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ちょっと探検ーと言って迷子になる可能性は高い

 私は迷子体質らしく、友人や家族と出掛けたら三回に一回ははぐれてしまいます(笑)

 なんでだろう?

 「良い、面を上げよ」


 そこ言葉に深く下げていた頭を上げると髪に付けた髪飾りがシャランッと音を立てた。

 綺麗に結い上げられた髪だが、少し長さが足りず首筋に数本髪が掛かっておりそれが何処と無く色気を醸し出している。

 朱をさした唇をゆっくりと開いた。


 「今日はわざわざ『隻翁』をお呼び頂き誠にありがとうございます。

 皆様が楽しい一時を送れるよう誠心誠意演じさせていただきます」

 「うむ、楽しみにしておるぞ」


 和やかに進んでいく会話にほーと内心感心しながら風兎は自分の右斜め前方で座っている二三を見た。


 今日はここ、椿城の当主である羽田信頼はたのぶよりに呼ばれ『隻翁』のメンバーが来ていた。

 桜乱祭の真っ最中であるため、流石に座長の伯田や目玉となる売れっ子メンバー全員という訳にはいかなかったがそれでも実力は確かな者たちが揃っている。

 売れっ子メンバーではリーダー兼役者の二三、奇術士の燎次と、そして風兎ともう一人、人形使いの笛吹うすいだ。


 笛吹の人形の操りはかなりのレベルだと風兎は思っている。

 ちょっと違うかもしれないが例えるならいっ○く堂レベルだ。

 手には嵌めないが声色を分けて様々な役割を演じているので強ち間違ってはいないと思う。


 現代と人形の仕様は違うが中々に面白く興味を惹く。

 興味を惹くと言っても人形の巧みな使い方もそうだが、その大きな理由の一つと言うか謎が笛吹にはあった。


 それは、いつも覆面をしている事だ。

 人形使いなので別に着けていても可笑しくは無いのだが、それを演目の最中だけではなく四六時中つけているとなったら話は別だ。

 服装は普通なのにいつもまるで黒子がつける様な顔を覆い隠す物を着けている。

 食事の時はどうするのだろうと思ったら食事の際は口元だけ無い面を着けていた。

 素顔が見たい。どうしても見たい。

 そんな理由で笛吹は風兎の興味を惹き付けて止まない。


 一旦準備をすると言う理由で部屋を下がらせて貰う。


 演目順は人形劇、奇術、演舞、オルゴール、演劇の順となっている。


 ふすまの隙間から覗き見ようとしたら何者かに襟首を捕まれた。


 「ぐえっ!」

 「おい、お前は俺の手伝いだ」

 「う、ちょっ、絞まってる絞まってる!」


 襟首を掴んでずるずると引き摺られるため全体重が首に掛かる事になり、首が絞まっている。

 必死で燎次の手をタップすると勢い良く離されたため頭を勢い良く床に叩きつける結果となった。

 ………わりと良い音がした。


 「あ、わりぃ。大丈夫か?結構な音がしたが」

 「誠意の欠片も感じない謝罪をどうもありがとう。

 幸い石頭なんで大丈夫だが、私の心はいたく傷付いた。

 この傷を治すのは人形劇しかない!と言う訳でアデュー」

 「おい待てコラ」

 「………冗談だ」


 ちっ、上手くいくかと思ったんだがそうそう簡単にはいかないようだ。

 服を軽く叩きながら立ち上がり、燎次に何をすれば良いのかと聞く。


 「道具の準備を手伝ってくれ」

 「りょーかい」


 燎次と二人でタネを仕込んでいく。

 燎次は私がタネを知っているのに気付いたらしく、最近こうして手伝わせるようになった。


 全く、人使いの荒い奴だ。

 なぁんて、新人のぺーぺーが言える訳が無いのだが。

 まぁ、燎次を普段あれだけからかっておいて何を今さらと言う気がしないでも無いが。


 「親方、こちらの仕込み完了したであります」


 敬礼しながら報告する。


 「親方?」

 「それは気にしない方向で。次は何をすれば?」

 「演舞の手伝い………はお前着付け出来ないんだったな。

 じゃあ無理だ」

 「………」


 誰も出来ないとは一言も言っていないのだが、別にわざわざ言うことでも無いし黙っておく。


 「おるごうるの準備でもして大人しくしておけ。

 いいか?大人しく、だからな?」


 なんだその大事な事だから二回言いました的な発言は。


 「返事は?」

 「分かった。

 ところで、トイレ、じゃなかった廁に行ってくる」

 「案内してやる」

 「いい、次は奇術だし間に合わなかったら大変だ」

 「じゃあ、二三と一緒に行け。

 道、分からないだろう?」

 「わざわざ二三さんの手を煩わせる必要はない」

 「………大人しくしている気、無いだろう?」

 「え?あるよ?」

 「廁に行くついでにちょっと探検ーとか考えてないか?」


 軽く口笛を吹きながら視線を反らす。


 「………二三と一緒に行け。

 いいか?くれぐれも、絶対、二三と、一緒にいるんだぞ?」


 なんか凄い念を入れられた。


 「あーもう、分かったよ」


 手を上げて降参する。


 「じゃあ、行こうか」

 「うぇっつ」


 いつの間にか二三が近くにいた。

 逃がさないわよと笑顔に副音声が付いている。


 「気をつけてな」

 「はーい」


 襖を開けて廊下に出ると女中さんがいた。


 あれ?これって二三さんと一緒に行かなくても良かったんじゃないか?

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