表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アブロード  作者: 大鳥椎名
第一部 逃避行
2/31

プロローグ アナザーエピソード『ヴェクナスとレミーア』

 次回から長編に入るので、プロローグが入ります。


「待ってよぉ、レミーア!」


 黒いマントを羽織った少年は叫ぶと同時に転んだ。

 砂漠独特のキメの細かい柔らかな砂が、目から鼻から口からヴェクナスの体内に取り込まれる。慌てたように咳き込むが、かえって砂ぼこりが舞うだけだった。

 ヴェクナスの悲鳴に近い声を聞き、真紅のショートボブが振り返る。


「男の子でしょ! そんなことで泣き声立てないで!」


 レミーアと呼ばれた少女がベージュ色のローブをひるがえして怒鳴りつけた。

 ヴェクナスが何か言いかけたが、気にせずレミーアは続ける。


「大体、この世界を見て回りたいって言ったのはヴェクナスでしょ! 今私たちが立ってる『ヴァンチェニア大陸』の環境は過酷そのものよ。いつまでも泣き言を並べてたら、そのうちどこかで野たれ死ぬことになるのよ。それでもいいの?」

「良くないけど……」


 レミーアは尻餅をついたままになっているヴェクナスに目線を合わせて、その金髪から砂を払ってやる。それが終わると、ゆるやかに立ち上がった。

 再び進路を取ろうとするが、疲れたヴェクナスに気を使い、しばしの休憩を入れることを決める。


 見渡す限りの砂と地平線が広がる中では、まぶしい太陽をさえぎるものなど何もない。

 そこでレミーアは、魔法で砂を固めてドーム状の日除けを作った。ヴェクナスを招き入れて休ませる。


「とにかく、今日中に次の国まで行くのよ。絶対だからね!」

「うん……」


 ヴェクナスに釘を刺した後、レミーアも腰を降ろして大きく伸びをした。

 しばらく日除けに寄りかかって息を切らしていたヴェクナスは、ゆっくりと呼吸を整えてから、それまで頭に浮かんでいた疑問について(たず)ねた。


「歩き始めてから、まだ人を見かけてないけど、旅をしてる人って僕たち以外にもいるのかな?」

「結構いるのよ。これだけ歩いて、誰とも出くわさないのは、ちょっとめずらしいけどね。ただ休んでるのもひまだから、このヴァンチェニアで旅をしてる友達の話をしましょうか?」


 その言葉を聴くなり、ヴェクナスは閉じかけていた目を大きく開いた。

 幼さの残る上目使いで興味を示し、レミーアに続きを求める。


「そうね。最後にその友達に会ったのは、だいぶ前なんだけど、そのとき聴いた話をするわ。彼女が十五歳のときの話なんだけど――」



 ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

 プロローグが長くなりましたが次からが本編です。


 2012/08/17あとがきの変更

 2012/08/31あとがきの変更

 2012/09/18蛇足部分の撤去

 2013/01/28句読点の一部変更

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