレオーネが収めている騎士の国。私はそ第六子なの」
つまり・・・・マキシレオーネという大きな家があってその家が治めているのがアリスティア。
国王の名前はフランツ・マキシレオーネという人で、マリアはその第六子。
もしかして、マリアって王族?
姫様ってそういうこと?
いままで敬語は使っていたが、そう言われると驚いてしまう。
不敬罪とかに問われないかしら!?
ミヤビは拙い知識で自分の身を案じた。
「騎士の国ってのは、要は戦いと軍隊が治世の主流ってことね。騎士については?」
ミヤビは首を横に振った。
分からないという意味だ。
「聞いておいてよかった。騎士というのは戦いで戦闘に立つ人たちのことね。特に力のある騎士は騎侯士と呼ばれて自分の領地を持って治めているの。私達王族の子供はみんな騎侯士になり、国防と封建を行なっている。ここまで分かる?」
ミヤビは歴史の知識をフル稼働して言葉を理解する。
封建とは、複数の人間がが王国から貸与された土地を守り、国を分割で治めるということだったと思う。
その国から土地を貸与されたのが、騎侯士でありその下に騎士がいるということ?
騎侯士は例えば男爵や伯爵などの位を表しただけの名前なのだろう。
そう納得する。
本当に知らない世界に来たみたい。
ミヤビはそう思って、マリアに続きを促した。
「Good。騎侯士の上には賢人という王を中心とした組織があってそこで国営の全てを決めている。それがこの国の概要ね。騎士の下には様々あるし、賢人の直下に騎士がいたり、特例はあるけどだいたい今言った構造よ。分かる?」
ミヤビはメモが欲しくなった。
だが、概ねは理解したつもりだ。
上下関係が結構サッパリしているのね。
第一印象はそうだ。
だが、細かく言えばもっと複雑だろうが・・・。
ミヤビは分かったという風に頷いた。
それに対して、マリアは頷いて言った。
「Good。覚えがいいのね。良い事だわ。でもつまらない話はこれで終わり」
そう言ってワインを勧めた。
「もっと呑みなさいな」
その結果はミヤビは限界まで呑み意識が遠のいた。
そのことをマリアは笑って、リンに部屋に運ぶ様に言った。
マナーが分からないのはミヤビでなくて作者の頭ですすみません
解説図を載せておきます。
わかりづらいと思いましたので。