露滴るメイドさん
行動はエスカレートする。
「遅い!もっと早く効率的に熟しなさい。次は昼食の皿も洗ってやってもらいます」
リンと話して数日が経った。
今はジャクリーンがミヤビの仕事を見ている。
ジャクリーンはたまに、メイドたちの仕事を見て回って叱咤激励しているのだ。
今日はミヤビの番。
ミヤビは日々やり方を工夫し、より速く仕事を熟すようになっていた。
「ミヤビ。速いというのもいいですが、もっと楽な方法も探しなさい。要は綺麗になればいいのです」
「はい」
速くなったといってもまだまだ遅い。
ジャクリーンにとっては満足いかないレベルだろう。
だからもっと速く綺麗に出来るようにする。
それでいて、簡単にやる。
全てをいっぺんに良くすることはできない。
だから、1つづつやる。
「終わりましたね。次はお皿を洗ってください。ジェシカに指導を頼みましたから彼女から聞いてください」
「はい」
今までは掃除が主だったが、だんだん仕事の内容が増えてきた。
それはジャクリーンが認めてくれた証拠なのかは分からない。
だが、ジャクリーンもたまに褒めてくれるので、少しうれしい気持ちになる。
ジャクリーンと別れ、キッチンに向かっていると、カロルとクロエと廊下で窓を拭いている。
脚立を使って高い位置を拭いているクロエとそれを支えているカロルにミヤビは会釈をしてから、横を通り過ぎようとする。
だが、ミヤビの進行方向にカロルが割り込んで道を塞ぐ。
ミヤビは笑みを崩さないように務めた。
「どうしたのですか?」
カロルは意地悪そうに微笑んでその質問に答えた。
「いえね。貴女って皆に好かれるわよね。その秘訣を教えてもらおうかしらと」
「秘訣など。皆さんが優しいだけです」
「あーら。マリア様のお気に入りは、何の努力もしてないとおっしゃるのかしら?」
カロルがそう笑った瞬間、ミヤビの上から水の入ったバケツが降ってくる。
ミヤビはバケツからこぼれた水で全身を濡らした。
それをみたクロエが笑って言った。
「あらごめんなさいね?手を滑らせちゃって。でも丁度そこにいるなんて貴女も運が無いわね」
全身を濡らしたミヤビは反論する気力もなかった。
だが、心の中からの怒りは収まらない。
だが、それを表に出さないように務めた。
「いえ大丈夫ですよ。私は先を急ぎますので」
そう言って笑いあうカロルとクロエを置いて歩き出す。
今度は行く手を阻まれなかった。
それだけで、ミヤビはほっとする。
そして怒りとは別に思うことがある。
この程度ですんで良かった、と。
全身が濡れるだけなら大した問題もない。
それよりお皿を洗うほうが先だとミヤビは思う。
廊下を抜け、キッチンに向かう。
「どうしたの!?そんなに濡れて!!」
ジェシカは大きな声を上げて質問してきた。
ミヤビはその声に静かに応える。
「大したことはないわ。それよりご指導よろしくお願いします」
「そんなことより着替えて来て。風邪引いちゃう」
「え、でもそんなことしたら仕事が押して、ジェシカも怒られるわ」
「そんなこと構いやしないわ。分かったらさっさと着替える!」
そう言ってジェシカはミヤビの背中を押して、部屋に戻らせた。
ミヤビは急いで部屋に戻り、濡れていない服に着替える。
そして急いでキッチンに戻った。
するとジェシカが1人で皿を洗っている。
だが、進行度は遅い。
メイドの全員の分の皿だ。
1人で熟せる量ではない。
「ジェシカ」
その声掛けにジェシカは手を動かしながら応じる。
「着替えてきたのね。悪いけど教える時間は限られているから種類と洗い方の説明は簡単にしちゃうから」
「わかった」
そう言ってミヤビは腕まくりをしてジェシカのもとに向かう。
早口で説明しながら、作業を進めていると、ジャクリーンがキッチンに訪れた。
「まだこれだけしか終わってないのですか?貴方達2人ならすぐに終わると思ったのですが」
ジャクリーンはそう言った。
そして、ジャクリーンの背後から別の声がした。
「ジャクリーンメイド長。ミヤビはジェシカに殆ど任せっきりで歩きまわってました」
「そうです。私も見ました」
カロルとクロエだ。
その言葉を聞いてジェシカは何かを閃いた。
そして、カロルとクロエに目を向けた。
「貴女達ね!!」
そう憤慨するジェシカをミヤビは手で制し、ごめんねと呟いた。
そしてミヤビはジャクリーンに頭を下げて説明した。
「私の不注意で服を濡らしてしまって着替えに戻ってました。すみません」
対するジャクリーンは頷いて答えた。
「わかりました。では作業にもどりなさい。カロル、クロエ貴女達もですよ」
そういうとカロルとクロエは返事をしてキッチンを出た。
それを見計らって、ジェシカは抗議しようとした。
「ジャクリーンメイド長!」
だがジャクリーンはその言葉を最後まで聞かなかった。
「今回のことは不問にします。それでは続きをやりなさい」
そう言ってジャクリーンはキッチンを出て行った。
それを見たジェシカは不完全燃焼気味に怒っていた。
「もう!なんなのよあの2人は!」
そう怒っていた。
「ありがとうジェシカ。ごめんね」
「ミヤビが謝ることなんてない」
「うん」
そうして2人は作業に戻る。
作者の文才が足りないばかりに水を被るだけで終わっていしまった。
本当は押さえつけて虫の死骸を口から押し込むぐらいしたかったですが、どうしてもその流れに持っていけなかったんです(´・ω・`)




