異世界にて
二話目です。
よろしくお願いします。
車から激突され、意識を失った少女が目を覚ます。
目が覚めると春を感じた。
花の香りが心地よい風に吹かれて、大空に舞い上がる。
そこで少女は目が覚めた。
「ここは・・・?」
そう呟き、うつ伏せで倒れていた状態から腕を立てた。
見ると、白い花が体を一面に広がっていた。
「これは・・・?ユリ?でもなんか違う」
首をもたげた白い花が咲いていた。
大輪が咲いていて、一見ユリに見えたが、昔見た花図鑑の写真とは異なっていた。
なんだか丸い?
印象の違いでしか無いが、少女は違和感を覚えていた。
しかし彼女は花には詳しくないので、深く考えるのはやめた。
だが、この光景は気になる。
まるで、現実とは思えない光景だった。
「もしかして・・・ここはあの世なの?」
そう彼女は呟いた。
もしそうなのだとしたら・・・。
そう思うと彼女は少しうれしくなった。
一面の花畑なんて、まるで天国みたいだ。
私は天国に来たのだ。
辛いだけの現実を抜けだして、もう戻れない天国に。
それは彼女にとって嬉しいことだった。
「はぁー」
彼女は深呼吸して、頬に笑みを浮かべた。
そして、彼女は腕を立てた状態から体勢を変えた。
地べたに座ったのだ。
目を閉じて音を聞く。
鳥のさえずりが聞こえる。
彼女はその声にしばらく耳を傾けた。
「ああ、鳥の声なんて久しぶりに聞いた気がする」
今までの彼女は鳥が近くで鳴いていても気にもとめなかった。
それは彼女自身周りをみる余裕がなかったためだろう。
だが今の彼女はそれを聞く心の余裕があった。
その余裕が有るだけで、世界は変わって見えた。
「現実でも美しいものはあるのね・・・いや現実じゃないのかな?」
彼女はどちらでも良かった。
どちらにして楽しいと思えるからだ。
そんな彼女に声をかける人がいる。
「あら?起きましたの?」
少女は振り向いて、声の主を確認する。
声の主は少女だった。
綺麗な栗色の髪と、透き通った目をしていた。
か細い腕を伸ばし、ドレスのような服を来ていた。
お人形さんみたい。
それが第一印象だ。
「私の名前はマリア。マリア・マキシレオーネ。貴方の名前は?」
マリアの名乗る少女は名前を聞いてきた。
「雅・・・」
ミヤビは萎縮して答えた。
「そうミヤビというの?あなたこの辺りに住んでいる人なの?綺麗な服を着ていますのね」
ミヤビは自分の体を見る。
乱れた服とボサボサの服である。、
だが、このマリアという少女は邪気の感じられない笑顔で、綺麗だといった。
どういうこと?
ミヤビは疑問した。
綺麗というならばマリアがそれを言われるのが正しい。
私など純日本風である外見だが、それほど可愛いという印象はない。
対してマリアはヨーロッパの可愛い女の子のような印象を受ける。
しかも立派な名前。
私がひっくり返ってもこんな少女にならない
ミヤビがじっくりマリアを見ていると彼女笑った。
花のようにという表現が似合うとミヤビは思った。
「あら?私の顔に何かついてまして?」
それをミヤビは顔を思いっきり横に振って応える。
「いえ、ただお綺麗だなと思いまして」
「あら嬉しい!でもそれは自分も綺麗という事かしら?」
マリアは笑みを浮かべながらそう言ってきた。
ミヤビには何のことだか分からなかった。
その2人の少女に声をかける者がいた。
「姫様。もう城に戻りましょ・・・?姫が・・・2人?」
若い男だった。
背は高く、細い男が黒いスーツのような服を着ていた。
高級感あふれるそのスーツの男にミヤビはまるで執事みたいという印象を受ける。
言っている言葉は理解できなかったが、それをよそに見とれてしまった。
「見てシン。この子面白いでしょう?城に連れて帰りたいわ」
その言葉を聞いシンと呼ばれる男は否定した。
「いけません姫様。村娘を城に入れるなど。それにこの娘にも帰る場所はありましょう」
そう言ってマリアに抗議した。
だが、マリアはその発言を聞いても笑みを浮かべていた。
そしてミヤビに話しかける。
「ミヤビ。貴女、帰る場所は?」
ミヤビは顔を横に振った。
もうあそこには帰りたくないと思っていた。
それを見たマリアは頷いた。
「帰る場所がないのね。じゃあ私の所に来なさい」
マリアはそう言った。
ミヤビはどうしようか迷った。
いきなり見ず知らずの少女のところへ行ってもいいのだろうか?
それにこの人姫って呼ばれてた。
姫というのはミヤビにとっておとぎの国の存在だ。
実際には見たことがない。
迷ったミヤビだったが、行く宛もないので恐る恐る承諾の意を示すため、首を縦に振った。
それをみたマリアも首を振った。
「じゃあ、戻りましょう。アリスティアの城へ」
そしてマリアは手を差し出した。
アリスティアという単語はミヤビに取って初耳だった。
ミヤビはその手を握り、城へ向かった。
花はユリみたいと言っておりますが、ユリという事で問題ないです。