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ある魔法使いの物語  作者: 座れない切り株
〜音楽の国 ティトゥーラ〜
16/35

14頁 魔法使いとミュージカル 1/2幕

ミュージカルっぽいなにかを見ている?読んでいる感覚で読み進めてもらえると嬉しいです。

 ブルハ達はようやくティトゥーラに辿り着くことが出来た。そんなブルハを待っていたのは、歓迎の調べではなく、ブルハを探しに来ていた姉だった。その後色々あり姉の泊まっていた宿で休むことになった。


 

 「先生!次はあそこ行ってみましょう!」


 ティトゥーラに着いた翌日の事。今日はとりあえず、ぶらぶらして国内を見て回ろうとシスタンと決めていたので、街中に繰り出している。街中にある建物は、プリンシオと変わらないレストランや、魔道具店が立ち並んでいるが、見たことのない建物も建っていた。


 シスタンに連れられるままに街中を歩いていると、少し着飾った人に声を掛けられる。


 「君達!お暇があるなら、僕達のミュージカルを見に来てよ!」


 着飾った女の人は見たことのない建物を指差し、じゃあ見に来てね!というと足早に去って、別の人にも話しかけていた。シスタンと少し話し、せっかくなので見に行ってみようということになり、私達は指差された建物に向かった。


 建物の中に入ると、大きなホールがあり、案内されるまま扉を開くと、そこは広い客席があり、客席の先にはミュージカルの舞台があるのか、赤い幕が垂れ下がっているいる。客席はそれ程埋まってはいなく、どの席でも座り放題だ。適当な席に座り開演を待っていると、段々と人が集まってき、席も埋まっていく。


 「もうすぐ始まりますかね、先生」


 隣にいるシスタンが小さな声で私に囁きかけるとほぼ同タイミングで、赤い幕の裏側から先程聞いた声が聞こえてくる。そして客席からは拍手と歓声が巻き起こる。


 「長らくお待たせ致しました!これより我らが楽団によるミュージカルの幕が上がります!どうぞ皆様ぜひお楽しみください!」


 赤い幕はその声と共にゆっくりと上がっていく。暗く広い舞台上には、数人の演者が立っており、魔法で増幅されたナレーションの声と共に舞台は明るくなっていき、私はミュージカルの世界に飲み込まれていく。



――第一大戦が終結し、安息の世界が戻ってきた頃、彼女は生まれた。特別な生まれでもなかった彼女だけれども、両親の教育はとても厳しかった。


 「はぁ、はぁ、もう限界です、父さん………」


 「早く立つんだヴィエラ、いつ戦いが起こるか分からないんだぞ」


 少女ヴィエラがその場で何度も崩れようが、何度も何度も立ち上がるように声をかけて魔法の修練を続けさせる。ヴィエラも父親の言葉に何度も立ち向かうように立ち上がるが、進捗は何も得られないまま、また同じように崩れる。


 「………少し休憩だ」


 「何度やっても、魔法の一つ憶えられない………ごめんなさい父さん………」


 ヴィエラは崩れ落ちた体勢から、何かが切れるかのように体全体でその場に倒れ込んでしまう。


 「ヴィエラ!?ヴィエラ大丈夫か!?」


その後、修練の続きをするために戻ってきた父親に、倒れたヴィエラは見つかり、部屋に運ばれベッドの上でゆっくりと休む。


 チュンチュンと小鳥がなく声にヴィエラの意識は、撫でられるように優しく目覚める。ベッドから起き上がったヴィエラはゆっくりと体を伸ばし、簡単な朝の体操をする。


 「んー今日はお休みだし、またあそこに行こう!」


 走り出したヴィエラは、部屋を飛び出し着替えた格好で両親に挨拶した後、家の扉を開け、また飛び出していく。


 そんなヴィエラが辿り着いたのは、集落の一番近くにある森だった。いつものように大樹に体を預け座る。


 「やっぱりいいですね、あなた達の音は」


 ヴィエラは大樹の囁きや小鳥の囁きを聴き、日々の修練の疲れを癒してきた。その囁きの意味を理解することは出来ないが、その音がとても心地よさそうな顔をしている。



 ミュージカルの世界に完全に飲まれていた私は、ヴィエラ役のあの女の人が突然歌い出し、自らが観客であったことを再認識した。ミュージカルというのもこれが初めての体験だったので、吸い込まれるような演技に、世界観。私は今すごく驚いているのと同時に急に歌い出したのにも驚いている。綺麗な声だし、先程の場面にあった厳しい修練の雰囲気とは逆に、大樹や小鳥の声に合わせるような楽しそうな雰囲気の曲調だ。まぁ舞台の上に本物の大樹や小鳥は居る訳ではなく、幻影系統の魔法で演出されているだけなのだが。

