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少女の異世界奮闘記  作者: 羊洋士
第二部 中 ~至戦~
31/44

布陣

必要な物を揃えていく。

それも大詰めだ。

「そういえばアルマン。貴方今回の戦に参戦してくれるのかしら?」


マリアは夜食を食べながらアルマンに質問した。

昼は訓練と情報整理、あと作戦を行えるように合図の徹底。

それらを詰めて着々と戦の準備を続けていた。

そしてそこにはアルマンの姿もあり、自分の兵に指示を出していた。

だが、マリアはふと思う。

そういえば、参戦する意思をその口から聞いていなかった。

作戦を聞いて考えると言っていて、それで作戦の巧緻はともかくツボには入っていたようだ。

だからといって参戦するだろうとは限らない。


「今更だな。なんで今更そんな事を訊く?」


「意思確認のためね。いざ始まるときに一歩を巻いて逃げられても困るもの」


そのマリアの言葉にアルマンは笑った。


「いうねぇ。でも俺がそういう風に見えるか?」


「見えるかどうかはともかく、言葉で聞いておこうと思ってね」


「まぁそうだな。確かに作戦に参加できるように指示を出しているが・・・どうしようか」


アルマンはニヤリと笑った。

そして考えているというふうに顎を手でさすった。


「今更何を言うか!お前がいる前提で姫様も俺も動いているのだぞ!」


ガイウスはアルマンの態度に叫んだ。


「ガイウスさんは真面目だなぁ。ちょっとしたいたずら心ですよ。もちろん参戦しますとも」


「いたずら心だと?ふざけるのもいい加減にしろ!」


「もっと心の余裕を持たないと。ほら姫様だって笑っていらっしゃるでしょう?」


そうしてアルマンは笑みを浮べているマリアを示した。

対してマリアはその笑みを崩さずに返答した。


「あら?笑っているからって余裕があるとは限らないわよ。それに私は冗談が嫌いなの」


マリアは至って冷静に言った。


「へ、へぇ。そいつは知らなかったなぁ」


アルマンはマリアの言葉を聞いて少し引き気味になる。


「冗談よアルマン。本気にしないで」


マリアはそのアルマンに落ち着かせるように言葉を発した。


「姫様には敵わねぇな。でもま、そのぐらいでなきゃな」


マリアは頷いた。


「これで、作戦に必要な人材のほとんどは揃ったことになるわね」


マリアはそう言った。

それに対してアルマンとガイウスが疑問符を浮かべる。


「ほとんど?これ以上に援軍が来るとでも?」


ガイウスが質問した。

アルマンも同じ気持だろう。

両者を見てマリアは頷いた。


「そうね。あと1人ぐらい指揮官が欲しいと思っていたの」


「あと1人?だが今、指揮官をできる人間を招聘する余裕は・・・」


ない、と言いたいのだろう。

マリアも同意だ。


「招聘する余裕はないわ。だからスカウトしてきたの。シオン。入ってきて」


そう言ってマリアは食堂の出入り口の方に視線を向けた。

それに釣られるように、ガイウスとアルマンも見る。


「なんだか照れるね。そういう紹介されるとさ」


ガイウスとアルマンは驚いた。

突然声が聞こえたのだ。

それも出入り口の方からではなく、マリアの方向から。

ガイウスとアルマンは驚いて視線をマリアに向ける。

するとマリアの後に佇む女がいた。

薄い布で、サーカスの女花形のような綺羅びやかな服装をしている。


「誰だ!?」


ガイウスが怒声を混じらせた質問する。


「私はシオン。この前から姫の配下に加わったのさ。よろしく頼むよ」


言い終わるとシオンは笑った。


「イオンには500程の隊を任せる予定よ。人選はこの前来た騎士が派遣してきた兵達。それを一度任せてみるつもりよ」


「姫様。こんな得体のしれない者に、兵を与えていいのか?」


「そうでしょうけど、腕はいいわよ。見たこと無いからわからないけど」


「腕?」


「諜報と暗殺だって」


それを聞いてアルマンは大きな仕草で天井を仰ぐ。

わざとらしい動作のあとに言葉を言う。


「あー姫様の配下は変わり者ばかりになってしまうなぁ」


「アルマン。貴方も人のこと言えないでしょう。とにかく山では隠密はマイナスにならないわ」


「それでも、兵を預けるという事は、姫自身の信用も預けるということだ。この女にどれほどの腕があるというだ?」


