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第14話 十年ぶりの再会


 俺はルーティラ姫を取り返す為に親衛隊の三人を引き連れて聖都ミノアへと向かった。


 聖都の周辺はデュッケ侯爵が話していた通り多くの人が集まり自由市場が開かれていた。

 ここには慈愛の女神エストライアを信仰する信徒たちや観光客等多くの人が訪れる。

 人が集まれば経済が生まれる。

 商機を狙って商人たちがこの地に集まってくるのは自然の成り行きだろう。

 よくよく見ればアルテア帝国の人間と思われる商人も紛れている。

 流石に聖都の中には入れて貰えないようだが問題さえ起こさなければ城壁の外で商売をする分には目を瞑って貰っているようだ。

 平時ならばどんな珍しい物が売っているのか見て回りたいところだが今はルーティラ姫の救出が優先だ。

 脇目も振らずに聖都の入口の門まで足を進め門番の兵士たちに向かって名乗りを上げる。


「俺はアルテラ帝国騎士団の元武芸師範オーシャン・プージだ。聖女ドロシーと話がしたい。取り次いでくれないか」


「オーシャンだと? しばし待て!」


 俺の名前を聞いた兵士は急いで聖都内に伝令を送る。

 しばらくして城門が開きピンクの髪をした一人の少女が現れた。

 エリコが少女の姿を見て俺に耳打ちする。


「教頭、あの女がロウゼリアの聖女ドロシーです。どうかお気を付け下さい」


 険しい表情で忠告するエリコ達。

 しかし俺は見覚えのある少女の姿を見て逆に声を弾ませた。


「……やっぱりドロシーか! 懐かしいな」


「お久しぶりですオーシャン教頭。あれからお変わりはありませんか」


 聖女ドロシーは俺を見て微笑みながら挨拶をする。

 そこには敵意は微塵も感じられない。


「色々あったがこの通り元気にやってるよ。それにしてもしばらく見ない間にすっかり印象が変わったな。昔のお前はもっとこう……」


「うふふ、十年あれは女は変わりますわ」


 親しげに談笑をする俺達を見て親衛隊の三人は呆気に取られている。

 久しぶりの再会、積もる話もあるが今は捕らえられたルーティラ姫を解放してもらうことが先決だ。

 俺は適当なところで話を切り上げて本題に入った。


「さて、俺がここに来た理由は分かっているな? ルーティラ姫を返してもらおうか」


「やはり彼女を取り戻しにいらっしゃましたか。でもその前に久々に手合わせを願えますか教頭」


 ドロシーはそういうと懐から瓶を取り出して中の液体を飲み始めた。

 それを見てエリコが俺に耳打ちする。


「教頭、注意して下さい。私が思うにあの液体は人間の身体能力を化け物のように強化するという禁じられた魔女の秘薬ではないかと」


 なる程エリコはそう考えたか。

 確かにたったひとりの華奢な少女が歴戦の武人だった自分達を赤子のようにあしらった事実を鑑みればそう考えてしまうのも理解できる。

 しかしあの液体の正体が何なのか知っている俺はその解釈に思わずぷっと吹き出してしまった。


「教頭何がおかしいのですか?」


「いや悪い悪い。お前があまりにも真剣な表情でそんなことを言うものだからつい笑ってしまった」


「教頭はあの液体が何なのかご存じなのですか?」


「勿論。ドロシーの事はよく知っているからな。あれは──」


「それでは行きますよオーシャン教頭」


 液体を飲み終えたドロシーが俺があの液体の正体を言い終わる前に錫杖を振り回しながら向かってきた。


「おっと、話は後だ」


 俺は腰に差した剣を抜いて構える。


「教頭注意して下さい。あの錫杖の一撃は姫様の斧や私の矢を軽々と砕きました」


「知ってるよ、ドロシーの一撃は重いからな」


 一瞬にして俺の目の前まで距離を詰めたドロシーが錫杖を振り下ろした刹那、俺は右手に持った剣の腹に左手を添える。


 次の瞬間キィンと高い金属音を響かせながらドロシーの錫杖は真横に弾き飛ばされた。

 俺の剣は砕かれることもなく健在だ。

 ドロシーは地面に落ちた錫杖を拾い上げながら感心した様子で言う。


「相変わらずお見事ですわ教頭」


「いやお前もかなり腕を上げたなドロシー。タイミングを誤れば俺の剣は砕けていただろうな」


 この勝負俺の勝ちだ。

 しかし傍目からはドロシーが手が滑って錫杖を地面に落としてしまっただけにしか見えないだろう。

 エリコたちも何が起きたのか分からなかったように呆然としている。


「教頭、今何をされたのか全く見えませんでした。どうしてドロシーのあの一撃を受けて剣が折れなかったんでしょうか?」


「それじゃあ説明しようか」


 ドロシーが錫杖を振り下ろした瞬間俺は刃を横に倒して剣の腹で受け止めた。

 しかしまともに受け止めては錫杖の一撃の衝撃に耐えられずに剣が折れてしまう。

 だから俺は剣の反対側の腹に左手を添えてクッションのように柔らかく受け止めたのだ。

 そしてその後は衝撃の反動を利用して錫杖を横に弾き飛ばす。

 所謂受け流し(パリィ)の要領だ。


「あの一瞬でそんな事を……さすがは教頭です」


 俺の説明を聞いて親衛隊の三人は感動して尊敬の眼差しを向けた。

 一方俺はドロシーに視線を向けて訪ねた。


「さて、どんな事情があるのか知らないけどかは知らないけどルーティラ姫は返してもらうからね」


「ええ勿論。彼女の所に案内しますわ。私に付いてきて下さい」



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