そして歌が終わり、また飲み込まれていく。



 「な、何この音」


 緩やかな風になびいて聞き心地の良い音で囁いていた大樹は、突風に吹かれ枝葉が激しく擦れ合うような強い音で泣いている。小鳥は囁きは、仲間に外敵が来たことを知らせるような大きな鳴き声に変わり、ヴィエラの耳にも地を踏み草木を掻き分けて何かがこちらにやってくるような音を感じる。


 「あれって、父さん達が言ってた異形の生物………」


 草木を掻き分けヴィエラの前に現れたのは、野生の獣の体躯より一回り大きい歪な生物だった。暗がりから現れたその生物は、ヴィエラを目玉でとらえたまま、ゆっくりと近付いて来る。


 「た、戦う?む、むり!逃げなきゃ!」

 

 ヴィエラは脚をがくがくさせながらも異形の生物からとにかく逃げる。だが、ヴィエラは冷静さを失っていたのか、帰るべき方向ではないどこかに向かってひたすら逃げていた。


 「誰か!たすけて!」


 ヴィエラは必死に逃げながらも叫ぶ。その叫びに共鳴するかのように大樹はさざめき、小鳥は鳴く。


 「えっ、こっち?………あなたは誰?」


 必死で逃げるヴィエラに何かが語りかける。なんだか分からないままヴィエラはその声の言う通りに逃げ続けていると、向かいから人影が見えてくる。謎の声に押し出されるように、最後の力を振り絞りその人影の方に走り出していく。  


 「こっちだヴィエラ!」


 何故か戦闘用の装備を身にまとっていた父親の元に逃げ、父親に助けられる。父親の放った魔法により、異形の生物は跡形もなく消えたが、大樹の方からは、微かに何かの声が聞こえる。


 「さっきのは、一体………」


 「よく無事だったな!ヴィエラ!」


 放心状態のヴィエラを抱きしめ、父親は涙を流している。ヴィエラはその時初めて父親のそんな顔を見た。ヴィエラにとって父親は、厳格であり優しくはあったものの、涙を流すようなところは見た事がなかった。ヴィエラは自分の行動で父親を泣かせてしまった事を後悔したかのような表情をしている。


 「ごめんなさい、父さん。でもどうしてここに?」


 「お前の助けを呼ぶ声が聞こえてきたんだ。だから父さん達はお前を探して、この森まで来たんだ」


 父親の腕の中から離れたヴィエラの表情は、怪訝そうな顔をしてその場で考え込む。


 『私の声が集落に人の耳に届いた?いや、それはあり得ない話だ………だったらどうして』

 

 ヴィエラは確かに助けを求め声を出していたが、いくら声が大きかろうと、正確に声が届く距離間ではなかった。集落に一番近い森なだけで、近いわけではなかったのだ。


 「聞いてるか?ヴィエラ」


 「え、す、すいません、なんですか父さん」


 離れた父親の手は、再びヴィエラの肩を掴み、真剣な面持ちで話を続ける。


 「最初に謝らせてほしい。父さんがお前に厳しくしていたのは、戦いで死んで欲しくなかったからだ。父さん達は多くの死を経験してきた。だからヴィエラには、あいつらに対抗する力を持っていて欲しかった」


 ヴィエラもただ強く、そして厳しくされている訳ではないと知っていたが、その真意を歪な生物と出会うまでは知らなかった。そして同時に知ってしまうのは、歪な生物に対抗する手段がない自らの非力さ。


 「けどヴィエラ、お前には何か特別な力があると、父さんは思う」


 特別な力。ヴィエラは以前の修練を思い返してみるも、そんな記憶は見当たらない。ただ、気掛かりな事は一つだけあった。


 「私の、声ですか?」


 「そうだヴィエラ!父さん達にも理由は分からないが、お前の声は集落全体に聞こえていたらしい」


 「そう、ですか………」


 納得のいっていなさそうな顔をしながら、ヴィエラは相槌を打つ。それがもし特別な力だとして、歪な生物に対する手段になるのだろうか。ヴィエラは結局、自らが非力なことに落胆しつつ、父親に手を引かれ集落に戻る。



