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少女の異世界奮闘記  作者: 羊洋士
第二部 上 ~マリア~
23/44

酒場の喧騒

アルマンについての情報を探るマリア達。

そこでマリアは行動に出る

騒がしい酒屋にドレスを来た少女が入ってきた。

マリアは戸を開いて直進する。

男達が囲うテーブルをすり抜けて、カウンターで呑んでいる1人の男の元へ。

そして男に後ろから話しかけた。


「貴方がアルマンね?」


そうすると、アルマンと呼ばれる男は振り向きざまに答える。


「そうだ。俺がアルマンだ」


男は正装用の黒いスーツのような服にボサボサの髪をしていた。

体は細く、スラリとながい体つきをしている。

男は口元に微笑を浮かべながら振り向いて、マリアの姿を見る。


「おやおや、マリア様ではないですか?こんな酒場へどうしたんです?」


アルマンは相手が自分の上司であるマリアだと分かったあとでも動じることがなかった。

ともすれば挑発的とも取れる口調で話す。


「貴方に会いに来たの」


そうするとアルマンは笑った。


「ははっ!今まで私のことなど気にも掛けなかったのにどういう心境の変化です?」


そう答えるアルマンに対してマリアも動じない態度をとる。


「貴方の力を借りたいの。あと、敬語が苦手なら話さなくていいわ」


そう言うと、アルマンは直ぐに態度を変える。

口元の笑みは消え、ギロリと細い目でマリアを睨んでいる。


「そうかい。敬語は苦手でね。育ちが悪いんだよ。んで散々放っといて力を借りたいとはどういう要件だ?」


「そのままよ」


それだけ言ってマリアは黙る。

アルマンは次の言葉を待っていたが、それだけで黙る姫に拍子抜けした。

それだけか?

もっと何か言ってもいいだろう。

そういう気持ちがあった。

だから聞いた。


「どういう意味だ?」


「言わなければならない?私の部下になってほしいの」


「それなら、もう十分姫様の部下で戦ってる。この領地を守っているだろう?」


「最後まで言わなければ察せられないの?」


「言う義務があるだろ。姫様には」


姫の意向は分かった。

自分と自分の部下を指揮下に置きたいのだ。

だが、それを姫様の口から言わなければならない。

アルマン自身が言っては自分から望んで"姫の代わりに言った"という事になる。

それではついてきた部下に格好がつかない。

ただ、格好悪いってだけの理由だけどな。

そう言ってアルマンは笑った。

だが、必要なことだ。

人の上に立つなら、演じなければならない。

自分が付いて行くほどの大将かどうかを示すために。

この姫はそのことを理解しているのか?


「じゃあ言うわ。私の指揮に従いなさい」


マリアは凛と酒場全体に響く高い声で言い放つ。

すると酒場はいきなり静になる。

アルマンに挑戦している娘がいる。

そういう好機と反感の気持ちで娘を見た。

アルマンはマリアに対して答える。


「いやだ」


その一言だけだ。


「どうして?」


「俺より無能の下で働きたくない。なぁ!皆!」


「「「おう!!」」」


酒場の全員が声を合わせて答える。

酒場の全員がアルマンの部下だったのだ。

そのことにマリアは感心した。

息のあった兵士だこと。

この男が騎士たるカリスマを持っているということなのだろうか?

