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【書籍化決定】役立たずの私はいなくなります。どうぞお幸せに  作者: Na20


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 あれから私は二通の手紙を送った。一通は兄に、もう一通はスルス商会長宛だ。


 しばらくして二人からの返事が返ってきた。先に兄からの手紙を読んだ。手紙のほとんどは私を心配する言葉ばかりが並んでいたが、手紙の最後に私が知りたかったことが数行だけだが書かれていた。



『そういえば少し前に、お前の息子がお前に謝りたいと言って男爵家にやってきたぞ。頼まれていた手紙は渡したから心配するな』



 息子が私の実家を訪れたということは、おそらく学校は退学になってしまったのだろう。私が家を出なければ、息子は学校を卒業できたのではと思ってももう今さらだ。ひとまずあの手紙が息子の手に渡ったことにホッとした。私が息子にしてあげられることはこれくらいしかない。あとは息子の気持ち次第だ。


 次にスルス商会からの手紙を広げた。兄よりも枚数が多い便箋には、化粧水に関することがぎっしりと書かれていた。あまりの文字の多さに笑ってしまいそうになったが、それだけスルス商会長は真面目だということだろう。手紙を読み進めていくと、化粧水に関する報告の後に、あえて知りたいとは思っていなかった彼らの現在の状況が書き記されていた。

 まずエバンス商会は潰れてしまったそうだ。これは私も予想していて、特例を行使され、組合からの捜査を受け、化粧水を売ることができなくなった弱小商会が潰れるのは当然のことだろう。元夫のシモンは借金の返済に追われる日々で、商会が潰れたことによる借金と義母の作った借金の返済のために王都の家と商会の建物を売り払い、今は王都の外れで日雇いの仕事をしているそうだ。

 義母は商会が潰れ自身が落ちぶれてしまったことにショックを受け、寝込んでしまったらしい。だが寝込んでいても借金は減らない。しびれを切らした金貸しによって、義母は強制的に働かされているそうだ。

 最後に息子のケインについては特に何も書かれてはいなかった。その代わりにとある人物の話が書かれていた。



『少し前にうちの商会に入った見習いは、毎日懸命に頑張っています。そんな彼はいつか立派な商人になったら母親に謝罪と感謝を伝えるんだと言っていましたよ』



 元夫と義母は既に赤の他人であり、今の状況は自業自得の結果なので同情などしない。ただ息子だけはずっと心配していた。息子にも役立たずだと言われていたが、それは元夫や義母のせいだ。そして私のせいでもある。私がもっと強ければ息子をきちんと導けたのかもしれない。だがそれはもう今さらで、今の私にできることは彼の夢であった商人の道へと進ませてあげることくらいだった。そしてその道を選ぶのか選ばないのかを決めるのは息子自身で、息子は商人の道に進むことを選んだようだ。


 私はいつか再会できることを願いながら、そっと手紙を閉じた。




 ――コンコンコン



「はい」


『ベル。そろそろお茶にしませんか』


「ええ、今行くわ」



 手紙を引き出しに仕舞い、椅子から立ち上がる。私はその場で軽く身だしなみを整えると、優しい声で私の名を呼ぶ彼の元へ向かうのであった。

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