23 ケイン
「それじゃあ気をつけて帰るように」
「なぁ今日はどこ行こうか?」
「うーん、そうだなぁ……」
「あー、ケイン・エバンス。君はこの後私のところへ来るように。必ずだぞ」
授業が終わり、友人たちと今からどこに遊びに行こうかと話していると、担任の教師から声をかけられた。せっかく遊びに行くつもりだったが、呼び出されてしまっては無視するわけにもいかない。
「なんだ、ケイン。何かやらかしたのか?」
「いや、何もないと思うけど……」
なぜ呼び出されたのか、心当たりは全くない。
「じゃあ一体なんなんだろうな」
「お前が呼び出しなんてめずらしいな。まさか退学か?」
「なっ!そんなわけないだろう!」
「ハハハッ!冗談だよ冗談。卒業まであと一年なのに今から退学なんてただのバカだろ」
「だよなー。ケインは金持ち商会の後取り息子だし?何だかんだで頭良いもんなー」
「そうだろ?僕が退学なんてあり得ない話さ」
「まぁ理由はわからないが呼び出されたんなら仕方ないな。俺たちは先に行ってるから終わったら合流しようぜ」
「ああ、わかった」
そうして友人たちと別れ、教師の元へと向かった。
「先生」
「ああ、来たな。じゃあ場所を変えようか」
「え?別にここでもいいですけど……」
「いや、隣の空き教室に移動しよう。ついてきなさい」
「……はい」
早く友人たちと合流したかった僕は、わざわざ別の場所に移動しなくてもいいと思ったが、仕方なく言われるがままに教師のあとを付いていく。そして空き教室に入ると、教師は教室の扉を完全に閉め切った。
(なんだ?誰かに聞かれたらまずい話なのか……?)
先ほどまでは何も思い当たることがなかったが、この状況になってふと一つの可能性に思い至った。この教師は確か結婚したばかりだ。きっと奥さんにうちの商会の化粧水をプレゼントしたいが、人気過ぎてなかなか手に入らない。だから商会長の息子である僕に融通してほしいと頼むためなのではないか。それなら十分にあり得る話だ。
(まぁ僕が父さんにお願いすれば、一つくらいは融通してやれるかな。先生に恩を売っておくのも悪くないだろうし)
この学校は富裕層向けなだけあって、教師も色々な繋がりを持っている。恩を売っておけばいつか役に立つかもしれない。僕がそんなことを考えていると、教師が躊躇いがちに口を開いた。
「あのな、ちょっと聞きにくいことなんだが……」
(やっぱりそうだ!)
教師の口振りからして予想が当たったのだと思い、僕はハッキリと伝えた。
「気にせずおっしゃってください!できる限りお手伝いしますよ」
これで頼み事をしやすくなっただろうと思ったのだが、なぜか教師は怪訝そうな表情を浮かべている。どうしたのかと思っていると、教師の口から予想外の発言が飛び出してきた。




