目を反らす………某ボカロの楽曲風
私は空想フォレストが好きですね。
「へー、本当に苦手なんだな」
当の燎次は床で青い顔で縮こまっており、その周りを鮮やかな色彩を持つ様々な蝶が飛び交っている。
世界最大の蝶と言われるアレクサンドラトリバネアゲハを指にとまらせる。
「こんなに綺麗なのに」
そろそろ燎次が死にそうなので再びオルゴールを操作して蝶の映像を消した。
「それで?何が大丈夫かなんだ?」
一度台の上にオルゴールを置いた後、燎次に近付いて話しかける。
私がチョコレート大福を食べ損ねたのは元はと言えば何かを心配して駆け込んできたのが原因だった事を思い出した。
「はっ!!そ、そうだった!
大丈夫か?何も無かったか?」
「何を藪から棒に」
いきなり復活して此方ににじり寄って来たので思わず後ろに一歩下がる。
背が高いから威圧感が半端ない。
「狢首だよ!狢首が来ただろ!?あいつの臭いがぷんぷんする!」
「狢首?臭い?
………あぁ、あの面白い人か」
名前を覚えていなかったので一瞬誰だろうと思ってしまった。
てか、臭いって何だ。
「何かされただろう?何された?」
「何かされる事は確定なんだな。
んー、特にこれと言って言うような事は無いが敢えて言うなら……………匂い嗅がれた」
「なん、だとぉぉ!!!!???」
ガシッと両腕を強く捕まれる。
何だ?というか痛い。
「他に何された!?」
「いや、別に何も」
直ぐに殴り飛ばしたしと続けるとはーっと大きなため息を吐かれた。
「お前の手が早い所は直さないといけないと思っていたが、今回はそれに救われたな」
「おいちょっと待て、誰の手が早いって?
私は温厚派だぞ?失礼な奴だな」
それに得意技は殴るのではなく蹴りだ。
「………温厚派と言うのなら今すぐ俺の足を親の敵の様に踏んでいるその足を退けてくれ」
「おっと、これは失礼」
どうやら無意識の内に踏んでいたようだ。
あぁ、そうだ。
踏んでいる内に思い出した事があった。
「そう言えば、あいつ匂いを嗅いで
『この臭い……燎次かっ!?』
とか呟いてた様な気がする。
何?臭いを覚え合う様な仲なのか?」
属に言う、ポーイズにラブってる奴なのか?
いや、別に人の恋愛にケチは付けないしマイノリティには理解がある方だと思っている。
うん、とりあえず生暖かい目をしておく。
「おい、何だその目は!?
お前絶対何か勘違いしているだろ?!」
「いや、別に?
同性愛は悪い事じゃない衆道も良いだろ」
「俺は同性愛者じゃねぇ!!」
「照れる事何か無い。
私は応援しているぞ」
「いらんわっ!!
それに俺が好きなのは狢首何かじゃなくておまっ………」
突如赤い顔で言葉を途切らせる燎次。
おまって何だ。
「どうした?」
「………何でもねぇよ。
そ、それより、体の何処か可笑しい所は無いか?
くらくらするとか気分が悪いとか狢首の事が頭から離れないとか」
「別に無いぞ」
「そうか!良かった!!」
何か満面の笑みを浮かべている。
「やっぱ時間をかけて術を練ればあいつに勝てるんだな。
でも、あいつの方が腕は上だしなぁ、直ぐにやり返しにきそうだ」
私の腕を掴んでいた手を離し、何やらぶつぶつ言いだした。
うーん、とりあえずそろそろ部屋に戻りたいから帰って欲しいんだが。
「おーい、燎次。
そろそろ帰れ」
「ん?あ、あぁ。
風兎、一つだけ言っておく」
「何?いきなりあらたまって」
「良いから、 これだけはどんな状況でも必ず守ってくれ。
何があろうと絶対狢首の目を見るな」
「?」
訳が分からない。
「今はまだ意味は分からなくて良い。
だけど、絶対狢首の目を見るな。
いいな?」
「分かった。
何でかは知らんがとりあえず目を見なければ良いんだな?」
「ああ」
こうして、変な約束を交わしてから燎次は去って行った。
目を見るなって一体何なんだろうか。
一瞬、某ボカロの楽曲を思い出したが多分違うだろうなぁ。




