包囲
マリアが逆転の一手を打って出る。そしてレオニールを追い詰める。
「表を上げろ!!」
命令が野に響く。
その声に呼応するように出現したのはガイウスとアルマン。
それとそれぞれが率いる2千の兵たちだ。
ガイウスはその声に呼応して叫びを上げる。
「姫様がやってくださった!!それを無駄にするな!!この戦は勝ち戦なり!!」
「おおおおおお!!」
ガイウスは状況を見た。
敵兵は約1万で、固まって進軍している。
それに対して味方はマリアの軍勢2千弱。
ガイウスとアルマンはそれぞれ2千5百。
合計7千ほどの軍勢が3つに別れて敵を囲む。
兵の数は少ないものの、敵は疲弊している上に、こちらは側面から敵を叩ける。
攻撃されると対応せざるおえない。
それが両側面となると、敵は逃げ場を失い退くことすら出来なるなる。
危険だと思っても引くことの出来ない状況は、敵の致死率がぐんと上がる。
そのうえ囲まれたという状況は死を身近に感じてしまう。
戦って死ぬのではなく、一方的にやられてしまうヴィジョンをいだいてしまう。
そうなれば、退くことが出来ないと解っていても及び腰になる。
つまり、敵を撃つ破れる絶好のチャンスだ。
そのチャンスはマリアが作った。
ガイウスはこの作戦を聞いた時のことを思い出す。
儂は正直やってのけるとは思っていなかった、と。
敵は自身の兵より圧倒的に多い。
作戦は必要だ。
だが、姫自身が囮になるなど!!
作戦とこうだ。
まずマリアが敵の軍勢に攻撃をかける。
敵はそれに対して対応する。
自分より半分以下の軍勢だ。
押し通れると確信していただろう。
少し戦うとマリアは不利になり逃げることを選択する。
敵は姫が不利になって逃げ出したと思い、倒しきるため進軍する。
そうして、敵の兵を"釣る"のだ。
釣った敵をこの平原のガイウスとアルマンがいるところまで進ませ、そこで隠れているガイウスとアルマンとで挟み込む。
そうすることで寡兵で敵を打ち破ることが出来るのだ。
だが、マリアは要するに囮だ。
それも自分が追い詰められているという演技をしなければならない。
戦場で自分が追い詰められていると思わせるのは至難だ。
それも何千という兵を持っているならば尚更。
味方全員がその作戦を周知し、なおかつ姫が引き際を見極めなければならない。
それは一瞬の判断だっただろう。
一瞬でも遅れればたちまち敵はマリアの軍を喰らい尽くす。
その危険をマリアは避けて、見事やってのけたのだ。
これは戦闘に秀でた兄たちにも出来るか分からない。
ガイウスは心のなかで、惜しみない賛辞を送った。
だから、という風に叫んだ。
「進め!!」
そう叫んだ時にはマリアの軍勢は敵に飛び込むために走っていた。
この戦いにおいてはマリアは常に一番槍だった。
血の気の多い姫だ。
そうガイウスは心のなかで苦笑した。
◆
アルマンは姫の突進を横目で見ながらガイウスとタイミングを合わせて敵を叩く。
その最中でアルマンはマリアに対して思う。
さすがだと。
肝が座っていると思う。
女なのにな。
女の身でありながら、戦場に立つということは、それだけで味方に舐められる。
戦においてその大半は女は男に劣るのだ。
力強さと迫力においては特にだ。
そのマイナスを拭うために彼女は一番槍であり続けた。
相当な覚悟だったと思う。
それだけに、アルマンはこの姫についてきて正解だったと確信する。
女が戦場に立つべきではないと、そう考えるアルマンがだ。
そう思わせる器が彼女にあり、全体の感情の流れを読み取る頭を持っていたのだ。
そして思い切りの良さは特筆に値する。
剣術は弱くても、これらは一級品だ。
「行くぞぉぉ!!」
「おう!!」
アルマンは速度を上げて敵に接近する。
敵の兵は動揺で足を止めている。
「怯えるな!!我が軍の方が数で有利であることは変わりない」
敵の将がそう叫ぶ。
レオニールと言ったか?
さすがに猛将と言われるだけあるとアルマンは感心していた。
自分が不利だといち早く察し、味方を叱責したのだ。
敵に囲まれている状況で、怯えるなど一番陥りやすい自殺行為だ。
唯一囲まれた状況で脱出しえる行動は、まず落ち着くこと。
そして冷静に対処すること。
それをこの将はその身に徹している。
普通なら真っ先に逃げる。
それが将というものだ。
そこまで考えると、アルマンは一つの願望を得る。
共に酒が呑みたいものだ。
だが、それは叶わない。
敵将なのだ。
その事が残念でたまらない。
「1人残らず殺せ!!姫に我々の戦いを見せてやるぞ!!」
「おう!!」
そうしてアルマンは接敵した。




