メイド達の憂鬱
問題はあれど、淡々と仕事をこなしていく。
そんなミヤビにも色づくことがあった。
ミヤビはマリアに意見を聞かれるようになってますます忙しくなった。
マリアとの会話が今まで以上に長くなり、睡眠時間が削れる。
部屋に帰ると直ぐに寝てしまうような状態だ。
それでも仕事は熟していく。
睡眠時間はギリギリまで取れば、それなりの体力回復ができる。
それに数日に一回は何もしなくていい日があるため、体を休めることができる。
ミヤビは仕事をこなして休憩室にいた。
休憩室で1人でお茶を飲んでいるとカロルとクロエが話しかけてきた。
「今日はマリア様に呼ばれなくて暇なのかしら?」
「最近は忙しいように見えるけど?忙しいそうにするのって大変そうね」
2人は最近よく絡んでくるようになってきた。
ミヤビはそれを交わしながら生活を送っている。
正直最近つらいのは、半分この2人のおかげだ。
まったく、毎回ご苦労様だわ。
そう思いつつも表面では笑って対応する。
「私は仕事が遅いですから。皆さんの足を引っ張らないように頑張ります」
「ふーん?それはいいけど最近はマリア様の部屋で何やってるの?」
「お気に入りだもんね。人に言えないようなこと・・・」
何を言ってるのか分からない。
人に言えない事とは何のことだろうか?
質問すると余計面倒になることは分かりきっているので、あえて問わない。
「お話させて頂いております」
ミヤビにとっては紛れも無い真実だ。
だが、2人にとっては疑わしい事実だろう。
それも分かっているが、ミヤビにはどうすることも出来ない。
ただ2人が歩き去ってくれることを希望していた。
「なんだか楽しそうね。私達が働いている時間に」
「仕方ないわ。この子はお気に入りなんだから」
ミヤビもだんだん我慢しがたくなっている自分を自覚していた。
ここまでハッキリ嫌味を言えるのに、なんで思ってることはハッキリ言わないのか?
それはミヤビにはわかりにくい心理だった。
その時メイドの休憩室に入ってくるジェシカがいた。
「あーミヤビ?今時間ある?シン様が呼んでるんだけど?」
助け舟が来た。
「わかった。ありがとジェシカ。カロルさんクロエさん失礼します」
「いいのよ。シン様にまで呼ばれて忙しいことね」
ミヤビは席をたって部屋を後にする。
去り際に声が聞こえる。
「次はシン様に取り入ってるわね」
そういう言葉を聞いたがミヤビは無視して外に出る。
「大丈夫ですか?」
そう声をかけられた。
「大丈夫です。問題ありません」
「そうですか。何か手伝えることがあるなら言ってください」
「心遣いありがとうございます。リン様」
リンと呼ばれた男は目を見開いて驚きを表情で表す。
「驚きました。やはり貴女は騙せないのですね」
「そういう冗談はたぶんシン様は言わないと思うので、リン様と名乗った時はリン様。シン様と名乗った時はシン様かリン様。そういう事です」
「なるほど。貴女は私たちの性格を私達以上に分かっているようですね」
「いえ、たまたまです。それで今日はいかがしました?リン様」
「様はやめてください。マリア様の顔でそう言われるのは変な気分です」
「それは申し訳ありません」
ミヤビは頭を下げて謝罪する。
「すっかり板について来ましたね。マリア様に言われて少し様子を見に来ただけです」
様子を見に来ただけだと言ったリンに対して、ミヤビは深々と頭を下げた。
「気にかけていただいてありがとうございます。マリア様にもそうお伝え下さい」
その返答を聞いたリンは微笑んだ。
「初めてあった時より強くなりましたね。少しさみしいですが」
「そんなことありませんよ。私は弱いままです」
そうやって微笑みあった。
「じゃあ伝言は必ず伝えます」
そう言ってリンは去っていった。
ミヤビはその背中を見送るとため息を付いた。
「ふぅ」
緊張した。
ミヤビとリンは久しぶりにあったのだ。
ミヤビはミヤビで忙しかったし、マリアの部屋に行った時にいつも用事を言いつけられるのはシンだったからだ。
だから、どう話せばいいか迷ってしまった。
だが、なんとかなったと溜息。
それと同時に少しさびしくなった。
愛想が足りなかったかな。
そう考えるミヤビに、壁からこっそり見ていたジェシカが話しかけた。
「ん~?逢瀬は終わりかな?」
その声を聞いてミヤビは振り向いた。
「ジェシカ!!いたの!?」
「そりゃあもう!ミヤビを呼んだのは私なんだから聞く義務があるわ」
ジェシカは何故か誇らしげに言った。
そして言葉を続ける。
「ミヤビ。叶わなくても私達は友達だよ。いつでも相談に乗るから」
「もう、ジェシカったら。そんなんじゃないわ」
そう言ってミヤビは苦笑する。
確かにリンは美形といっても過言ではない顔をしている。
それに優しいし、一緒にいると心強い。
そう思った時ミヤビは自分の心に疑問を思った。
一緒にいると心強い?
「まぁ恋なんてのは私は大好物だからね。こんな女ばっかの園だったら一層ね」
「そうね」
確かにリンは人気もあるだろうし、他にも言い寄られてるだろう。
そう考えると少しドキっとした。
なんだか私変だ。
「まぁ恋愛以外でも相談乗るよー。なんでもねー」
そう言ってジェシカは休憩所を見る。
カロルとクロエのことを言っているのだと直感した。
ジェシカは気にしてくれているのだ。
「ありがとう、ジェシカ。じゃあ仕事戻るね」
そう言って2人は別れた。