――ヴィエラが初めて魔物と出会ってから少しの時間が経過した。そして、ヴィエラが12歳になった年、自らの持つ魔法の才能を知り、集落の中でも指折りの魔法使いへと、成長していく。


 「ほら、こっちこっちー」


 休日のヴィエラは、集落の友達とボールを投げ合い、避け合うような遊びをしていた。ボールを投げる子が逃げる子を追い、そのボールに当たった子が投げる側になる、シンプルな追いかけっこのような遊びだ。


 「ヴィエラちゃん、ズルしてない?」


 ヴィエラは、眼がいいのか、全くボールに当たることなく逃げ続けている。余裕を感じされるような喋り方で、追ってくる子を煽ったりもする。


 「ほらほら、もっと早く投げてみてよ!」


 ヴィエラを追って来ている子は、そんな挑発に乗るようにステップを踏み、勢いをつけて投げる。


  ヒュン………ガシャーン………


 勢い良く投げられたボールは、ヴィエラの眼にも留まらない速さで耳元を通過し、後ろの家の壁にめり込んでいく。ヴィエラに向かってボールを投げた子は、呻きながら肩を抑えている。


 「――だ、大丈夫!?」


 ヴィエラや他の友達は急いで、その子に駆け寄る。その中の一人の友達は、大人を呼ぶ為に走り出し、もう一人の友達は治療魔法が使える魔法使いを呼びに走り出す。残ったのは、怪我をした友達とヴィエラの二人だけ。


 「ごめんね、ヴィエラちゃん」


 「何があったの?」


 「分かんない、けど……体の中から……誰かに腕を動かされたような……感じがあって………」


――ヴィエラ自身にも分からないそんな奇妙な出来事は、数日と経たず再び起こる。


――それは、ある友人との会話の時


 「大丈夫だって!あの時の事はいいって!ほら!笑って!」


――前に遊んでいた友達がヴィエラに謝りに来た時、ヴィエラが何気なく『笑って』と言えば、その友達は数十分にわたり表情が笑顔に固定されたかのようになり


――それは、また懲りずに追いかけっこをしていた時


 「ほらほら、もっと速く走らないと追いつけないよ!」


――怪我をし、笑顔が固定されていた友達は、ヴィエラに『速く』という言葉を投げかけられた後、ヴィエラを抜き去り向かいの壁にのめり込んだ


――その後も、何度か同じような事が起こり、ヴィエラは次第に集落の人々から爪弾きにされてしまう。


 「私が悪いんだ、魔法もろくに憶えることもできない。自分の声すら…もう嫌いになってしまいそう」



 またまた、ヴィエラを演じている人が歌い出し、私は客席に引き戻される。別に歌唱が世界観や、このミュージカル?に合っていないなんて言うわけではないが、演じる世界に浸っていたら急に歌い出すというのは慣れていない。けれども、この歌唱には意味があるのだろう。幻想魔法が作り出す舞台、そして演じるヴィエラの心境、言葉や少ない動きだけでは表せない丁寧で深い表現。

今回の歌唱は、深く暗い舞台の中で、今にも消えそうな光魔法がヴィエラ役の人を照らし、悲しげな音色の上でヴィエラ役の人は歌い、踊っている。

………歌唱は終わり、世界に飲み込まれていく。



 「<コンコン>ヴィエラ、居る?」


 ヴィエラは無言のまま、自室の扉を開ける。そこに立っているのは、ヴィエラの言葉で、色々な傷を負った友達だった。


 「………部屋の中、暗くない?明かりつけてもいい?」


 ヴィエラは無言のまま、頷く。友達が指の先に灯した光魔法を炉に移す。パーっと広がる光は荒れたヴィエラの部屋を端から端まで照らしていく。


 「思っていたよりも、重症なんだね………」


 友達は明るくなった部屋を一通り眺め、床に崩れたヴィエラの前に立ち、瞳を見つめる。そしておもむろに抱きしめる。


 「大丈夫、大丈夫だよヴィエラ………ヴィエラは自分の特別な力に戸惑っているって、あれから誰とも喋っていないって、お父さんから聞いたよ………もう自分の中に眠る力の事も理解しているんだよね」


