衝突
戦は大きな雄叫びを上げて始まる。
進軍の音は高く響く
自分たちより圧倒的に多い敵軍を正面から捉える。
敵は一万二千ってところか。
対してこちらは三千なかば。
明らかに分が悪い
大軍押し寄せる道の先に凛と立つ少女がいた。
アリステアの第七子のマリアだ。
マリアは銀色に輝く鎧を纏い、剣を空にかざしている。
「敵は多数!!だが億するな!!」
声をかけられ彼女の後ろに並ぶ兵士たちが答える。
「おう!!おう!!おう!!」
彼らは槍を地面に叩きつけてリズムをとる。
「貴殿らは一騎当千の武士なり!!貴殿らは勝利が欲しいか!?」
兵士たちはその低い声で合唱する。
「おおおおお!!」
「ならば進むぞ!!私が勝利を約束する!!」
「おう!!おう!!おう!!」
槍で地を突く音は、次第に大きくなる。
そしてアリスは剣を振り下ろし、進行してくる敵軍を指した。
「進めー!!」
「おおおおぉぉぉぉぉ!!」
アリスの軍は進撃する。
自分たちより四倍近くの敵に対して。
「我が示すのは貴殿らの未来のみ!!自ら掴めるものだけついて来い!!」
「おおおおお!!」
大軍勢に向かってもアリスたちは臆さない。
そう訓練されてある。
死の恐怖に打ち勝つ訓練はアリスが施したものではない。
だが、それを扱うのはアリスだ。
私はここで死ぬかもしれない。
いや、死ぬ可能性は大きい。
それでも今回ばかりは行かねばならない。
戦の知恵も経験も繋がりを持たないアリスにとってこの一戦は死んでも掴まなければならない。
ここを逃せば、たとえ生き延びたとしても死んだように生きるしか無い。
アリスはそう自分に言い聞かせた。
引けばここで私は死ぬ。
だが、征けば私はあそこで死ぬ。
「アリスティアの英雄たちよ!!我々の死に場所はどこだ!!」
「前進した先にこそ!!死に方は前のめりのみ!!」
アリスは頷く。
これでいい。
これで私は生きていると言える。
それは、私以外のものが与えてくれた喜びだ。
それを返さぬ私ではない!!
「うおぉぉぉぉ!!」
アリスが叫ぶ。
対して大軍の男が叫ぶ。
「相手は敵国最弱の将だ!!だが見くびるな!!獅子は兎を追うことにこそ力を使うのだ!!我々は獅子か兎か!?」
アリス軍の突進を見た兵たちは驚きながらも軍将の声に答える。
「我々は獅子を紋章に持つもの!!獅子そのもの!!」
「ならば、押し潰せ!!哀れな兎にその爪の鋭さを教えてやれ!!」
そうして大軍は小さな軍勢を踏みつける為に突進した。
足音が大地に響く。
どちらの軍も怒声を上げながら正面から打つかる。
「おおおおお!!」
「おおおおお!!」
どちらも声を上げるが、その声量は人の多さで決まる。
遥かに多い軍勢の声はアリスの兵達の心を動揺させた。
だが、もとより挑み戦だ!!
アリスは臆すること無く先陣を切る。
「踏み潰せ!!」
そうレオニールが叫んだ時一つの動きが生じる。
レオニールの軍勢を挟みこむように矢が降り注ぐ。
「待ち伏せか!!だがこの程度の浅知恵・・・!!」
降り注ぐ矢はレオニールの兵たちを刺していく。
一度の矢の雨は数えれば両側合わせて500程だ。
レオニールは正確な数こそ分からなかったものの数がそれ程ではないと悟る。
「足を止めるな!!貝の陣!!」
レオニールは経験からの戦略をとる。
それは突進をやめないことだ。
戦場ではまず足を止めたものから死んでゆく。
勇敢なものしか生き残れないのがレオニールの戦場の流儀なのだ。
貝の陣を命じられた兵たちは盾を外側に構え、軍を丸ごと包む。
そうすることで矢の雨の被害を最小限に留めるためだ。
「敵の進軍が遅れたぞ!!先駆ければ勝利は掴めるぞ!!」
アリスは声を張り上げて味方に対する激励をした。
兵たちはそれに答える怒声をあげ、速度を上げる。
アリスは敵軍に接敵する。
「あの白い鎧の奴を獲れ!!大将はアイツだ!!」
お互いの怒声が交じり合う戦場で、最初の戦いが開始される。
「一番槍!!私が頂く!!」
そう言ってアリスは突撃の勢いを持って敵の先陣にたつ1人の兵の首を撥ねた。
それに一瞬遅れて、アリスの兵とレオニールの兵との最前線がぶつかる。
「勢いは我らにあり!!押せ!!」
「数に勝るは我々なり!!故に負ける要素なし!!踏みつけろ!!」
アリスとレオニールの合戦が始まる。




