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好きな事をしている時の人間の集中力は半端ないと思う


たまに1日それで潰れて愕然としますよね(笑)


実体験を話すと、

開店時間から夕方の6時くらいまでずっとBOOK・OFFで立ち読みをしてその間一度もトイレに行かず空腹も覚えなかったりとかですかね(笑)


本を読んでいるときは何も生理現象が起きないのでわりと本気で本さえあれば生きていけると思っています。


 捕まえた不審者を放置した後に他の女性陣と合流し、滞在中の場所へ戻る。

 そして入れ替わりに今度は男性陣が温泉へと向かった。

 そして、男性陣が予め切ったりしてくれた食材を使って夕飯の調理を開始する。


 風兎は料理をしたことはあまり無いので基本的にちびっこたちの面倒を見るか頼まれて食器とかの準備をする程度である。

 ちびっこたちとお手玉をしたりして遊んでいると徐々に良い匂いが漂ってきた。

 それに合わせてお腹も鳴る。

 偶々近くを通りかかった人に聞かれてしまい笑われて恥ずかしくなる。



 「風兎さん、ちょっと手伝ってくれないかい?」


 大鍋を掻き回している女性に呼ばれたので近くに行く。


 「ちょっと掻き回しておいて頂戴。私は材料切ってるから」

 「分かりました」


 長い匙の様な物を受け取って掻き回す。

 女性は首にかけた手拭いで額の汗を拭った。


 「いやー、火の側にいると暑いねぇ。春だからまだマシだけだけどこれからどんどん暑くなってくるからやんなっちゃうよ」


 その言葉を聞いてそう言えば叶も同じ様な事を言っていたなと思い出す。


 『調理の火に加えて機械の熱も加わるから夏の調理場は地獄よ?

 食材によってはクーラーとか使えないしねぇ』


 そんな彼女の要望に答えて小型の水冷却装置を作ったよなぁ。

 脇とか主要な血管近くに細い管をテープで貼り付けてその管に冷たい水を通す。

 水が循環するから長時間冷たいままでいられる優れものだ。

 ただ、大きさが小さい故に稼働時間は6時間程度だったけど大分ましになったって喜ばれたっけ。


 「大変ですね」


 そんな事を思い出しながら世間話に講ずる。


 「なぁに人事みたいに言ってるのよ、風兎さんにもその内覚えて貰うんだからね」

 「へ?」


 思わずすっとんきょうな声が出る。


 「当たり前でしょう?女たるもの料理が出来て好きな男の胃袋を掴む位にはならないと!」

 「いやぁ、私は別に誰かとどうこうなる気は無いんで胃袋掴まなくても………」

 「甘いっ!そんなんじゃ何時まで経っても覚えらんないよ?」

 「覚えなくても………」

 「駄目に決まってるじゃない。覚えといて損は無いんだからこれから皆でみっちり仕込ませて貰うよ」

 「………………………分かりました」


 彼女の目を見てこれは逃げれ無いと確信した。


 あー、うん、頑張ります。

 しかし、そうなると夏の調理時の暑さは私にとっても避けられない問題となった訳だ。

 調理中は両手を使っているし、手を使わず暑さを凌ぐとなると………。


 「あっ」


 いいのがあったと思い付く。

 どうしたんだいと訝しげに聞いてくるのに対し何でもないと返しながら、風兎は緩む口元を抑えきれなかった。



 やっと、発明が出来る!


