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普段着飾らない人間が着飾ると訳もなく動揺してしまう

 元は良いのに勿体無い!

 って人、割りと多いですよね。

 「ふぃー」


 殿様のいる部屋を退室した後、コキリッと首を鳴らしながら一息つく燎次。

 使った道具を手入れしながら片付けていると、部屋の一角がヤケに賑やかな事に気が付いた。

 見ると、化粧係の女性陣が誰かを取り囲んでわいわいしていた。


 彼女たちが騒がしいのはいつもの事だし、どうせ次の演舞の準備でもしているんだろうと思って再び作業に戻る。


 「じゃあ、行ってくるねー」

 「おー、頑張れよ」


 と演舞に出る奴らに声援を送ってふと見るとさっきの一角でまだわいわいやっていた。


 ?

 演舞に出る奴に化粧をしている訳では無いのか?


 じっと目を凝らす。

 女性陣に囲われている人物はこっちに背を向けているから顔は見えない。


 

 見に纏っているのは薄い布を幾重にも重ねた桃色と少しの白に嫌味にならない程度に豪華な刺繍が施された、まるで桜の精が着ているような衣装だ。

 短い黒い髪は結い上げられてはいないが黒檀の様な黒さと雪のように白い肌の輝度の差が結い上げ無い事で際立っている。


 ………ん?短い髪?


 ぼんやりと見つめているうちに短い髪という無視できない情報に我に帰る。

 今、ここにいる人物で着飾る必要があり、尚且つ短い髪の持ち主と言ったら一人しかいない。


 「風兎か!?」


 慌てて確認しようと近付くと、誰かに肩を強く捕まれた。

 邪魔された苛立ちを含めた視線をその者に向けると、それよりも遥かに強い眼光で睨み付けられて思わず怯んだ。


 「なぁに、邪魔しようとしてんのよ」

 「べ、別に邪魔しようとなんてしていないぞ?

 ただ、確認しようと………」

 「それを邪魔って言ってんのよ。

 女の支度最中は見ない、これは世の男共が守る鉄則でしょうが」

 「そんなの初めて聞いたんだが………」


 燎次の言葉は再び二三に睨み付けられて尻すぼみになる。


 「それに………見たいし」


 本音をボソボソと呟いた。

 そんな燎次を見て二三ははーっと深いため息を吐いた。


 「後で見れるから今は我慢しなさいな。

 風兎ちゃん、ただでさえ嫌がっているのを無理矢理やって機嫌悪いんだからアンタが今、風兎ちゃんと会話したら更に機嫌悪くさせちゃうわぁ」

 「いや、なんで俺が機嫌悪くさせるんだ?」

 「ふ、まだ出来上がっていないけれど風兎ちゃん、やっぱり元が良いのね、かなりのものよ?

 そんな可愛い風兎ちゃんを見てアンタ、普通に対応できる自信あるぅ?」

 「………」

 「アンタがもじもじしてるのを見たら風兎ちゃん十中八九笑うのを堪えてると捉えて余計ヘソを曲げるわぁ」

 「………否定出来ない」

 「意気地無しが」


 二三の言葉にぐうの音も出ない燎次であった。



 そうこうしている間に、化粧係の女性陣が完璧に仕上がったと歓声をあげた。

 風兎は立ち上がり、と同時に舞が終わったメンバーが部屋に入ってくる。

 それと入れ替わりに風兎わオルゴールを持って直ぐ様殿の待つ部屋へと入って行った。


 支度が終わったら覗き見をしようと思っていた燎次だったが、風兎が他の人の影にいたため見る事が出来ず、直ぐ様部屋へと入ってしまった為に風兎の着飾った姿を見る事が出来ず、しばらく悶々とするはめになったのであった。



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