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少女の異世界奮闘記  作者: 羊洋士
第一部 下 ~ミヤビの生活そして~
15/44

夜だけの来客者

周りの者がミヤビを心配する。だがそれを伝える声を持たずに時は過ぎる。

夜にミヤビは1人で暗い部屋にいる。

そうして一日中空を眺める。

日が昇り、月が昇り、その繰り返しの日々。

ミヤビは殆ど何も口にせずにずっと考えていた。


「私のせいだ」


私がこの世界に来たから。

私がマリア様と同じ容姿をしていたからだ。

その事が、マリア様を取り巻く環境を狂わせた。

マリアは出奔し、ジェシカは死んだ。

シンもリンと離れ離れになる。

そのことを全部思う。


「私のせいだ」


と。

そうやって自分のことを考えていた。

そうして何回かの月が昇る時、その呆けているだけの日常は終わった。


「やぁ、貴女がマリア・マキシレオーネ姫かい?」


そう呼びかけられた。

ミヤビは視線をゆっくり声のする方へ向ける。

カーテンの先に人がいるのを見つけた。

全身は見えない。


「私?私はマリア・・・・」


そう、うわ言のように呟いた。


「そうかいそうかい」


声は女の声だ。

楽しそうな声を響かせ、カーテンの向こうから出てきた。

女は露出の多い服を着ていた。

一見するとサーカスの女花形とも取れる服装だ。


「あなたは・・・?」


「私?私はシオン。ただのしがないアサシンさ。ちょっと名を上げたいからその首をおくれよ」


そう言ってシオンは腰にある短刀に手を伸ばす。

その言動を聞きながら、ミヤビは何も答えない。

シオンは疑問に思った。


「なんだい?やる気あんのかい?今から殺されるんだよ?」


それに対してミヤビはか細い声で応える。


「どうぞ。ご自由に」


そう言って視線はシオンから空に戻す。

シオンそれが少し気に入らなかった。


「なんかもっとあってもいいと思ったんだけどなぁ。ここの家のやつはどいつもこいつも」


そう言った。


「貴女・・・他の人の元にも行ったの?」


「おうさ。1子と2子とそれからあんたさ。ここは失敗したからって帰るとこで寄っただけさ」


「そう・・・」


どうでも良さげにミヤビは呟いた。

シオンはミヤビに近づいていく。


「なんだいなんだい。元気がないねぇ~」


「普通よ。私はこれが本当の性格なの」


「気に入らないね」


女は気に入らないと言いながら、短刀をミヤビの首元に近づけた。


「ここで私が短刀を引けば姫様は死ぬよ」


「そう・・・」


それだけ言って2人は無言になる。


「どうしたの?殺さないの?」


無言を破ったのはミヤビ。

シオンに対して疑問を述べた。


「ああ殺すとも!!」


そう言ってシオンはミヤビを押し倒す。

馬乗りになって首元に短刀を触れさせる。


「でもねぇ。そんな眼をされちゃあ、私だって楽しくないんだよ。もっとなんか反応しな。私に殺されたいなら、殺したいと思わせな」


そう言ってシオンはミヤビの眼を真っ直ぐみた。

以前、ミヤビは虚ろな眼のままだ。


「じゃあ、もう無理ね。今日は諦めて」


そう言ったミヤビの頬をシオンが叩いた。


「アンタ見ててるとムカツクね!!姫様はそんな考えでも生きていけんのかい!?少なくともさっきの2人は違った。生命力に溢れていたよ」


「そう・・・でも私に行ったって無駄よ」


「ッ!!」


もう一度ミヤビの頬を叩いた。

それでも眼は虚ろなままだ。

それを見てシオンは言った。


「あんたは強いね。誰にも頼らないんだからね。でもその強さは周りを不幸にするよ」


「もう遅いわ」


もう遅いという言葉を聞いてシオンは納得した。


「そういう事かい。なんでそう思ったかわからないけどどう思ってるかは分かった」


そう言ってシオンは短刀を首元から離す。

そして馬乗りの状態から体を退かした。


「アンタはなんか悔やんでいるだろ?誰かを失ったかい?」


ミヤビは無言でそのまま動かない。

シオンはそのことを肯定と捉えて話す。


「私もさ。そういう事あるよ。仕事柄暗殺相手を愛してしまった事もある。でも私は殺す。それが私だから。アンタはあるかい?そういうの」


「そういうの?」


「そうさ。どうなりたいとか何なりたいとか、そういう人を犠牲にできるほどの理由がさ」


「貴女はなに?」


「私は単純さ。金持ちになりたい」


「お金のために人を殺すの?」


「当然さ!それが私達なんだからね。といっても姫様には下賎な話か・・・。でも金があれば好きなものはなんでも手に入る。金と力があればこの世で何も失わずにいられる。そういうの


