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「失礼します・・・学園長に呼ばれて・・・」と扉を開けて少しだけ覗くと学園長の珠洲だけでなく、高等部の生徒がこっちを見ていた。

「来てくれてありがとう。晴衣。君の次の試合まで20分あるでしょ?その内5分だけ、私たちにくれないか?」

 珠洲が手招きする。

「5分だけですよ・・・」

 ため息混じりで特等席の中に入っていった。

「(コレが高等部・・・圧がすごい)」

 怯えながら座ると、晴衣の頭を撫で出す人。

 そう、彼女こそが・・・「怖がらせてしまってごめんなさいね。改めて自己紹介を。東雲友希。高等部序列一位です。怖がらなくて大丈夫ですよ。よろしくお願いします」

「同じく高等部序列二位の鈴白恋歌です。お近づきの印にポップコーンどうぞ」とこちらはポップコーンキットを手渡す。

「もぐもぐ・・・あっ、すまんかったな。序列三位の柚希蒼真だ。よろしく頼む」とバウムクーヘンを食べながら喋る蒼真。

「ふわぁ・・・序列四位、雫月葉瑠だよ・・・よろしくねー後輩」と眠そうにする葉瑠。

「学園長・・・なぜ私がここに呼ばれたのですか?」

「そうだな・・・君には、何が見える?」と珠洲が晴衣の瞳を見た。

「そうですね・・・この世界が薄暗いことでしょうか」

「そうか・・・よっぽど重症のようだな。恋歌。今日、午後の部が終わったら、晴衣をあの場所に連れて行ってくれ」

「あそこですか・・・でも立ち入り禁止では?」

 恋歌が首を傾げる。

「多分、彼女の症状を和らげるにはそこしかない・・・」と珠洲が言うが、晴衣は首を傾げた。

「学園長・・・私は、大丈夫ですよ?」

「いいや、ダメだ。休むべきだ」

 さすがの晴衣も珠洲には逆らえなく、引き下がった。

 そこからは色々お話をした。とても優しい人たちだなと思った。

「じゃあそろそろ時間だと思うし、行ってらっしゃい。期待してるよ」

 晴衣は駆け足で会場に向かった。

「恋歌。彼女をどう見る?」

「そうですね・・・多分、私と似た境遇だったのかなって思いますね」

 恋歌は自分の姿と晴衣の姿を重ねて見ていた。

「すみません。電話が来たので少し離席します」

 友希がお辞儀をして特等席を離れ、誰もいない個室に入り、鍵を閉める。そして、電話に出る。

「もしもしお父様。お久しぶりです。え?あの種を・・・はい・・・わかりました・・・。まあ学園は、退屈ですけど、楽しいですよ。でも、人体実験に彼女を使うのですか?しかし・・・。学園を襲うための下準備をすればいいのですね。わかりました」

 通話を切った後、友希は一呼吸おいて呟いた。

「お父様・・・私は・・・」


 気がつけば午後の部は終わりを迎えていた。

 炎夏は難なく勝ち星を上げ、5戦4勝1敗と好成績を収め、晴衣はほとんど能力を使わず、5戦5勝と全勝で初日を終えた。

「炎夏。お疲れ様」

「晴衣さんこそお疲れ様。この後、どうする?」

 炎夏が興味深そうに見る。

「別になんでもいいでしょ?私は疲れたから寝る」

「そっか。じゃあまた明日」

 炎夏と別れ、しばらくすると恋歌がやってきた。

「お待たせしました。ではご案内します」

 恋歌に連れていかれたのは、高等部の寮の山側にある聖域と呼ばれる場所だった。

「ここ、すごい場所ですよね?」

 恋歌が聖域の中にあるベンチに座るので晴衣も座る。

「そうだけど。まあ、その話は置いて。ねえ、あなたの過去、教えて欲しいな」

「私の、過去?」

「そ」

「そうですね」と言いかけて、晴衣は悲痛な顔で話を始める。

 全ての話を終えた時、晴衣は恋歌に抱かれていた。

「話せてえらいよ・・・辛かったね。少しでも、和らぐといいな。その辛さが」

「先輩・・・」

 気づけば、何時間ここにいただろうか。

 目を覚ますと、恋歌が気を失って寄りかかっていた。

「先輩?・・・先輩・・・!!」

 しかも、恋歌の体から血が流れていた。

「どうすれば・・・病院に運ぶ暇もない。回復するしかない・・・間に合ってください・・・」

 お祈りが通じたのか、恋歌の傷が浅かったのか、止血に成功し、一安心した後に恋歌の端末で友希に連絡する。

「友希先輩・・・今すぐ、聖域に来ていただけませんか?」

 晴衣の口調で緊急事態だと思い、友希が「わかった」と一言述べてこっちにやってきた。

「先輩・・・一応、止血はしました・・・。連絡遅くてごめんなさい」

「謝らなくていいのよ。最近、怪しい動きが学園内で見られたから警戒してたんだけど・・・」

 友希が軽々恋歌を運び、歩き出す。

「今日は帰りなさいよ。明日も期待してるから」

 友希と別れ、寮にひとりで帰った時に怪しげな封筒が入っていた。

「差出人不明?」と晴衣が封筒の中身を見ると、頭が痛くなった。

「なんなの・・・これ・・・。はぁ・・・はぁ・・・」

 立ち上がろうとした瞬間、世界が黒くなった。

「声が聞こえる・・・でも、何を言ってるか分からないよ・・・」

 その現象は10秒も経たずに終わった。晴衣の心にあった“何か”が壊れたような音がしたが、一体何が壊れたのか知らないまま、晴衣は気を失った。

 意識掌握。これはある人物の固有能力である。

 対象者の意識を媒体経由で好きなように操ることが出来る。時間を決めて気を失わすなどといったことも出来る。

 晴衣は固有能力を持つ対象者から送られてきた媒体に触れた結果、次の日の朝まで気を失った。

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