エピローグ アナザーエピソード『ヴェクナスとレミーアⅡ』
「――と、今日はここまで」
「えっ?」
「続きはまた今度。日が暮れちゃうでしょ」
そう言ってレミーアは砂の日除けをさっさと片付けてしまった。ヴェクナスに楽をさせないためだ。
崩れ落ちてきた砂を吸い込んでしまったヴェクナスは、また少し咳き込んだ。
「さあ出発よ! 日が暮れる前に次の国まで行くのよ。今日中の入国許可証が必要なんだから!」
強引にヴェクナスの腕が引っ張られ、無理やりではあったが立ち上がった。
「どうして?」
ヴェクナスが言い終わるのがわずかに早かったか、レミーアは大陸の地図を広げた。
内陸のやや南東を示した、手書きの印を指差してヴェクナスに見せる。
「ここから一番近い国の名前は『カラムト』。今の話に出てきた盗賊の国よ。私がなんで今こんな話をしたと思う?」
ヴェクナスは考える。
やがて入国許可証という単語を頭に浮かべたとたん、ひらめいた。
「あ!」
「そういうこと。旅をするにしても資金が無くちゃ話にならないでしょ? だからこれから稼ぎに行くのよ。一位は私で、二位がヴェクナス。優勝賞品を総なめよ! 予選開始は明日だから」
そう言ってレミーアは足を動かした。
ヴェクナスは身体を震わせて叫びだす。
「や、やだよぉ。きっと刃物とか使ってくる人たくさんいるよぉ。だからレミーア、予選の話飛ばしたんだぁ!」
「さあね。それはどうかしら」
レミーアは足を止める気配を見せない。
「絶対、嫌だからね!」
ヴェクナスの声量が徐々に上がっていく。
それは二人の距離が長くなるにつれて格段に増していった。
「それだったら置いてく。じゃあね」
「え!? え!?」
困り果てたヴェクナスは、ひとまず走った。
今度は転ばぬよう気をつけながら。
「待ってよぉ、レミーア!」
後ほど活動報告にも挙げるつもりですが、次回からは4、5日置きくらいの更新にしようと思います。
何かしらのインターバルを挟んでから、また長編に入る予定です。
ここまで読んでいただいた方には、感謝するばかりです。
小説家になろうの流行に真っ向から逆らった作品ですが、そして作者はまだまだ未熟者ですが、また目を通していただけたら嬉しいです。
余談ですが、ヴェクナスは二位の商品が何も無いことに気づいて、直前に出場を拒否したそうです。
結局レミーアが一人勝ちして、旅の資金にしたんだとか。
2013/01/29地の文を加筆