皮算用は夢を膨らませる魔法の言葉
当たりもしない宝くじの賞金の使い道とか考えるとわくわくします。
伯田呉汰に呼ばれた次の日、六さんが風兎の元へやって来た。
「………よろしく」
「……引き受けたんですか?」
風兎の質問に六さんがこくりと頷いた。
「すみませんご迷惑を…」
「………良い、面白いから」
「はぁ……」
本人が良いのならそれで良いが何だが釈然としない風兎だった。
「………前のと、同じで良いか?」
そう聞いてくる六さんにちょっと待ったをかける。
「その前に、良い香りがする木って何か分かります?」
「………良い香り?」
「はい」
「………良い香りと言うと、楠、桂、月桂樹、白檀とかだ」
「白檀?」
「………貴族の扇とかで使われる………扇ぐと良い香り、する」
「そうなんですか?うーん、それじゃあ、この間と同じ木材で同じ部品をそれぞれ5つずつ。
その、白檀で同じ部品を3つずつって作れますか?」
流石に約2日では厳しいだろうなぁと思いながらダメ元で聞いてみる。
「………出来る」
「本当ですか!?」
何でも無い様に頷いた六さんに驚いた。
「………その程度なら、簡単」
「簡単って………」
部品数はかなりあるのに余裕そうだ。
六さん凄い。
これが大人の余裕と言う奴なのだろうか。
いや、まぁ六さんの年齢知らないけど。
「………何のために?」
「ああ、座長は扇風機を設置して観客に風を送ったりして扇風機の性能をアピールするみたいです。
それで話題になれば流行に敏感な貴族の耳にも入るでしょうし、直ぐに手に入れたがる人は出てくるはずです。
その時に備えて貴族用の扇風機を作っておけないかと」
「………なるほど、だから白檀、なのか」
納得した様に頷く六さん。
扇風機は風を送る物だ。
その風が良い香りだったら更に快適になりそうだし、この時代の貴族は香りに拘るらしい。
白檀は扇子に使われる位だし御高く止まっている貴族には堪らない一品となるだろうと風兎は予想する。
打ち合わせを済ました後、早速作業に入ると言う六さんと別れて思考にふける。
入座するにあたって最初に伯田呉汰はこう言った
『芸をして籠に投げられた分を折半、おひねりは全て芸人の物。たまにある屋敷で芸をするのはみんなで山分けじゃ』
扇風機は風兎の知的財産だ。
貴族に対して売るとなった場合、知的財産に対しての分け前は取り決めていなかった。
が、部品を作ったのは六さんで、組み立てたり設計図を書いたのは風兎なので分け前は4:6みたいな感じで純利益は風兎と六さんの物となるだろう。
恐らく紹介料を取られるだろうがそれと同時に『隻翁』は知名度を得る事ができるのだから少額だと予想できる。
ビジネス的に考えると全員に益がある良い話だ。
現代に帰るまでの間暮らす為の資金と、この時代の甘味を食べたい風兎に取ってはお金を得る事は何よりも重要だ。
この時代の甘味は高すぎるし、上級貴族しか食べれないとか馬鹿じゃないのかと風兎は本気で思っている。
風兎の持論では、本来なら発明は利益の為に生み出す物では無いのだが、致し方無い。
全ては甘味の為に!!!
まぁ、今のところ捕らぬ狸の皮算用なのだが。




