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本編内資料②  「始祖について」

新書 「始祖について」より抜粋


 始祖。それは始まりの存在。

 宙の始祖、時の始祖、世の始祖、虚の始祖など、さまざまな種類の始祖がいる。

 始祖はそれぞれの名に付いたものを創造したことになるのだ。

 例えば、宙の始祖ならば空間という存在と意味を創り出したことになり、それを支配し操ることが可能になる。

 

 存在と意味は最も初めに創られたものの一つである。存在は意味を持ち、意味という存在がある。存在と意味はすべてを内包するものと言って良いだろう。

 価値、内容、情報、概念、事象、表現。これらの他にもさまざま存在するが、結局のことろこういったものは存在と意味に含まれる。

 これを初めに扱って使用し、操ることができるのが言葉だ。


 始祖は言葉により創造を行う。言葉を介して、創造は行われるのである。

 言葉は『神』であった。

 

 一つの存在と意味を生み出す始祖たちだが、その始祖を創りし始祖、そして、存在と意味を創り出した始祖が存在する。

 それが、数多の異名を持つ闇の始祖である。全てなる根源、万物を創りし創造主、存在しながら存在しない者/始祖。意味を持ちながらも持たぬ者/始祖、始祖なる始祖。

 異名を言い出したらキリがないのが、闇の始祖だ。それほどまでに、偉大なのである。


 その闇の始祖ともう一人の始祖、光の始祖の話をしよう。

 闇の始祖と光の始祖は対となる者同士で、同じく存在かつは不存在、意味にして不意味という矛盾を孕んだ者たちだ。

 この者たちこそが、創世(そうせい)を行った張本人であり、正しく原初である。

 始まりが生まれる前からこの者たちはおり、またいない。本来なら、存在だとかいるだとかあるだとかを言うのは間違いであるが、複雑になるのでわざとそういった表現をしようと思う。


 さて、そんな者たちが始まりを生んだ。存在と意味の創造だ。言葉によって存在と意味を創り出し、同時に創造という存在と意味が創られた。言葉もまた、同時にこの際に創造された。

 ここから彼らは始祖を創り出し、あらゆるものを創造させた。しかし、本質的には彼らが創造したことになる。なせなら、創造は根源たる闇と光によって成り立つからだ。


 次からは、真なる創世の話をしよう。


 初めに、白が天を黒が地を創造された。


 地は茫漠として何もなく、闇が大水の面の上にあり、白の霊がその水の面を動いていた。


 白は優しく仰せられた。「光、あれ」すると光があった。


 白は光を良しと見られた。白と黒は光と闇を分けられた。


 白は光を昼と名づけ、黒は闇を夜と名づけられた。夕があり、朝があった。これが第一日。


 白は仰せられた。「大空よ、水の真っただ中にあれ。水と水の間を分けるものとなれ」


 白は大空を造り、大空の下にある水と大空の上にある水を分けられた。すると、そのようになった。


 白は大空を天と名づけられた。夕があり、朝があった。これが第二日。


 黒は仰せられた。「天の下の水は一つの所に集まれ。乾いた所が現れよ」すると、そのようになった。


 黒は乾いた所を地と名づけ、水の集まった所を海と名づけられた。黒はそれを良しと見られた。


 白は仰せられた。「地は植物を、種のできる草や種の入った実を結ぶ果樹を、種類ごとに地の上に芽生えさせよ」すると、そのようになった。


 地は植物を、すなわち、種のできる草を種類ごとに、また種の入った実を結ぶ木を種類ごとに生じさせた。白はそれを良しと見られた。


 夕があり、朝があった。これが第三日。


 白は仰せられた。「光る物が天の大空にあれ。昼と夜を分けよ。定められた時々のため、日と年のためのしるしとなれ。


 また天の大空で光る物となり、地の上を照らすようになれ」すると、そのようになった。


 白は二つの大きな光る物を造られた。大きいほうの光る物には昼を治めさせ、小さいほうの光る物には夜を治めさせた。また星も造られた。


 白はそれらを天の大空に置き、地の上を照らさせ、


 また昼と夜を治めさせ、光と闇を分けるようにされた。白はそれを良しと見られた。


 夕があり、朝があった。これが第四日。


 白は仰せられた。「水には生き物が群がれ。鳥は地の上、天の大空を飛べ」


 白は、海の巨獣と、水に群がりうごめくすべての生き物を種類ごとに、また翼のあるすべての鳥を種類ごとに創造された。白はそれを良しと見られた。


白はそれらを祝福して、「生めよ。増えよ。海の水に満ちよ。鳥は地の上に増えよ」と仰せられた。


 夕があり、朝があった。これが第五日。


 白は仰せられた。「地は生き物を種類ごとに、家畜や、這うもの、地の獣を種類ごとに生じよ」すると、そのようになった。


 白は、地の獣を種類ごとに、家畜を種類ごとに、地面を這うすべてのものを種類ごとに造られた。白はそれを良しと見られた。


 黒と白は仰せられた。「さあ、人を我々の形として、我々の似姿に造ろう。こうして彼らが、海の魚、空の鳥、家畜、地のすべてのもの、地の上を這うすべてのものを支配するようにしよう」


 白と黒は人をご自身のかたちとして創造された。神の形として人を創造し、男と女に彼らを創造された。


 白と黒は彼らを祝福された。白と黒は彼らに仰せられた。「生めよ。増えよ。地に満ちよ。地を従えよ。海の魚、空の鳥、地の上を這うすべての生き物を支配せよ」


 白と黒は仰せられた。「見よ。我々は、地の全面にある、種のできるすべての草と種の入った実のあるすべての木を、今あなたがたに与える。あなたがたにとってそれは食物となる。


 また、生きる生命(いのち)のある、地のすべての獣、空のすべての鳥、地の上を這うすべてのもののために、すべての緑の草を食物として与える」すると、そのようになった。


 白と黒はご自分が造ったすべてのものを見られた。見よ、それは非常に良かった。夕があり、朝があった。これが第六日。


 こうして天と地とその万象が完成した。


 白と黒は第七日になさっていた御業(みわざ)を完成し、第七日になさっていたすべての御業をやめられた。


 白と黒──神は第七日を祝福し、この日を聖なるものとされた。その日に神が、なさっていたすべての創造の御業をやめられたからである。


 これぞ、創世記である。


著者 使徒モーセ

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