25 ベルタ
「あらもうこんな時間!息子と孫がお腹を空かせて待っているから急いで帰らないと!それじゃあね」
嫁が家を出て一週間。私はとても充実した生活を送っていた。
嫁がいなくなったことで息子の家の家事をしなければならなくなかったが、可愛い息子と孫のためならば苦ではないし、あの嫁とは違って私は要領よく家事をこなせるから問題ない。それに以前から友達とよく出掛けたり買い物をしたりしていたが、嫁がいなくなったことでさらに気分よく遊べるようになった。ただ夕食の支度をしなければならないので、帰りは少し慌ただしくはなってしまうがそれくらいは許容範囲内だ。
今日も急いで家に帰り、夕食の支度に取りかかった。息子はまだ帰ってきていないようだが、どうやら孫は自分の部屋にいるようだ。息子も最近は嫁がいなくなったからか前より早く帰ってくることが増えたので、そろそろ帰ってくるだろう。今日の夕食も息子が大好きな揚げ物にした。
「そうだ!今日はお肉も焼いちゃいましょう!」
追加で孫の大好物の肉を追加する。きっと二人は大喜びで食べてくれるはずだ。私はついさっきまで友達とお茶をしていたからお腹が空いていないので夕食は抜くつもりだ。
「早く帰ってこないかしら」
夕食の用意を終えて少し時間が経ったが、息子はまだ帰ってこない。それに部屋にいる孫に声をかけても、部屋から出てくる気配がない。一体どうしたのだろうかと思ったが、そういえばテーブルの上に飲みかけの酒の瓶があったことを思い出した。もしかしたらあれは孫が飲んだのかもしれない。十五歳になって酒を飲めるようになったのが嬉しかったのだろう。部屋から出てこないのはきっと、慣れない酒に酔って寝てしまったからに違いない。せっかく作った料理が冷めるのは残念だが、このまま待っていても仕方がない。二人ともその内食べるだろうと思い、私は隣の自宅へと戻った。
そうして寝る支度を終えたところで、一つ忘れていたことを思い出した。
「あっ、そうだわ!またシモンにアレをお願いしないといけないんだった」
アレとは息子の商会で売っている化粧水のことだ。化粧水を使うようになってから肌の調子がよくなり、そのことに気がついた友人に欲しいと頼まれ売るようになったのだ。
初めは安くしてほしいと言われたが、商人の家に嫁いだ者としてそれはできないと断った。化粧水は入荷したらすぐ売り切れになってしまう人気商品で、なかなか買うことができないのだ。ただ安くは売れないが、友人にいい顔はしたい。だから息子に優先的に譲ってもらい、友人に売っているのだ。そのお陰で私は友人たちの中で一番の発言力を得ることができた。ちなみに友達に化粧水を売ったお金は息子に渡さず、自分のお小遣いとして使わせて貰っている。今のところ息子からは何も言ってこないので問題ないだろう。そしてちょうど今日、友人からまた化粧水を買いたいと頼まれたのだ。
「明日にでもお願いしなくちゃね。ふふっ、今度は何を買おうかしら?」
化粧水を売るとなかなかいいお金になる。私は今から何を買おうかと、楽しみにしながら眠りに就いた。