 『していないしていない、こんな誰かを傷つける力なんて理解も、気づいてもいない』


 「でも大丈夫。力を理解していても、その力を御せないなら、私がいくらでもヴィエラの為に力になってあげる!」


 抱き寄せられたヴィエラの眼には、光が戻り雫がこぼれ始める。そんな優しい言葉をかけられても、まだ声は出せないでいるが、ヴィエラの気持ちは友達にはちゃんと届く。


 「ふっ、あはははっ!鼻をすする音で返事しないでよーもう」


 ヴィエラの友達を抱きしめる力は強くなり、鼻をすする音や涙を一向に止まる気配がない。そんな荒れた部屋で抱き合う二人の間にドタドタと音を鳴らし、誰かが近づく。


 「うおおおお、俺達も、お前の力に、なって、う、うおおおおお」


 「大丈夫ですよヴィエラ。私達も力になりますから」


 ヴィエラと友達の間に入ってきたのは、泣きじゃくってどうしようもない父親と、冷静ながらも温かみのある母親だ。


 『逃げない逃げない!こんな力でも、助けてくれるみんなの期待に応えたい』


 この日はまだ声を出せなかったヴィエラだが、目いっぱいの感謝を友達に伝え帰りを見送り、両親にも感謝を伝えるように抱き合った。そしてヴィエラは荒れた部屋を片付け、今日を終わらせた。

 

――ヴィエラは両親や友達の力を借り、魔法の修練において、自らの魔法は何なのか探求し、自らの理解を深め、成長していく。


 「ヴィエラ、心の中で魔法を完璧に使う姿をイメージするんだ」


 「いいですか、ヴィエラ。思い通りいかないあなたの魔法を制御している姿をイメージするのです」


 ヴィエラは、必死に両親の言う通りに心の中で、誰かに向かって言葉を投げかけ、相手が暴走しないイメージをただひたすらに、思い描いていく。目を閉じ集中するヴィエラの額からは滝のように汗が流れる。両親はそんなヴィエラを心配した顔で見つめる。


 『これだ。この形だ。この形でいい筈だ。次は』


 ヴィエラは閉じていた眼を開け、いきなり立ち上がると、家の扉を開け勢いよく飛び出す。目指す先はただ一つ。集落の人々がどんな目でヴィエラを見ようと、もう決意は揺らがない。


 「腕が痛くない……成功だよ!ヴィエラ!」


 「ほんと……?」


 ヴィエラは走ってくる友達をそのまま受け入れ、草原に倒れる。ヴィエラは達成感と共に安心の涙を流す。ヴィエラはようやく自らの魔法の形と使い方を知った。


 「ありがとう、フレル」


 「大丈夫、大丈夫!だいぶ時間はかかったけど、私も高位の治療魔法を憶えれたし」


――ヴィエラはようやく自分の中に秘められた力を理解し、魔法使いとしてのスタートラインに立った。そんなヴィエラに乗り越えるべき障害がやってくる。


 「いいかヴィエラ。今日は外に出るんじゃないぞ」


 また再び歪な生物が集落に襲来してきた。父親は当然、集落を守るために歪な生物に立ち向かう。けど、ヴィエラはもう指をくわえて護られるだけの存在ではなくなっていた。それにヴィエラにとって貴重な実践訓練が目の前に転がっている。


 「私も戦いに加えてください、父さん!」


 父親は悩みに悩む。これまでの自分の言動や、ヴィエラの意欲に満ちた顔がまた父親を悩ませる。


 「分かった。ただし!お前の魔法は戦闘向きではないのだから、後方に必ずいる事だ。分かったな!」


 「はい!ありがとうございます、父さん」


 ヴィエラは父親と共に集落の外に出て待ち構える。当然そこには集落を守る他の魔法使いもいる。ヴィエラにとってこれが初めての戦闘となるが不思議と、緊張は全くしていなかった。


