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ある魔法使いの物語  作者: 座れない切り株
〜星見のレトロセデール〜
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29頁 魔法使いはハウリアンを知る

 街中でばったりエステラとルナと会うブルハ。何やら用があると宿屋へと誘われ、ご褒美をあげる、と突然言われる。何が何やらわからぬままその褒美を受け、何が何やら分からぬままどこかへと連れ出される。そしてその最後に告げられた一言に、ブルハは絶句してしまう。



 ――――――――


 「星が……死んでる……?」


 あまりにも荒唐無稽で稚拙な嘘にすぎないが、エステラはそんな事をする人じゃないと分かっていた。だからこそ、すんなりと言葉が入ってきてしまう。けれど受け入れる事はできず、私は不意に空を見上げた。そこには変わらず星が輝いていた。


 「エステラ、それは今関係ないことでしょ?また混乱させちゃうじゃないか」


 「……そうだったな。今では無いものな」


 「だめだよ?それも」


 エステラ達と会ってから今日まで、いろいろな不思議な事があったがコレは私の理解を遥かに超えていた。


 「あなた達、本当は何者なんですか……」


 「まぁまぁ、とりあえず部屋に戻ろうよ。ほら、みんな集まって」


 ルナはいつになく朗らかな顔をしていた。どう考えても何かを隠している、とても分かりやすい顔だった。私はとりあえずルナに従い、エステラの手に触れる。最初と同じように眩い光に包まれると、気づけば元にいた部屋に戻っていた。

 

 「さて、ご褒美も終わったし、今日はもう解散かな。気をつけて帰ってね、二人とも」


 「待って下さい! 星が死んでいるとはどう言うことなんですか?それにあなた達は何者なんですか」


 バツが悪そうに目を閉じ、ルナは沈黙する。


 「……はぁ、エステラのバカが余計な事を言っちゃったからな……」


 「ああ、吾が悪いな。であればバカの吾が話してやる」


 「いいから。エステラはどっかで反省でもしてて」

 

 不満さを漏らし、顔に浮かべながらもエステラは言われた通りベッドの方へはけていく。


 「とりあえず座ろう? みんな」


 ほら、と促され椅子を引き座る。ただ一人ルナは私達の側面に立ち、私の正面の椅子は誰も座らず空いていた。向かい側に座るティエラもまた、なにやら少し複雑そうな顔をしていた。


 「そうだね……とりあえず星の話かな。エステラがあんな事を言った手前、解ってもらえるか分からないけど、星は死んではいない。君達が見る夜空に星が輝いて見える以上、それは存在する事になる。だからさっきの巡礼だって、ブルハの言っていた占いだって意味のあるものだよ」


 「それは嘘偽りのない事ですか?」


 「ああ。嘘はないと断言できる」


 正直、ルナとはまだ関係が浅い。ある程度の人となりもよく分かっていない。それでもエステラと一緒にいるような人、つまらない誤魔化しはしないはず。だからこそ……

 

 「見上げ、この目で見る事が、星の存在の生きている事を証明するなら、あなた達はどうして星が死んでいることを解ったんですか? 魔法使いが星々に疑問を抱く事があったとしても、死、なんて考えは出てこないんじゃないですか?」


 「それは……どうしてだろうね? でも別にそれを知っているからって何? ブルハは僕達がなんだって言いたいんだい?」


 「それが分からないんですよ……全部全部わからないんですよ……」


 目を伏せてそう言うしかなかった。不思議な事はたくさんあるのに、わからない。わかる事があっても全てのピースが噛み合わず、答えに辿り着けない。


 「二人はどうかな? 何か聞きたいことでも、わかったことでもあるかい?」


 「ルナさんはあたしに拘束魔法を教えてくれました。でもあれは家族の誰からも聞いたことなんてありませんでした。それに……攻撃魔法しか使えないはずなのに補助魔法を使う事ができました……。ルナさんはそれを、ザーレの血が流れているからだと言いました」

 

