変化の再起
ミヤビはマリアと名前を変えて生きる事を決める。
そして行動を開始する。
朝食の準備ができたので、シンはミヤビの部屋に行く。
今日は食べてくれるだろうか?
そういう不安はある。
だが、毎日言い続けるのは自分の義務だとシンは思っている。
長い廊下を歩き、ミヤビの休んでいる部屋についた。
ノックをする。
返事はない。
今日もか・・・。
そういう落胆がシンにはあった。
「失礼します」
シンはそう断って部屋に入る。
ミヤビはベットで寝ている筈だ。
膨らんだ掛け布団でその事に確信を持つ。
そうして、ベットの傍らに歩いて行く。
ベットを覗くとミヤビは寝ていた。
「姫様。起きてください」
シンは起こすために声を掛けた。
返事は期待していなかった。
「むにゃむにゃ・・・あと少しだけ・・・」
だが、返答があった。
「姫様!!ミヤビ様!!」
シンは間抜けな寝言に驚いて大声を上げた。
すると今度はミヤビが驚いて飛び起きた。
「はい!」
シンは勢い良く飛び起きるミヤビに唖然としていた。
そのシンに構わずミヤビは欠伸をした。
「ふぁ~。もう朝か。昨日は遅かったような気がするけど・・・」
ミヤビは少し考える。
昨日はどうしたんだっけ?
昼間の記憶はない。
おそらく呆けていた。
ただ、夜になって客が来たような気がする。
「あー思い出した。まぁいいや」
そう言いながらミヤビは視点を横に移動させた。
そして横に移動させた直後に眼に飛び込んできたのは、シンの大口を開けた顔だった。
「どうしたのシン?おはよう。貴方には苦労をかけましたね」
その言葉を聞いてシンは正気に戻る。
だが、興奮は抑えられない。
「どうしたのではありません!どうして普通に起きておられるのですか!?」
「あー普通に起きちゃいけなかった?」
「そういうことではありません。昨日のうちに何があったんですか?」
「ただの心変わりよ。もう起きたからちょっと着替えさせてくれる?」
「は・・・はい」
そう言ってシンは頷いて扉に向かう。
その途中でミヤビに声がかけられる。
「シン。もう私はマリアよ。間違えないで」
そう言われた。
その言葉にシンは安堵した。
もう大丈夫だと。
何故そう思ったかはシン自身にも分からない。
だが、シンはマリアの方を向いて、背筋を真っすぐ伸ばしお辞儀をした。
「わかりました。マリア様。では扉の前でお待ちしております」
シンは退出した。
そうしてしばらくの後、マリアが着替えて外に出てくる。
今までのメイド服ではなく、薄い生地のドレスだ。
「さぁ行きましょう」
「はい」
シンはマリアの後に続く。
途中でジャクリーンに会う。
「あら?やっと出てきたのですねマリア様」
「ごめんね。心配かけて」
ミヤビはそう言って笑った。
ジャクリーンはこのマリアが偽物だということを知っている者の1人だ。
だが、ジャクリーンはマリアが部屋から出たことに顔色一つ変えず、さらに名前もマリアと呼んできた。
ジャクリーンと別れて食事をするための部屋に入る。
長机には既に客がいた。
ガイウスだ。
ガイウスはその鍛えられた腕で、小さく見えるパンを齧っている。
ガイウスはこちらに気付き声をかけてくる。
「おお。やっと起きたか」
「お久しぶりですガイウス様。お騒がせしました」
マリアは一度立ち止まって頭を下げる。
背をピンと伸ばして45度の角度を心がける。
「いや起きてよかった。領地の話がしたかったのだ」
「はい。食事の後にきかせて頂きます」
「姫様が働かない時間も世界が動いていたのだ。そんな暇は・・・」
「メイドが作った食事です。無碍にはできません。それに、どっちみち急いで取り戻そうとしても突然起きる事態には対応できない。ならば朝食ぐらいは食べさせてください」
「う・・・うむ・・・」
ガイウスは少し焦っていたが、納得した。
確かに、今急いでも急がなくても同じか。
それにしても、これで偽物とは思えないな。
見た目が同じである事もそうだが、年齢の割に落ち着いている雰囲気が似ている。
これは期待以上かもしれんな。
とはいえ、この娘は政治の世界には疎いだろう。
昨日今日ではどうにもならない壁がある。
それを支援するのは自分の仕事だ。
「姫様。ひとつ提案があるのだが」
「なんでしょう?」
「一度領地に戻られてはいかがですか?今は花が青々とした緑が綺麗だぞ」
「そうですね。ではそうしましょうか。シンは荷物のリストを作っておいて。あと早めに父上に帰ることを伝えるからお父様に謁見の申請を。ジャクリーン」
そう呼ばれてジャクリーンが部屋に入ってきた。
「連れて行くメイドを何人か決めておいて」
「わかりました。ただ私はついていきますから覚悟してください」
マリアはその発言を聞くと苦笑する。
「任せるわ」
「ガイウス様。領地に帰るのはいつがよろしいですか?」
ガイウスは気押された。
こんなにテキパキと命令を下せるとは思っていなかったので、すこし見とれていた。
「速いほうがいいだろう。兵達にもお姿を見せないとな」
「シン?どれくらいで準備できそう?」
「陛下に許可を頂いたら直ぐにでも」
「じゃあお父様待ちってことね。数日かかるかもしれないから気長に待ちましょう」
そう言ってマリアは食事を続けた。
それから数日は忙しかった。
ガイウスは領地と騎士たちの基礎知識を叩きこんで、国の知識を叩きこんでいた。
それでも直ぐに理解してしまうミヤビの頭に驚いていた。
ジャクリーンが気に入るのも分かる。
この少女は進むことを知っている。
苦難に立ち向かうことを知っている。
それは私達のような者にとって一番必要な事だ。
"マリア"は兄弟最弱の姫なのだ。
挑んで行かなければならない。
それは一方的に搾取されないようにするためでもある。
これからだ。
ガイウスは自分の目が誤りではないことを願った。
一部下終了であります。ここまで付き合ってくださってありがとうございます。
これからはミヤビ=マリアというナレージョンでお願いします。
これまでの内容の要約をすると。ミヤビが頑張ってメイドやってたけどなんかマリア居なくなっちゃったから親バカの王様からマリアになるように命令されて落ち込んで、シンとジャクリーンは生存で、シオンはくノ一という内容です。




