兵隊長レクス
準備は着々と進む。
マリアは少しずつ問題を消化していく。
晴れの日が続いて、涼しい風が吹いている。
青色の空には白い雲が浮かんでいる。
「姫、彼はレクス。姫に貸す兵の長だ」
「レクスと申します。よろしくお願いします」
そう言ってレクスは頭を下げた。
長い金髪をした男だ。
美形で顔には微笑みを浮かべている。
その笑みは嫌な意図をまるで含んでいないように朗らかであった。
「よろしくね」
そういってマリアは手を差し伸べた。
握手を求めたのだ。
それに対してレクスは跪いて言った。
「それは恐れ多いという物です。姫様。お声をかけてもらっただけで光栄です」
そう目を伏せて言った。
「そう。でも跪かなくていいわよ」
そう言ってマリアは差し出した手を戻す。
レイスはその言葉を聞いて立ち上がった。
「レクスは私の手数でも優秀な兵だ。大事に使え」
「そうね」
マリアはガイウスの言葉に同意した。
同意しながら、レクスの方に歩を進める。
一歩、二歩。
そしてマリアはレクスの顔を凝視するように顔を近づけた。
「どうされたのですか?」
レクスはあくまで朗らかに微笑んでいる。
両者の顔が寸前まで近づく。
マリアがもう少し勧めれば唇が当たる距離だ。
じぃっとマリアはレクスの顔を見つめた。
レクスも目をそらさない。
「あっ」
レクスは驚きの声を上げる。
マリアに手を取られたのだ。
「はい握手ね。よろしくねレクス」
レクスは驚きの表情からほほ笑みに戻す。
「お戯れが過ぎますよ」
「そうね。でもこんなことされても微笑んだままなのね」
「すみません」
レクスは謝った。
何に対する謝罪かは分からないが、マリアはレクスに対して不審に思った。
表情が笑みのまま変わらないのだ。
そうして2人は手を離し、握手を終了させた。
「レクス?貴方の隊の得意分野は何かしら?」
「我々は歩兵です。優秀な歩兵として育てられました」
「どういう所が優秀なのかしら?腕っ節?」
「腕のいいものなら少なくありませんでしょう。ですが我々は声です」
「声?」
レクスは頷いた。
「我々は将の言葉に応じて声を上げる。ただそのことだけがほかより優れています」
声を上げる。
それは、戦場にとって必要なことだ。
声によって勢いを上げ、士気を高める。
だから、将は声を張り上げ、兵達を鼓舞している。
それによって勝利への確率を上げているのだ。
だが、将だけでなく兵達もそのことを心得ているものがいればどうなるか。
兵がより強かになるのだ。
そういう思想のもとに生まれた部隊ということか・・・。
「なるほどね。集団戦向きの部隊なのね」
「理解が速いですね。さすが姫様です」
レクスは頷いて答えた。
「自信があるのね。良いことよ。よろしく頼むわ」
それに足してもレクスは頷いた。
「姫様の勝利への道を作りましょう。ただの歩兵である私達が」