 熱を帯び語るシスタンは、床を鳴らし立ち上がる。


 「あなたはザーレを、レンティスをどこまで…レンティスの何を知っているんですか……?」


 「……二人に覚えていて欲しい事がある。僕とエステラはあくまで君たちと同じ魔法使いだ。それ以外でも、魔物でもない。それだけは覚えて、理解して欲しい。どうかな?」


 私とシスタンは見つめ合いながら互いに考える。言葉の意味は詭弁ではないと分かる。しかし、何を意味する言葉なのかはわからない。でも……嘘じゃない。


 「理解はできないです。でも、私達と同じ魔法使いというその言葉を私は信じます」


 「ブルハ先生がいいなら、あたしもそれで構わないです」


 「ありがとう二人とも。ティエラも分かってくれる?」


 「もちろんです。我輩はエステラ様とルナ姉ちゃんをずっと信じてるから」


 「ありがとね、ティエラ。それじゃ全部話そう……って言ってあげたいんだけど、話せる事が一つもないんだよね」


 あははは、と笑いながら頭を掻くルナの姿に軽く腹が立つ。唯一分かることは、ルナとエステラの二人は魔法使いではあるが、その領分を超えた何か。憶測ではあるが、たぶんそうだろう。


 「だけど、知りたい何かが君らにあるなら、そうだな……ハウリアン……うん、ハウリアンの森を探してみるといい。魔法の起源だとか、なんだとか、おおよそ知りたい物を知れるはず」


 「待って……待って下さい……また新しい情報なんですか?頭ぶっ壊すつもりですか?」


 「違うよ、違う! ただ君たちの助けになればって……ちょっと待ってて!」


 慌ただしくルナはエステラの方にドタバタと走っていく。それにしても、『ハウリアン』全くもって聞いたことない地名だ。そもそも魔法の起源が知れる場所があるなら、なぜ見つかっていないのか。せめてもの救いは、ハウリアンという地名を覚えていれば良いというコスパの良さ。


 「シスタンはハウリアンという地名について、何か知っていることはありませんか?」


 「いえ、あたしも全く聞いた事がありません。ルナさんの言った、起源が知れるとはどういう事なんでしょうか」


 そう、それも問題だ。ある意味、どうやって?の手段はある程度絞る事ができる。識る事ならさっきのように過去を覗き見る事でいいから。それをどうやるか、それがわからない事にはどうしようもないのだが。


 「ティエラ、あなたはハウリアンについて何か知っていますか?」


 「ううん、我輩も初めて聞いたこと。ごめんだけど力になれない」


 「ティエラでも知らない事なんですね……ありがとうございます」


 ティエラとの会話の最中、なかなか目を見てくれなかった。若干だが、今朝会った時から少し様子が変に感じる。そう言えば今日ティエラの会ったのって――


 「お待たせー!……ねぇほら、早く言って」


 「……ハウリアンの森を探すが良い。あそこは(なれ)らにとって重要な場所である。仔細を言えばつまらぬ物になる故言わないが、吾からも行く事を勧める。……そして我が極光よ、そこな阿呆は

 (ちょっと?エステラ??)

過去の全てを知っている。さきの過去の出来事もそれを可能にした魔法も

 (エステラ!?言い過ぎだよちょっと!!)

……全ては此奴のせいであり、お陰だ。訊くべき事があるのなら訊いておけ、吾が許す」


 「はあ……もう……」


 その言葉を聞いた瞬間、脳裏に浮かんだものがあった。気づけば私は考えるのを後にして、椅子から立ち上がり部屋を飛び出した。過去の全てを知っている。その言葉は定かではないし、そんなことはあり得ないと思っている。けどそんな事があり得るなら、私は私の中の重要な何かが解け、私自身の初めての成長を迎える事ができるかもしれない。そう思うと、ワクワクして足が止まらなかった。


 「あっ……いで……」


 脚がもつれ、ズザーと地面に倒れ込んだ。痛い普通に痛いが、今はそれどころじゃない。ダサめに転んだ私だったが、すぐさま走り出し、目的の宿屋まで辿り着いた。迷惑にならないように、かつ早く部屋前を駆け抜け借り部屋に入る。どこかにおいたカバンを探し、ある一冊の分厚く青い本を見つける。そのまま本を開き中身を確認し、腕にしっかり抱えてまた走り出す。この本に書かれた内容がわかるなら、確実に私は成長する。そんな思いを抱き、ルナ達のいる部屋へ向かった。

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