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【書籍化決定】役立たずの私はいなくなります。どうぞお幸せに  作者: Na20


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18/31

18 シモン

 

 妻が家を出て一週間が経った。

 現在俺と妻が離婚したことを知るのは息子と母だけ。口裏を合わせるために妻と離婚したことを伝えると、二人は喜んで受け入れてくれた。息子も母も役立たずがいなくなって清々したと言っていて、そんな二人の様子を見ているうちに俺の不安も消えていった。

 今のところ生活に何の支障もない。いや、何もないと言えば嘘になるが、大したことではない。仕事がなぜか急に増えたことと、胃がもたれているくらいだ。きっと仕事が増えたのは商売繁盛しているからだし、胃がもたれているのは母の作る脂っこい料理のせいだろう。きっと大したことではない。


 だから今日もいつもと変わらない一日を送れる、そう思っていた。


 商会長室で浮気相手との逢瀬を楽しんだ後、仕事をする気が起きなかったので、後の事は部下に任せて家に帰ることにした。外はまだ明るいが、たまには家でのんびり酒を飲むのも悪くないと思ったのだ。今までは辛気臭く、野菜料理しか出さない妻がいたから家に帰るのは夜遅くなってから。それまでは浮気相手の家で時間を潰していた。できることなら浮気相手の家に泊まった方が楽なのだが、これでも一応妻と子どもがいる身。あそこの商会長は妻と子どもを置いて浮気相手の家に入り浸っている、などと噂されるのは避けたかった。それなら浮気しなければいい話なのだが、やはり俺も夫や父親である前に男だ。萎びた雑草より鮮やかな花に惹かれてしまうのは仕方がない。


 そんなことを考えながら家に帰ったが、家の中に入ると違和感を覚えた。なんだか家中が薄汚れているような気がしたのだ。今日の朝家を出るまではそんなこと思わなかったのに、一体どうしてそう思ったのだろうか。

 今我が家の家事は母がしてくれている。俺は仕事で忙しいし、息子は学校に通っている。そうすると必然的に、仕事をしていない母しかいなかったのだ。人を雇うことも考えたが金がかかるし、信用できない人間を家に入れることに抵抗があった。もしかしたら金を盗まれるかもしれないと思うと気が気じゃない。だから嫌がるかもしれないと思いながらも母に家事を頼むと、意外にも喜んで引き受けてくれたのだ。


 妻がいた頃は家が薄汚いなどと思ったことはなかった。役立たずの妻ができていたことを母ができないなどあり得ない。きっと普段は夜にしか帰らないのに、めずらしく昼間に帰ってきたからいつもと違うように感じたのだろう。


 俺はそう一人で納得し、酒を飲み始めた。


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