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「緊急事態発生。直ちに避難するように。緊急事態発生。直ちに避難するように」

 学園に戻ろうとした晴衣はサイレンを聞いてすぐさま情報収集を始める。

「ふむり・・・敵が多い・・・でも、なんで?なんでこんなに敵多いの?誰が狙いなんだろ・・・」

 悩んだ末に戦うことを決意した晴衣だったが、この後、絶望が自分の目に映ることをまだ知らないのであった。


 襲撃グループは中等部の校舎を徹底的に壊そうとしていた。

「学園に人いないっすよ。リーダー」

 襲撃グループの部下がリーダーに指示を仰ぐ。

「それは無いはずだ。あの人がちゃんと準備してくれたはずだ。とりあえず、お前たちは1階辺りを捜索していろ。俺は、上の階を見に行く」

「承知しました」

 部下が1階を捜索する用に指示を出し、2階に上がろうとした時、リーダーはどこからやってきたかわからない攻撃を受ける。

「右腕を壊す威力・・・とても欲しい存在だな。でも、能力を使えば、無傷になるんですよね」

 リーダーが悠々と2階に上がる。攻撃を飛ばしたのは3階にいた晴衣ではあったが、すぐに次の行動に移してた。

「飛び降りるしかない・・・!」

 窓を開けて、飛び降りた晴衣。

 しかし、ここからが地獄絵図だった。

 生徒の多くが気を失っている。中には血が流れている生徒もいた。

 その場で立ちすくんでいると、友希がやってきた。

「晴衣・・・」

「友希先輩・・・」

 顔色が悪いことを知った友希はすかさず尋ねる。

「大丈夫?」

「私は大丈夫ですよ。それより、友希先輩はなぜ中等部に?」

 晴衣の質問に友希は静かに呟いた。

「サイレン鳴った時に嫌な予感がしたのと、後輩が巻き込まれて欲しくなかったから急いで来たんだ・・・さあ、1階の敵を全て倒して。私は2階の捜索をする」

 友希が駆け出す姿を見た晴衣は1呼吸おいて1階の敵を倒し始める。

 友希が2階へ駆け上がる。

「そこまでよ」

 友希が来ることを待ち望んでたかのように両手を広げるリーダー。

「おっと?誰かと思えば、実験施設で唯一水鏡学園に入った実験体じゃあないですか。さあこちらへおいで」

 リーダーが手を差し出す。

「私は・・・あなたを倒す」

「実験体が、我々に逆らうだと・・・?」

 リーダーが驚く。

「確かにあなたたちが襲えるように準備はした。でも、私は序列一位だから。もう実験体じゃない!」

 リーダーの腕を目掛けて斬りつける。

「っぁ・・・!実験体はぁ、いつまでも実験体なんですよぉ!この機械で大人しくしろ!」

「その機械は・・・っ!でも、効かないよ!」

 友希が走り出し、リーダーを刺そうとする。

 しかし、リーダーは笑いながら機械のスイッチを押した瞬間、友希は固まってゆっくりと倒れた。

「だからぁ言ったじゃないですかぁ。実験体は実験体なんですよ。あなたたちに埋め込んだチップを強制的に停止させれば、動かなくなりますから。さあ、探しましょうかね。この子を抱き抱えるのは少々気にくわないですが、この子も回収しろとの命令でしたし。さて、本来の目的を成し遂げましょうか」


 リーダーが1階へ降りると、部下を全滅させていた晴衣と出会った。

「素晴らしい。あれほどいた部下を1人で倒すとは。いやはや素晴らしい」

 戦いに夢中で気づいていない様子の晴衣。

「少し面倒ですが、これも成功への近道です」と呟き、リーダーが歩きだす。

※今更だが、晴衣に種を植えたリーダーと今回のリーダーは違う人である。

「素晴らしい。さすが、昇級試験をトップでクリアする人の強さ」

「お前がこの学園を襲ったのか」

 晴衣の静かな呟きにリーダーはずっとつけていた黒いフードを脱ぐ。

 顔の右半分はやけどで酷い顔をしていた。だが、目には狂気が宿っていた。なんなら、服は黒いスーツで動きずらそうである。

 そんなリーダーは後ろを振り向きながら言った。

「あなたは気づいてない。この世界の真実を。それに、ここでぇ暴れたら、あなたの大事な先輩が傷つきますよぉ?」

「友希先輩・・・!」

 晴衣が駆け出そうとするところでリーダーは足を出して転ばす。

「周りの景色を見なさい」

 リーダーの一言で晴衣はずっと、意識に外に追いやってた景色を見た。

 同じ中等部の生徒が血を流している。大半はもう・・・

 それに、周りには罪のない人が晴衣の手によって殺されていた。

「あ・・・いや、いやあああああああ」

 恐怖のあまり、体がガクガク震える。

「あなたが強ければ、あなたに人としての知識があれば、今頃は中等部の生徒もここにいる部下も死なずに住んだはずでは?」

 リーダーの告げる言葉は精神的に追い込まれている晴衣からしたら、全て正しい言葉に聞こえていることだろう。

「そっか・・・私が悪いんだ」

 晴衣はパキッという音と共に自分の心が粉々に壊れていくことを察した。

 だが、晴衣は全てを諦めた人のように虚ろな目で言い続ける。

「もしも、私が強ければ、もしも、私が皆を救えるくらい力を持っていれば・・・失わないで済んだのかな・・・」

「さあ、今から言う術を唱えなさい」

 リーダーの告げた術を少しずつ、確実に唱えていく晴衣。その様子を止める奴は誰もいなかった。

「全てを・・・壊し、全てを・・・創り変える。全ての人々を・・・平等に・・・」

 晴衣は、察していた。自分の大切な、なにかを失うことを。最後に僅かに残っていた善人の考えを捨てる覚悟を決めた。

「全ての人々が過ごせる世界のために、私は、どんな手を使っても全てを塗り替える!」

 叫んだ瞬間 、晴衣の心は粉々に壊れた。代わりに芽生えたのは、救いようのないこの世界への憎悪だった。力を使いすぎてその場に倒れかけたところをリーダーに抱きしめられた。

「よくできました。さあ、行きましょう。我々の事務所に」

 晴衣と友希を連れてリーダーは消えていった。


 なん、なのこれ・・・

 これは炎夏が中等部の校舎を見た時に放った言葉である。

 「ひどいな・・・ところで、晴衣と連絡は?」と憐が炎夏に尋ねる。

 「無理。連絡が届かないところにいるって表記がでる。見た感じ、怪しい人物はいないみたいだけど・・・」と炎夏が言いかけた時、一枚の紙が床に落ちていた。

 差出人は晴衣だった。震えている文字でこう書いてあった。

「炎夏へ。しばらく学校を休む。事情は聞かないで欲しいな。お願いします」

 炎夏は読み終わって、泣き出した。

「晴衣さん・・・何があったの・・・早く、戻ってきて・・・」

 そう願うが、まさかの形で再会するのに1年かかることはまだ知らない。


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