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毒舌人形

 なんか、ありそう(笑)

 部屋に戻ると笛吹の人形劇は終わっており、燎次が既に中でやっているようだ。

 次は演舞か。

 確か、本当は殿様は剣舞を見たかったんだけど殿様の威厳に関わるからって家臣に反対されたんだっけ。

 まぁ、それは表向きの理由で本当は暗殺をされない様にするから駄目だって言うから世知辛い世の中だ。

 うーむ、どこに行っても血生臭い話はあるものだな。


 視界の端で笛吹を確認したので近付く。


 「笛吹さん、さっき聞いたんだがここの殿様は貧しい人や身寄りの無い人を積極的に雇っているそうだ。

 良い人だよな」

 「………」


 笛吹は黙って自分の風呂敷から幼い女の子の形をした人形を取り出して自身の左手に装着した。

 人形の口がかぱりと開いて幼い子供の声が飛び出してくる。


 『アンタ馬鹿じゃないの?

 殿様がただ貧しい人や身寄りの無い人を雇う訳無いじゃない』

 「………日和ちゃんが登場ですか」

 『何よ?出ちゃいけないっての?

 アンタ何かに私を拘束する権利なんて無いじゃない!』


 この女の子の人形の名は日和ちゃん。

 日和と言う優しげな名前に反して彼女は割りと毒舌キャラだ。


 笛吹は自身では喋らず、代わりに人形が彼の言葉を代弁する。

 この日和ちゃんはもっぱら他人を馬鹿にしたり見下したり鼻で笑ったり脅したり辛辣な言葉を吐いたりする時に登場する人形だ。

 普通、人形であろうとそんな態度を取られたら腹がたって止めさせる様に言う人もいたりするのだろうが、彼女の愛らしい見た目から出される身を抉る様な言葉が一部の客に受けるらしい。


 ちなみに私は何気にこの日和ちゃんが好きだ。

 あ、ちなみに罵倒されて悦ぶような変態ではないとここに明記しておく。


 「ただで集めないって事はなんで雇っているんだ?」

 『ふん、アンタ馬鹿?

 それ位自分で考えなさいよ』

 「それもそうか」


 なんでもかんでも人に聞けば良いってもんじゃないしな。


 しっかし、貧しい人や身寄りの無い人を集める理由なんて想像したら人身売買とか売春みたいな悪どいことしか思い浮かばないから自分の思考回路は結構片寄っていると思う。

 思いついた物の中で共通しているのはただ一つ。


 「………突然いなくなっても誰も怪しまない……か」

 『なんだ、アンタもやればできるじゃない!

 その通り、よくやったわ!』

 「はは、ありがとう」

 『べ、別に誉めてなんかいないんだからね!』


 そう、日和ちゃんはツンデレキャラなのである。

 可愛い人形がツンデレ。

 萌えることはあっても腹を立てることはない。


 「でも、いなくなっても怪しまれないって一体ここの殿様は何をやっているんだ?」

 『知らない方がいい事が世の中にはあるのよ』


 そう言った日和ちゃんを風呂敷に仕舞う笛吹。

 どうやらもう、喋る気はないらしい。


 ふむ、知らない方がいいこと、か……。


 不意にさっきの女中さんが言っていたご馳走と言う言葉を思い出した。


 まさか、な。


 あり得ない事を思いついた、そんな自分に苦笑してそれ以上考えるのをとりあえず止めた。


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