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少女の異世界奮闘記  作者: 羊洋士
第二部 中 ~至戦~
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姫の作戦

兵を整え次は・・・

晴れの日が続いて、涼しい風が吹いている。

青色の空には白い雲が浮かんでいる。


「姫、彼はレクス。姫に貸す兵の長だ」


「レクスと申します。よろしくお願いします」


そう言ってレクスは頭を下げた。

長い金髪をした男だ。

美形で顔には微笑みを浮かべている。

その笑みは嫌な意図をまるで含んでいないように朗らかであった。


「よろしくね」


そういってマリアは手を差し伸べた。

握手を求めたのだ。

それに対してレクスは跪いて言った。


「それは恐れ多いという物です。姫様。お声をかけてもらっただけで光栄です」


そう目を伏せて言った。


「そう。でも跪かなくていいわよ」


そう言ってマリアは差し出した手を戻す。

レイスはその言葉を聞いて立ち上がった。


「レクスは私の手数でも優秀な兵だ。大事に使え」


「そうね」


マリアはガイウスの言葉に同意した。

同意しながら、レクスの方に歩を進める。

一歩、二歩。

そしてマリアはレクスの顔を凝視するように顔を近づけた。


「どうされたのですか?」


レクスはあくまで朗らかに微笑んでいる。

両者の顔が寸前まで近づく。

マリアがもう少し勧めれば唇が当たる距離だ。

じぃっとマリアはレクスの顔を見つめた。

レクスも目をそらさない。


「あっ」


レクスは驚きの声を上げる。

レクスとの対面を終え、マリアは自室に戻った。

そしてガイウスの報告を聞く。


「領地内の騎士たちは兵を寄越してきた。兵力は1000程。極端に若いか、40近い年齢の者ばかりだ」


「あからさまね。まぁ兵を寄越しただけでマシか」


「ああ、だが若いのにこういう扱いをするのは私としては、な」


「死なせなければ良いのよ。彼らは分散して私とアルマン、ガイウスの兵に入れます」


「いいのか?固めておいたほうが・・・?」


「どうせ烏合の衆よ。ならバラバラにして少しでも返却出来るようがいい」


ガイウスは頷く。

騎士達にはどうせ信用がない。

だから少しの兵でも送っておけば役目を果たしたと思ったのだろう。

だが、返却する時は気を使わなければならない。

返す兵に大きく偏りがあれば騎士たちは激高し、他より少ない分を要求してくるだろう。


「まったく、面倒ね」


2人は溜息をついていた。

そこに声を掛けた者がいる。


「お取り込み中か?」


アルマンだ。


「いえ、丁度終わったところよ。何か用があるかしら?」


マリアはアルマンに応じた。


「いやね。地図を頂いたので敵の迎撃地点に付いて進言しようかと思ってね」


「それは嬉しいわね」


マリアは微笑んだ。

アルマンはそのほほ笑みに嫌味を感じた。


「もっと嬉しそうな言い方はできないのか?まぁいい。敵さんは山越えしてくるだろう」


「それは何故?」


「この領地を通るなら山越えが一番楽で速い。ほかは遠回りで他の領地との国境を跨がなければならないから、リスクがある」


「なんでうちの領地をねらうのかしらね?」


「姫の領地が一番チョロいってバレたからだろう?」


「一番チョロい領地の筆頭騎士様は言うことが大胆ね」


「茶化すなよ。とまぁここまで言えば分かるだろ?山道で迎撃するのが一番戦力の差を埋められる」


マリアは茶化していないわよ・・・と思ったが口にはださない。

ただの嫌味だし、アルマンもそれが分かっていてかわしたのだろう。

アルマンの意見に対してマリアは頷いた。


「国境の山を抜ければ直ぐに平原に出る。そうすれば数の勝負になるってことね」


「そうそう。だから平原に入るまでに片を付けようってさ」


確かにその方が確実だ。

数では弱いこちらの方法としては唯一と言ってもいいだろう。

ただ問題もある。


「山の戦いに慣れている者は?」


それに対してガイウスが答えた。


「いないな」


「それと、敵も山道で襲われるなんて想定しているでしょう?奇を付けるの?」


それに対してはアルマンが答える。


「敵は山の戦いに慣れているだろうなぁ。あっちは大きな山脈が国の大部分だ。当然奇を突きにくいだろう」


「アルマンは自信ある?」


慣れた戦場で、慣れていない兵を持って奇を突けるかどうか。

それをアルマンに聞いた。


「無いな」


アルマンは気軽な風に言い放つ。


「私達勝てるのかしら?」


「それは姫が言い出したことだろう?勝たないと姫の領地は地図から無くなるな」


マリアはそのとおりだと思う。

自分で言い出したことなのだ。


「ねぇ2人共。私も一応作戦考えたんだけど、聞いてくれるかしら?」


2人は頷いて、マリアの声を聞く。

しばらく2人は沈黙して聞いていた。

だが、聞き終わると2人はそれぞれ声を上げた。


「なんだそれは!!ほとんど捨て鉢ではないか!!」


「ははは!!それが出来るって言うんなら勝てるかもな!!」


ガイウスは怒りで声を上げ、アルマンは笑い声を上げた。


「どうかしら?」


マリアは改めて聞く。


「いかん!!それは危険過ぎる!!」


「そうだぜ姫様。それにその作戦の筆頭になるのは誰だ?俺がごめん被るぜ」


「筆頭は当然私よ」


「もっといかん!!それならば私が!!」


「私は騎侯士なの。戦闘に立つ義務があるわ。それに騎士を理由もなく差別することは出来ない」


そう言ってマリアは2人を目を見た。

そしてまた問う。


「どうかしら?」


三名は沈黙する。

そしてしばらくの後、2人はそれぞれ違う思いを抱え、同じ答えを出した。


「それしか・・・ないだろうな・・・」


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