「まー普通そうだろうね。でも、ガイウス様もアルマン様も私がいつ入ってきたか気づいたかい?」


ガイウスは黙りこむ。

確かに入ってきた瞬間は分からなかった。


「アルマン。貴様はどう思うのだ?」


「別に構わないと思いますよ。俺の邪魔をしなければ。今回はその可能性も低いですし」


「そういう問題か?」


「まぁまぁ。得体のしれないって言うなら俺もそうじゃないですか。今更ですよ。それより姫様。どこでその美しい女性と知り合ったのですか?」


「ああ。それはね。シオンには前に暗殺されそうになったのよ。それから友だちになったの。アルマンの事調べてくれたり結構ありがたかったわ」


「なるほどなるほど、それでか・・・」


アルマンは納得した。

何故姫が1人で自分に会いに来たか、その仕組が分かったのだ。

対してガイウスは今の会話の内容が分からないが、とりあえず話を続けることにした。

なにせ、アルマンは歓迎ムードすらある。

ここは自分がしっかりやらなければいけない。


「暗殺されそうになった相手を仲間に引きこむとは・・・本気か?信用できる相手なのか?」


それに質問に対して答えたのはシオンだ。


「そんなに手放しで信用されたら困るね。私はビジネスでやってるんだ。まぁ心入れはあるけどね」


ガイウスはその言葉を聞いて、シオンをギロリと睨んだ。

そのままシオンに質問した。


「シオンとやら。手軽に引き受けてもらっては困るぞ」


「当たり前さ。仕事は熟してこそ仕事さね。出来ないんならただの徒労さ」


そう言ってシオンは物怖じせずガイウスの質問に答えた。

ガイウスはその返答を聞いてため息を付いた。


「はぁ。とりあえず、"姫様を"信用することにしよう。して、ビジネスというなら何が望みだ?」


「まぁ少し兵をくれってことさ。数名でいい」


「うむむ」


ガイウスにしてみても、アルマンにしてみてもこれは不服だろう。

2人共自分の兵を自分以外に渡すのは好きではない。

だが、今はその兵をどう使うかを訊くべきではない。

もう姫様と女の間で成立している離しなのだ。

今更口を挟むべきではない。

確かに、人手は欲しい状況であるし。


「その女が入ることで作戦に変更はあるか?」


「彼女のは前はシオンね。ガイウス。作戦に変更はないわ。私を手伝ってもらいます。それで2人共お願いね」


「オーケーだ。俺の方に不満はない」


「俺は配置に今でもわだかまりはあるが、とりあえずいいだろう」


ガイウスは未だにマリアが先頭に立つことを懸念している。

そこまで心配していて、それでもやらせてくれているのだろうと、マリアは感じた。

それに感謝の気持ちを持って、心のなかで礼を言った。

ありがとう。ガイウス。


「さぁシオンも座って。今食事を持って来るから。ジャクリーン。お願いね」


「ん?私の分もあるのかい?」


「ええ。頼んでおいたもの。ジャクリーンは言ったら出してくれるけど、言わなかったら絶対出してくれないから。この屋敷で一番強いのは彼女だから気をつけて」


「ははは!騎侯士も騎士も差し置いてメイドが一番ってか。そりゃあ面白いね!」


「でしょう!」


マリアは楽しそうに笑った。

それを見てガイウスはアルマンに呟いた。


「姫さまは変わってるな。それもだいぶ」


「そうですね。でもいいんじゃないですか?」


「お前いつまでその話し方なんだ?砕けた話し方でも俺は怒らんぞ。よもや・・・」


「まだ、抵抗あるみたいですね。しばらくは敬語でお願いします。まぁそれもそれで気に入らないかもしれないですが」


「全く。あの姫には変わった人間しか集まらないのか?」


「ガイウスさん。鏡。持って来ましょうか?」


その発言にガイウスは黙る。

そして拳を握り、プルプルと震えている。

この若造が!!

そういう気持ちなのだろうとアルマンは思った。

ガイウスは顔を上げた。


「はっはっはっ!!久々だな!こういうのは!」


アルマンは恐怖した。

あのいつも怒っているガイウスが大声で笑ったのだ。

その事がここ最近で一番怖い気持ちになった。


「ガイウス。楽しそうね」


アルマン以外は笑いあふれる夜食になった。

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