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アブロード  作者: 大鳥椎名
第一部 逃避行
13/31

第四話 エピソード5『猛獣使いの遺産』Aパート

 エピソード順に並び替えたときのためにキャラクターの容姿に関する説明が入ります。


 大陸南東部に位置する村に四人の旅人が訪れた。

 そこは大きな山脈の(ふもと)にある小さな村で、人口は二百人にも満たない。

 村中の民宿が、めったに訪れない旅人の争奪戦を繰り広げる中、「母は村一番の料理人だ」と主張した少女が旅人一行を獲得した。

 宿を確保した四人は二手に別れて買出しに取りかかる。





「まったく、村に入ったその第一声が『うまい料理が食べたい!』だなんて……」


 旅人の一人、ラノハ・グーデルハルスは呆れていた。

 ラノハは人間とドワーフの混血ハーフであり、誇り高き戦士の血筋である。

 外見は小柄で、肩まである髪はクセがついてはねており、常にどちらかの目が隠れている。金色の刺繍ししゅうが施された民族服の上着を羽織り、背中にはバトルアックスと呼ばれる柄の長さに対して刃が小さい斧を背負っている。


 ラノハが悪態をついていると、噂の張本人がラノハの肩を叩いた。


「まあまあ。いい宿が見つかったからいいじゃないか」


 ラノハに話し掛けた男、リックス・マービィの髪もまた肩にかかるくらい長いのだが、こちらはストレートに伸びている。それ以上に彼のトレードマークとして視線を引きつけるのは、背中にかけている身の丈ほどもある大剣である。無数の傷が入った剣の鞘や、動きやすさを重視した軽装からも、彼の旅人としてのキャリアがうかがえる。


 ラノハはため息をついた。

 それを見たリックスは、この地に伝わる神話の登場人物の名前を持ち出す。


「ため息なんかつくなよ。『あらゆる生命はため息をつくことで寿命が五秒縮む』と、伝説の英雄アヴァロンも言ってたじゃないか」


 主人公の名がついた『アヴァロン神話』は、ヴァンチェニア大陸の全土で語り継がれている神話である。

 魔王という架空の存在が登場することから、明らかな創作だといわれるものの、話自体は英雄の偉業をたたえた戦記小説の形をとっていて、当時の世界情勢を知る資料としても重宝される。

 舞台は四千年ほど前のヴァンチェニア大陸だとわかっているが、作者はおろか、いつ編集されたのかさえ不明とされている。


 リックスの発言に、ラノハは反論した。


「アヴァロンの神話は全部読んだけど、そんな言葉は無かったぞ」

「……そうか?」


 リックスは顔をしかめる。

 しばらく何かを考えていたが、武器商人を見つけたとたん、一目散に駆けて行った。


「まったく……」


 ラノハは自身の寿命をまた五秒縮めた。





「これも頂戴。あと、これとこれも」


 ハルムス・ナーフレジャーは買い物にいそしんでいた。

 その少女は短く切り揃えられた水色の髪と漆黒の瞳を持つ魔術師ウィザードだ。

 緑を基調とした衣服をまとっており、全体的に落ち着いた色で整っているせいか、首と腰に巻く真紅のベルトはかえって目立っている。魔術師ウィザードの必需品とも言える木製の杖は腰のベルトに挿していた。


 荷物持ちとしての役割を果たさない二人組を厄介払いしたハルムスは、四人分の食料を買い集めるたび、念力を使ったインチキジャグリングをする超能力者サイキッカーに品物を預け、連れの男は新たな荷物を受け取るたび、それを順番に空中へ放り投げていた。


 超能力者サイキッカーはその名をローランコ・ビアンスキーと言って、自称正義の男である。

 短い金髪と額の赤いバンダナがトレードマークと言いたいのだが、白衣と見間違うような裾の長い真っ白な半袖の上着の方が明らかに目立っている。とても旅をしている人間には見えなかった。


「宝を返還して受け取ったお礼も永遠にあるわけじゃないし、ここらで節約した方がいいと思うぜ」


 常人なら腰が砕けてしまいそうな大荷物をジャグリングしながら、ローランコが呼び止めた。

 ローランコがなぜ荷物でジャグリングをしているかというと、前述の通り、持たされている荷物の量が尋常ではないからだ。視界をさえぎらないようにするのが一つ、荷物を持っているだけという状況で退屈を紛らわすためというのが一つある。


 ハルムスは宙を舞う荷物の山を見て頷き、宿へ戻ることを決めた。

 並列して歩く一方で、ローランコは夕日のまぶしさを荷物で緩和しながら、素朴そぼくな疑問をハルムスに投げる。


「どうして二人を追い払った?」

「あの二人を連れてくると、自分の好きなものばっかり買うからよ。ラノハは食べ物の好き嫌い多いし、リックスは武器商人を見つけたらパッと姿を消しちゃうから」

「……」


 納得のいく理由にローランコは言葉が出なかった。

 彼が共に旅をするようになったのは比較的最近だが、仲間の性格や好みはきちんと把握している。


「念力を使ってるとはいえ、重いでしょ? 手が空いたから持つわ」

「いや、平気だ。精神トレーニングにもなる」


 ローランコが買出しに同行したのは今回が初めてだった。前に訪れた国では歓迎され、必要な食料は買いに行かずとも、国がすべて支給してくれたからだ。

 今回の買い物でハルムスは、乾燥させることで保存食料になりそうな果実や川魚を購入しており、よく見ると栄養バランスもとれていることにローランコは気づく。食料面はハルムスに任せておけば、この先も問題は無いと思った。


 二人は寄り道をせず民宿へ帰っていく。



 ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

 まえがきでも触れましたが、エピソード順に並び替えたときのためにキャラクターの容姿に関する説明がまた入っています。

 あしからずご了承ください。

 次回の更新は四日後くらいを目指しています。


 2013/01/31加筆修正

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