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ブリザード空間

 『隻翁』の朝は早い。

 朝日と共に起き、朝食の後に己の技を磨き、昼と夕に公演を行う。

 休みは週に2回、月曜日と水曜日のみ。


 昨日の休みを使って風兎は扇風機を作るにあたって必要な数字を求めた。

 今日は、休み時間を使っていよいよ設計図をおこす。

 図案は既に頭の中にあったのでたまに微調整を加えながらも順調に進んでいく。


 首ふり機能はさすがに難しいからとりあえず風の強弱設定ができる様にしよう。

 羽で怪我をしないようにしっかりと安全措置をして。

 人力で回し続けるなんて本末転倒だ。

 最初は人力、後に自動にするには………。


 等々、頭を高速回転させながら線を引く。


 消しゴムのカスを息で飛ばしてからスケッチブックを掲げる。

 最終チェックをして満足気に頷いた。


 「出来た!!」


 設計図は側面、内部、背後と三枚に渡る物だが風兎はこれを午前中だけで書き上げた。


 ひと休みしてから舞台の準備、開始、終了、片付けを終えた風兎は設計図を携えてたくさんある荷馬車の一つの扉を叩いた。


 荷馬車から出てきたのは一人の男だった。


 「すみません、ろくさん。実は一つご協力を願いたい事がありまして」


 尋ねたのは道具係の六、彼が何歳なのかを風兎は知らない。

 何故なら長い前髪で口元以外顔が見えないからだ。

 かろうじて見える口元から20代後半から30代前半ではないかと風兎は睨んでいる。


 着崩れた着物が気だるさを醸し出しているが、そこに色気は全く無くどちらかと言うと一緒に二度寝をしたくなる雰囲気の持ち主だ。


 「………協力?」

 「はい、ある物を作って欲しいんです」

 「………ある物?」

 「これです」


 風兎は胸元から折り畳んだ布を取り出し、広げた。

 そこには大小様々な歯車や板が大きさを現す数字と共に書かれている。


 「この図にある物を作る事は可能性ですか?」


 布を受け取って見ていた一は頷いた。


 「………可能」

 「是非とも作ってはいただけませんか?」

 「………何に使う?」

 「発明です!」


 風兎の言葉に考えこんだ六だが、ポツリと言葉を漏らした。


 「………何時までに?」


 その言葉に風兎はパアッと輝いた雰囲気を浮かべる。


 「出来るだけ早くです」

 「………分かった」


 そう言うと直ぐに風兎に背を向けて荷馬車の中に戻っていく六。


 「ありがとうございます!お願いします」


 その背に向けて風兎は礼を言った。



 ちなみに蛇足だが、風兎と六の会話姿は傍目にはブリザード空間に見えたとか。



2013.12/31 修正

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