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事態が密かに進んでいることを巻き込まれた本人は知らない事が多い

 晴披はずっと自分たちを付けている者が居ることに気付いていた。

 視線を辿るにそれが風兎を狙っていることも。


 逃がす気は更々無いが下手な事をして逃げられるのも手間だ。

 風兎には悪いが餌になってもらい、獲物がそれに意識を奪われている間に捕らえる事に成功した。

 他にもいるかとしばらく辺りを見回ったが特に見つからなかったので男を連れ帰る。


 取り敢えず、その男を縛って一座の物置に放り込んで座長に報告。

 一座の諜報係であるお里に自分が捕まえた男の経歴やらの個人情報を調べて貰い、それを元に尋問した所男が『時時雨ときしぐれ』の者に依頼を受けた事を知った。


 『時時雨』は『隻翁』と対立関係にある一座だ。

 演目内容も劇に軽業に奇術と被りに被りまくっており、互いの実力は拮抗していた。

 だが、風兎が『隻翁』に入った事でそれは崩れた。

 風兎の持っている『おるごうる』。

 あれは風兎意外には持っている者はいないであろう物だ。

 そんな物があればあっと言う間には劣勢に立たされる。

 焦った『時時雨』は短絡的に風兎を殺して奪う事を考えたのだろう。


 そこまで考えて晴披は己の思考に違和感を感じた。

 「可笑しい………」

 「何が可笑しいんだ?」


 晴披の呟きに隣にいた燎次が反応した。


 「いや、今回の『時時雨』の作戦、随分短絡的過ぎませんか?」

 「やっぱりお前もそう思うか?」

 「と言うことは燎次さんも?」

 「ああ」


 神妙な顔で燎次は頷いた。


 「『時時雨』には狢首がくしゅがいる。あいつがこんな手を打つとは思えん」

 「もしかしたら『時時雨』内にいる別の奴が手引きしたのかもしれませんね」

 「ああ、それが一番良いのだが……可能性としてこれがまだ狢首の計画の一部とかだったら最悪だな」

 「考えが全く読めませんもんね」


 二人揃ってうーんと考えこんだ。


 そして何気なしに空を仰いだ晴披はハッとした。


 「あぁぁぁ!!」

 「ど、どうした!?」

 「風兎さんの迎えすっかり忘れていました!」


 考えが読めたのかと期待していた燎次は晴披の言葉にずっこけた。


 「ちょっと行って来ます!」

 「お、おう。行ってこい」


 晴披を見送りながら、どうも風兎が関わると深刻な雰囲気にはなりにくいと思った燎次であった。




 捕まえた男のいる物置に見張りを立てて貰ってから晴披は急いで風兎を迎えに行った。


 そして唖然とした。

 何故なら刺客がもう一人おり、風兎がそれを自力で撃破していたからだ。


 晴披は歯噛みした。

 この程度の人間・・・・・の存在に気付けなかったことを。


 正直、晴披は風兎を甘く見ていた。

 見た目が男だとしても所詮女だと。

 しかし、それは違った。


 結論から言うと、風兎は強かった。

 それも並大抵の男では歯が立たない位に。

 そして、大の男一人を木にぶら下げられる位には怪力である事も知った。


 この分だと、彼女にあの・・・を教えても良いのかもしれない。

 一座の秘密・・・・・を。


 だが、それは自分ではなく座長の伯田呉汰が判断することだ。



 彼女が真に『隻翁』の一員になる日も近い、と晴披はこぼれる笑みを抑えきれなかった。

2013.12/31 修正

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