庭師リリィ
アルマンを仲間にする。
その目的を中心に置いて行動する。
マリアは自室にこもって書類の整理をしていた。
ガイウスがアルマンとの対面の準備をしている内に、さまざまな意見書に目を通し許可の印を押していく。
ここにある資料はガイウスが目を通し、やるべきものと判断したものだけだ。
だから、単純に印を押すだけだ。
内容も分からず一つずつ印を押していく。
関税の引き上げと不作な土地への支援などだ。
だが、ガイウスが許可してもそれが正しいとは限らない。
そもそも正解がないのが治世なのだ。
だから、やることを理解していたい。
それには教えてくれる人がいるのがベストだ。
「誰かいないかしら?」
それはもう一人経済に特化した人物が欲しいという願望だ。
ガイウスは経済知識もある人物であるが、武人である。
経済に一番特化しているのは自分であらねばならないが、それも今は厳しい。
独断でやって、無知により失敗する可能性は非常に高い。
「ふぅ」
マリアはひと通り目を通して溜息をついた。
これから自分が学ばなければならないことの多さにおののいてしまう。
以前はただの学生として見ていた歴史の教科書に、今は自分が乗るかもしれない事をしている。
不思議な気分だ。
そう思い、窓の外を見る。
庭が木々は綺麗に剪定されていて、人工的に整った美しさがある。
太陽の光に照らされて、植物たちも活き活きしているように見える。
そこでマリアは疑問に持つ。
「そういえば、庭だけは綺麗だったわね」
この屋敷に訪れた時はホコリだらけの建物に呆れていた。
その思いで屋敷を掃除していたのだが、庭には気が向かなかった。
だから庭には手を入れてないのだが、それでも綺麗に整っている。
「誰かやってくれたのかしら?」
そう思いながら庭を見ていると、1人の人間が脚立と大きなハサミを持って庭を歩いているのが見えた。
その人間は少女だった。
少女は庭の木の一つの前で立ち止まり、脚立に登って選定を始める。
飛び出た枝を切っている。
彼女が作る形は円形など丸みを帯びている。
「彼女は?」
ジャクリーンが連れてきたメイドの一人だろうか?
その疑問を解決するために庭に降りてみることにする。
庭に出ると明るい光に目が眩んだ。
太陽の輝きが大地を燦燦と照らしている。
歩くと土の感触が足に伝わる。
うん。
マリアは唇に笑みを浮かべた。
最近部屋に閉じこもり気味だったことを思い出す。
たまにはいいわね。
そう考えて足を進める。
剪定をしている少女に近づいていく。
そして脚立の上にいる少女を見上げた。
「こんにちわ。いい天気ね」
マリアは開口一番にそう言った。
その声を聞いて少女が振り向く。
そしてキョトンとした目が見開いた。
「あ!あ!ひ!姫様!?」
そう言うと少女が少しバランスを崩して倒れそうになる。
マリアはそれを見て落ち着いて話しかける。
「おちついて、ね?」
少女はとっさの所でこらえた。
脚立にしがみつく。
「はぁ」
少女は自身が落下の危機から免れたことに安心して一息する。
そして次の瞬間には何かを思いついたように表情を変え、脚立から飛び降りた。
そして、マリアに向かって頭を下げた。
「姫様!お見苦しい所を見せてすみません!」
大きな声で謝った。
それに対してマリアは平然と応じる。
「大丈夫よ。見苦しくなんて無かったわ」
そうマリアは言った。
マリアはコロコロと変わる表情を見て楽しい気分になっていた。
「貴女がこの庭を綺麗にしてくれていたのかしら?」
少女はそう問われて、背筋を伸ばした。
「はっ!はい!ガイウス様には来るなと言われていたのですが、私には良人もいませんし、この庭が好きなので・・・。すみません」
「謝らなくってもいいわ。それでガイウスが貴女をそれで叱るなら、私がガイウスを叱るわ。ありがとう」
感謝の言葉を言われた少女は驚いた顔をして両手を振った。
「いえいえ!私は好きでやっているので!」
大きな声でそう言った。
マリアはそれを見て微笑み、この少女と話をしてみたい気分になった。
「貴女。名前は?」
「はい!リリィといいます。この領地の端にある小さな村からお庭の管理をさせてもらうためにこちらに置かせてもらっています」
マリアはこの領地の事を余り知らない。
ここで聞いて置くのはいいことだが、それ以前に不審に思われるようではいけない。
だから、心のなかでは恐る恐る、表面では堂々と聞こうと思った。
「そう。小さな村なの?」
「はい!私の街なんて羊の方が多いですよ!羊の毛は温かいのでそれを商売にしたり、ミルクを取ったりしている村です」
「それは素敵ね。羊毛は私も使っているわ。とてもあたたかいわ」
それを聞いてリリィは顔を明るくさせた。
リリィは声を弾ませる。
「本当ですか!?是非うちの村の羊毛も使ってみてください!私の自慢なんですから!」
リリィはよほど自分の村が好きなんだろう。
マリアはそう思わずにはいられなかった。
それだけの元気がリリィにはあった。
マリアは元気なリリィを見ていると自分も元気になっていくような気がした。
最近暗いことばかりであった。
それはもう乗り越えたし、周りの者の支えもある。
だが、時折夜が辛くなる。
明日なんて来なければいいと。
いつ、どのタイミングでそう思うのかは自分自身でも分からない。
ただ、無性に寂しくなる。
「姫様?どうか致しましたか?」
リリィが考えてごとをしているマリアの顔をのぞき込んだ。
マリアはそれに気づくと慌てて微笑みを浮かべた。
「ううん。なんでもないわ」
それを聞くとリリィは少し悲しそうな顔になる。
本当にコロコロ表情の変わる子ね。
「そうですか・・・そうだ!」
マリアの言葉を聞いて何かを考えついたようだ。
リリィは走りだして、剪定していた樹の根元に屈みこんだ。
そして何かを掴んでマリアの元へ戻る。
「花?」
マリアがそうつぶやくと、リリィは頷いた。
「そうです!そこに一輪だけ咲いていたので、よろしかったらどうぞ!」
そういってリリィは笑った。
マリアはそれを聞くと頷いてた。
「ありがとう。頂くわ」
マリアは自室に戻ってその一輪の花を飾った。
白い大輪の花だった。
リリィはなんか小動物系な感じ。リスとか。でもアメリカではリスは困ったさんだそうで。アメリカのことだからきっと丈は三メートルくらいあってロケットランチャとライフルで武装しているリスなんでしょうなぁ。