 『フレルや父さん達と鍛えたこの力。必ず役に立てて見せる』


 「奴らが見えてきたぞ!お前達!気合い入れろよ!」


 「おおおおおおおおおおお!!」


 「お、おお!」


 喝を入れる魔法使いに呼応するように、並んで戦う魔法使い達は雄たけびを上げ、ヴィエラも負けじと声を張る。歪な生物との戦闘はたった今始まった。


 「援助します」


 ヴィエラは前線で戦っている魔法使いの後ろにいる補助魔法使いの横に並ぶ。


 「君は確か……あの……」


 ヴィエラは静かに意識を集中させ、フレルとの修練を思い出し、呼吸を整える。流石に初めての実戦では、ヴィエラの顔にも苦悶の表情が浮かぶ。


 「強めに行きますよ!皆さんもっと力を出してください!」


 ヴィエラのその声は、近くにいる魔法使いに影響を与える。例え抽象的な言葉だとしても、ヴィエラの魔法は十二分に効果を発揮する。


 「こ、これは、力がどこからか湧いてくるような」


 「後ろにいる見ない顔の魔法使い!何をした」


 前線で戦う魔法使い、そして補助魔法使いも、ヴィエラの言葉によって何かしらの力が湧いてるのか、体の輪郭からモヤのようなものが出ているように一瞬ヴィエラの眼に映ったが、見間違いなのか瞬きすると消えてしまう。


 『流石に見間違いですよね』


 「そんなことより、今は戦いに集中してください!」


 ヴィエラは捨て台詞のように言葉を吐き、目の前の魔法使いのグループから離れ、違う魔法使いのグループの元へ行く。


 「君は……なぜここにいる」


 「急に現れて不躾ですが、皆さん、もっと力を出してください!」


 ヴィエラは一度完璧に魔法を使える事が出来たからか、二度目は息をするかのように自然に魔法を使うことが出来た。そんな風に魔法使いのグループを巡り、魔法を使っていく。


 戦いは終わり、ヴィエラは父親の元に駆け寄る。


 「よくやった、ヴィエラ。さぁ帰ろう」


 「少しだけ寄りたい所があるので、先に帰っていてもらえますか?」


 「そうか、わかった」


 ヴィエラは父親と別れ、いつものあの場所に向かう。


 「あなた達も無事でよかったです」


 ヴィエラは、いつも心の支えになっていた森の中の大樹と小鳥たちに語りかける。


 「今日はとても短いですが、また今度ゆっくりし挨拶しに来ますね」


 ヴィエラは、急ぎ足で集落に戻る。


 「――えっと、皆さんどうされました?」


 集落に戻ったヴィエラを待っていたのは、一緒に戦っていた魔法使い達がヴィエラを待っていたかのように並んでいる光景。


 「お前がヴィエラだな」


 「そうですが、何か用があるんですか?」


 並んでいる魔法使いは、父親も含めて皆がヴィエラを見つめる。その後ろでは、見物客のように集落の人々が群がっている。


 「今回の戦いでは、とても助かった。お前のおかげで怪我人も死傷者も出なかった」


 「本当に助かったぞ!あんたの魔法のおかげで、調子がめちゃくちゃよかったぜ!」


 「皆さんのお役に立てたようで、何よりです」


 ヴィエラかそれほど嬉しそうな表情をしない。集落の魔法使いや、集落の人々は今までの態度が嘘かのように、ヴィエラを褒め称えているが、ヴィエラの表情は変わらない。


 『私自身が出来たことは、ただ他人の持つ力を底上げしただけだ。まだ足りない、まだ私の力で出来る事が絶対あるはずだ』


――こうしてヴィエラは自らの魔法の使い方を知り、見事初めての戦場で力を見せつけたが、ヴィエラはまだ満足しない。その満ち足りない心はさらなる成長を求めた結果、ヴィエラは二度目の災厄において人々を導き、歴史に名を刻む英傑となる。



 「これより20分の休憩となります!今の時間にトイレなどを済ませておいてください!」


 幕が一時的に降り、観客席からは声が上がっていく。それは隣にいるシスタンも例外ではない。


 「先生!あのヴィエラを演じている方って、最初に会った方ですよね!とても上手ですよね」


 私もそう思う。演技に引き込まれるというか、本当にそこにヴィエラがいて、その時代の事を見ているかのような。音楽的なことは分からない私でも、演技に引き込まれるのがから相当なそうとう実力のある演者なのだろう。

と、流石に座りっぱなしでお尻が痛い。


 「少し外で休憩しませんか?シスタン」


 「大丈夫です!」


 ミュージカルに興奮しているのか、誘いを断り、席に座ったまま先程のミュージカルの内容をぶつぶつと呟いてる。まぁ、強制はしないが後悔する羽目になっても、私は関係ない。


 ホールに出てトイレを済ませた私は、少しだけ外に出ようと客席の扉と逆に向かうと、誰かに声をかけられる。


 「ブルハ君、少しだけ話さない?」


 私の声をかけてきたのは、ミュージカルに誘った女の人。つまりヴィエラ役の女の人だった。

2/2幕は多分すぐ上がると思います。多分。

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