が私の欲しいものさ」


「でもその為に人を失わせているじゃない。そういうのって何とも思わないの?」


「思わないね!失ったのは私のせいじゃない!そいつがバカだからさ!私はそんなバカな自分を叩きなおす!どんな手を使ってもね!」


「どんな手を使っても・・・」


ミヤビはその言葉を聞いて思う。

この人は、マリアと同じなのだ。

欲しい物のために周りを犠牲にできる人。

そしてそれを悔やまないで入れる人なんだ。

私はそれは出来ていない。

そうなれれば、もう友達を失わずにいられるかな?

でも私は出来るのだろうか?

考えるミヤビは一つの賭けに出た。


「シオンとか言ったわね?」


「ああそうさ。私はシオンさ」


「じゃあシオン。私を殺しなさい」


シオンはその言葉を聞いて唖然とした。


「あんた私の話を・・・」


シオンは言葉の途中でミヤビの眼を覗きこむ。

以前のような虚ろな目ではない。

だが、光の灯りそうな目だ。

その眼の光は自分の言葉ひとつで灯るか潰えるかの境目であるとシオンは感じていた。

だから笑った。


「はは。どうしていきなりそんな事思いついたのかい?」


「試しているの?私が貴女のレベルに追いつけるように。想いを叶える運があるかどうかを。この命を貴女に預けるわ」


シオンは嬉しくなった。

自分の言葉が人をやる気にさせた。

それが殺すには惜しいという気持ちを持った。

だからこそ、少し殺したいと感じた。

矛盾してるね私は。

そう自身を笑った。


「そうさ。その眼だ。少し興味が沸いたよ。でも今殺すのは惜しいな」


「殺さないの?」


「ああ、今わね」


シオンは思った。

これがこの姫を殺せる最後のチャンスかも知れない。

だが、この眼に灯った光が何を照らしだすのかを見たくなった。

我ながら詩人だね。

そう自分を皮肉って笑った。

今は殺さないというシオンの発言にミヤビは反応した。


「殺さないの?じゃあ私の部下になりなさい」


「は?」


ミヤビの言っている意味が分からなかったのだ。

というより、なんでそういう言葉が出たのかが分からなかった。


「私は今からアンタを付け狙うアサシンなんだよ」


「丁度いいじゃない。私を殺すチャンス。増えるわよ」


「いや、でも」


シオンは動揺した。

つい五分前とは印象が異なる。

こいつは化けるかもね。

そういう楽しさがこみ上げてきた。


「いやだね」


そうキッパリと言った。


「分かった」


ミヤビはすんなり引いた。

シオンはそのことについても驚いた。

なんて変わり身の速さだい。

そう思っているとミヤビは続けた。


「じゃあ私に協力してくれないかしら?たまに依頼させて欲しいの。報酬は弾むわ」


「ふふ。そんなんで命張れるかい。信用が大事なんだよ」


シオンは笑ってそう断った。


「ふふ。じゃあ問題ないわね。私は信用してるから後は貴女次第よ」


「なんでそういう結論になるんだい?」


「だって、貴女私を殺さなかったじゃない。命の恩人は信用すべきだわ」


「いやそれでも・・・」


シオンはしどろもどろになりながら返答を探す。

だが、結局思いつかず、ベットから飛びさってベランダに行く。


「あー王族ってのはこれだから!いいかい!本当に私に依頼したかったら私の信頼を勝ち取ってみせな」


そう言ったシオンに対して、ミヤビは笑って応える。


「ふふ。ありがとう。期待してくれて!」


その笑い声を聞いて複雑な心境になる。


「あーもう王族ってのはどいつもこいつも!」


そう言いながら夜の闇に消えていった。

それを見送ったミヤビは呟いた。


「覚えておいてシオン。貴女が見たのが、私の初めての"マリア"よ」


そういってミヤビは欠伸を一つした。

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