………………………………



 鼻歌混じりに彫刻刀を動かす。

 丁寧に、だけど大胆に彫って模様を刻んでいく。

 最後に、自分のイニシャルを刻んでからふっと屑を飛ばし、ざっと完成品を眺める。


 「うん、完璧!」


 完成した物を持って早速これを作ろうと思い立たせてくれた人物の元へ行く。


 「梅さん!」

 「あら、風兎さんじゃない」


 首に手拭いをかけた、この間風兎に

 『女たるもの料理が出来て好きな男の胃袋を掴む位にはならないと!』

 と力説した梅と言う名の女性である。

 調理中の彼女に早速持って来た物を見せた。


 「何これ?」

 「まあまあ、まずはちょっと見てて下さい」


 そう言いながらそれを梅と見比べて丁度良いポジションにセットする。

 そして、梅から向かって反対側にあるハンドルを回した。


 「?………あら、いい風」

 「そうでしょう?」


 そう言いながら更に回し続け、暫くしてから手を離す。

 手を離してもそれは勝手にクルクルと回り、梅に向かって風を送り続ける。


 「風が良い感じに来て気持ち良いけどそれ何?見たことない物ね」

 「これは扇風機と言う物です」

 「扇風機?」

 「簡単に言うと、風を送って涼しくしてくれる物です」


 そう、風兎が彼女の為に作ったのは扇風機。

 しかも、電気を使わない超エコタイプの。


 両手を使わずに涼しくなる。

 これを思った時に最初に思い浮かんだのはクーラーだった。

 だけど今は平安時代だ、電気なんて物は存在しておらずクーラーは使えない。

 それに、金属やプラスチックも無い。

 そこで、冷えピタとかを思い付いたが医療の知識は無いのでボツ。


 それらの点を踏まえて考えた結果、

 『金属が無ければ木材で作ればいいじゃないな』

 と、この間思い付いた事を試してみようかと思ったのだ。


 そして、考えると扇風機を作るのが一番良いと言う結果に落ち着いた。

 何も動力は電気だけでは無いのだ。


 食事の後、直ぐに設計図におこす事にした。

 だが、ここで問題が一つ発生する。


 「紙が………無い、だと……?」


 現代では百円で束を買える物だが時代が時代な為ここでは貴族が和歌を詠んだり漢文や書物を書くものなのだそうだ。

 つまり、庶民には縁がない。


 ふっざけんな貴族!

 和歌を詠むならその紙くれよ!!


 そう、心の中で叫んでも誰も風兎を責めないだろう。


 別に和歌を詠むのが悪いとは言わないが、庶民にも流用させて欲しい。


 紙が無いのにどうやって設計図をひこうかと悩んだ。

 ちなみに庶民は紙が無いため布で代用しているそうだ。


 布かぁ。

 やっぱり紙の方がテンション上がるし紙で書きたいんだよねぇ。

 でも、その紙がないしなぁ。


 悩んで悩んで悩みすぎて頭が痛くなってきた。

 気休めに飴でも食べようかと隠しポケットの一つに手を入れた時、思い出した。


 飴を取り出さず別のポケットを探る。

 それはやっぱりあった。


 「今日ほど自分の物持ちの良さに感謝したことはないな」


 そう呟きながら取り出したその手には手の平サイズのスケッチブックが握られていた。


 灯台もと暗し。

 最初から持っていた。



 次々と地面に書かれては消されていく謎の文字を一座のメンバーは不思議そうな顔で眺めては書いている人物を見て納得した表情で去って行く。


 謎の文字を書いているのは風兎。

 彼女は様々な計算を地面に書いてし、それによって導き出した数字をスケッチブックに書き写していた。

 ちなみに一座のメンバーが納得した表情を浮かべた時の心情は、

 『風兎なら仕方がない』

 だ。


 地面で計算するのは紙の節約の為だ。

 無表情で、ただひたすら地面に延々と文字を書いては消してを繰り返す彼女の姿は人を近寄らせない何かがあった。

 そんな彼女に近付く勇者が一人。


 「………何やってんだ?」


 恐々とした様子で風兎に燎次は話かけた。

 それに対して風兎は手を止める事なく返答した。


 「計算」

 「計算?こんな訳の分からない文字でか?」

 「XとYとたまにAがあれば大抵の未知数は求められる、あっ!そこ踏むなよ?」

 「へ?っとと!」


 風兎に近付こうとして慌てて一方下がった燎次。


 「何て言ったんだ今?」

 「そこ踏むな」

 「じゃなくてその前」

 「XとYとたまにAがあれば大抵の未知数は求められる」

 「何だそのえっくすとわいとえいって」

 「Xはラテン文字、別名アルファベットの24番目の文字。化学の元素記号ではハロゲンを現す」

 「何語だ、それ……」

 「日本語」


 地面に目をやったまま一向にこちらを見ようとしない風兎を見て燎次はこのままでは会話が始まらないと判断した。


 「まあ、そのままで良いから聞いてくれ」

 「何?」

 「まず、一つ尋ねたい。

 お前は何をしようとしているんだ?」

 「発明」

 「何を?」

 「料理中の暑さを和らげる物を」

 「何のために?」

 「料理を作る人のために」

 「その気持ちは良いことだと思うが、そんな物を作る必要は無い」


 燎次のその言葉に風兎の手がぴたっと止まった。

 そして、燎次を見る。


 「何故?」

 「そんな物を作る暇があるなら少しでも皆を手伝え、今何の時間だと思っている」


 燎次の質問に周りを見渡して風兎は気が付いた。


 「えっ、もう夜!?」


 そんな彼女に燎次は呆れてため息を吐いた。


 「本っ当に気付いて無かったんだな」

 「ごめん、この計算が終わったら直ぐに手伝う」

 「今すぐ手伝え、馬鹿」

 「あとちょっと!お願いおっかさん」

 「誰がおっかさんだ!」


 燎次をからかいながら更に地面に書くスピードを上げる風兎。


 「ちなみに何時からやってるんだ?」


 燎次からの質問に風兎はああっと答えた。


 「朝ごはんの後からだな」

 「半日以上!?」


 すっとんきょうな声をВGМに最後の文字を書き上げ、それをスケッチブックに書き写し、よしっと頷いた。


 「悪かった、直ぐに手伝う」

 「あ、ああ………分かった」


 走って家事場へと向う風兎を見て燎次は呟いた。


 「呆れる位の集中力だな……」


2013.12/31 修正

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