26 ベルタ
翌日。
昨日は寝る前に浮かれすぎたのかなかなか寝付けず、いつもより起きるのが遅くなってしまった。この時間ならもう息子も孫も出掛けてしまったはずだ。それなら仕方ないと、朝はのんびり過ごすことに決めた。息子と孫ももう大人なのだから、朝食くらい自分でどうにかするだろう。
私はその後もう一眠りし、息子の家に向かった。
「あら?」
驚いたことに、テーブルの上には昨日の夕食が手付かずのまま残されていた。息子は今までも夕食の時間に帰ってこないことはあったが、夜遅くなる前には必ず帰ってきていた。それなのに食べた形跡すらないということは、昨日は帰ってこなかったのかもしれない。
「そんなに仕事が忙しいのかしら?」
息子は昔から頑張りすぎるところがあるから心配だ。孫に関してはきっと酔ったまま寝てしまい、朝寝坊でもして食事をする時間がなかっただけだろう。もったいないが私は揚げ物も肉もあまり好きではないし、昨日作った料理を今日の夕食に出すわけにもいかないので片付けることにした。タイミングが悪かっただけだろうが、こうして息子と孫に長い時間会わないのは初めてのことだなと思った。
「二人とも私の料理が食べられなくて悲しんでるに違いないわ。シモンにお願いすることもあるし、今日も二人の好物を作りましょう!」
そうと決めたらさっそく街へ買い物に行かなければ。夕食の材料を買いに行くついでに、昨日見つけた素敵な帽子を買うことにした。今は手持ちがほとんどないが、近いうちにお金が手に入る。少しの間ならお金を借りても問題ないだろう。あの帽子が自分の物になることを想像すると自然と笑みが溢れた。
「さて買い物にいこうかしら。うふふ、楽しみだわ!」
そうして買い物を楽しんだ私は、満足して家に帰ってきた。二人はまだ帰ってきていなかったが、思っていたより遅くなってしまったので急いで夕食の準備に取りかかる。
――ガチャ
もう少しで出来上がるというところで誰かが帰ってきた。私は一旦手を止め扉に顔を向けると、そこにいたのは孫のケインだった。
「ケイン、おかえり」
「……ただいま」
「もうすぐできるから少し待ってて!今日はあなたの好物の」
「今日はあんまり食欲ないからご飯はいらない……」
「あら、そうなの?どこか具合でも悪いの?」
「……なんでもないよ。じゃあ部屋に行くね」
「わかったわ。ご飯はテーブルの上に置いておくからお腹が空いたら食べてね」
「……うん」
孫は調子が悪いようですぐに部屋へと行ってしまった。せっかく作ったのにと思いながらも、調子が悪いのなら仕方ない。私は止めていた手を再び動かし始めた。
今日帽子を買うのにお金を借りたのだが、なぜかどこの金貸しにも断られてしまい、最終的に借りられたのはちょっと怖そうな金貸しだけだった。だが実際に話をしてみれば親切な人で、自分が借りたいと言った額よりも多めに貸してくれたのだ。そのお陰で帽子に合う服も買うことができた。だがなるべく早くお金は返したいので、今日こそ息子に頼まなければ。
準備が終わり、息子が帰ってくるのを待つ。しかし息子は今日も帰ってこなかった。