全員の声を聞いたアルマンは言葉を続けた。


「俺は死にたくねぇ!俺は負けたくねぇ!欲しい物を手に入れてぇ!だから勝ちてぇんだよ!!俺に勝利を手に入れてぇ!!」


「おう!俺もだ大将!」


「おうよ!勝とうぜ!誰を相手にしても!」


そう合いの手を入れてくるのは酒場にいるアルマンの部下たちだ。

それに対しても驚いた。

騎士と兵士との間柄についてだ。

多くの場合は騎士が指揮し、兵士がそれに従う。

主従の関係だと思っていた。

そう教えられていた。

だが、このアルマンは違う。

まるで部下を仲間のように扱う。

そして部下であり仲間であるという関係を部下1人1人が理解している。


「なるほどね」


アルマンの宣言に対してなるほどと呟いた。


「なにが"なるほど"なんだ?」


その言葉にマリアは微笑を浮かべた。


「噂でどういう人物かと思ったけど、話とは少し違うわね」


「どういう噂だったんだ?」


「筋肉ダルマ人語が通じない間抜けだったと思ってた」


「実際は?」


「服が綺麗なだけの大間抜けだってところね。面白いわ」


その言葉で酒場がいきり立つ。

自分の騎士が罵声されたことに対して眉間に皺を寄せる。

酒場のほぼ全員が険しい顔をしてマリアとアルマンの方向を見ていた。

その場所で涼しい顔をしていたのは2人だ。

マリアとアルマン。


「そうだろ?俺はオシャレ好きなんだ」


そういって自分の服装を示した。


「ええ。だから指揮下に入りなさい。これは命令よ」


そういって両者がお互いの目を真っ直ぐ見る。


「"命令"というのはわかりやすいな。でももっとわかりやすい方が俺は好みだ」


「どんな?」


「俺が欲しいものがあるんだな。それをくれたら考えてもいい」


「それは何?」


「俺の国だ」


それを聞いてマリアは即答する。


「なんだ。そんなものでいいの?」


これにはアルマンも言葉に詰まった。

簡単に言ってくれるな・・・

それとも姫という奴らの脳みそはフワフワのパンなのか?


「くれるっていうのか?」


「今は無理だけどね」


「信じられないね」


「信じれないならそれでいいんじゃない?でも私の元にくれればチャンスも増えるわ」


「そうとは限らないわ」


「信じられない臆病者なら私の指揮下にいる必要はない。空を見て吼えるだけの犬ならいらない」


その言葉を聞いて、アルマンが初めて唇から微笑が消えた。

酒場の部下たちも動きを止めた。


「今なんつった?」


「犬なら要らない」


再度聞きなおすアルマンにそう言い放ち、そのままマリアは言葉を続ける。


「国がほしいと粋がってるままじゃあ、犬のままだわ」


「よく単身で俺らの所に乗り込んでそこまで言えるな。姫だから何もされないと思ってるのか?」


「まさか。手を噛まない犬は可愛いけど、噛む度胸のない騎士なら飼いならす意味が無いわ」


「そうか・・・」


アルマンは腰に挿している剣を抜いた。

そしてマリアに凄む。


「女だからって容赦はない。俺は騎士ではなく犬なのだからな」


そうアルマンは自らを嘲笑した。

それに対してマリアは動じること無く言った。


「嬉しいわ。騎士の剣を振るうに足る人物と認めてくれたのね?」


「高貴な騎士様の剣と、野蛮な俺の剣を一緒にするなよ?怒られるぞ」


そうして剣を振り上げた。


「俺は騎侯士に剣を振るうのが得意分野なんだ」


そう言い剣を振り下ろす。

アルマンの剣はどんどん加速してマリアに向かう。

そして振り下ろされる瞬間にマリアは笑って言った。


「本物の騎士になるつもりはない?」


そういって振り下ろされた剣は加速する。

アルマンはマリアの口元から笑みが消えていない事に目にとまる。


「本気か!?」


アルマンの部下の1人が大きな声で叫ぶ。

だが、現実はそうはならなかった。

アルマンの剣はマリアの直前で止まっていた。


「本当に殺されないと思っているのか?」


それに対してマリアは答える。


「その剣は脅すだけが目的で提げているの?」


アルマンはその言葉を聞いた。


「ぷっはは!大した度胸だ!」


「ありがとう」


そう言ってアルマンは剣を収めカウンターに向かう。


「店長!酒だ!2つ!」


そう言うと店長が酒を持ってきた。

2つのコップに大きな氷が一つづつ入っている。

それに透き通った茶色の液体を注ぎ込み、アルマンは一つをマリアに差し出した。


「呑め。呑めねぇ体質ってわけじゃねぇんだろ?なんせ姫様なんだからな。パーティーでしこたま呑んでるだろ」


それを聞いてマリアは頷いて、コップを受け取る。


「ありがとう」


そうして酒場は元の活気に戻る。

そして、その結果として、マリアとアルマン以外の全員は机に伏して寝ていた。

飄々としている2人は何杯目か分からない酒で乾杯した。


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