42 それらの意味
お昼は梅おにぎり、夜は鮭のお弁当。飲み物はほうじ茶を選択。それらをセイは空間に仕舞って、仕事へ向かった。後片付けをしてくれてから。
で、今、私は子猫たちの写真を撮りまくっている。
「あー良いね~それとっても可愛いよ~」
パシャパシャパシャパシャ撮りまくる。連写もする。動画も撮る。
先に一言、撮ってもいいかと尋ねたら、良いお返事をくれたので、こうなっている。
あと、あの薔薇たちも、花束の状態で撮って、瓶に挿してからも撮った。セイに、家族に送ってもいいかと聞いて、了承を得られたので、送りました。
「……あ」
『この色の薔薇の花言葉、そして本数の花言葉、ご存知でしょうか?』
そういや、そんなこと言われたな。あの時はいっぱいいっぱいで、考える余裕もなかったけど。
「まあ、そもそも知らんし」
調べてみよ。
「……」
青の薔薇の花言葉は、前は、不可能・存在しない。今の意味は、奇跡・夢が叶う・神の祝福。
四本の薔薇の花言葉は、死ぬまで気持ちは変わりません。
by、ネット調べ。
「セイくんよぉ……」
なーにが緊張したじゃい。あんな、堂々と! こういうことをするんじゃありません! いや、嬉しいけど! とても嬉しいけど!
「あ! それを?! 家族に見せたな?!」
はっっっず。いや、知ってて送ったならまだしも、今知ったから、恥ずかしさが、ね。
「セイめぇ……君が悪い訳では、無いけども……あ、あと、花の保存方法」
やっぱり、そのまま萎れて枯れていくのは、寂しいし、何かしてもらえるなら有り難い。……そのまま保存って、このまま綺麗に保つってことかな。
「んー……それも良いとは思うけど……」
なんか、それもなんか、寂しいな。
「あと? プリザーブドフラワーとドライフラワーって、言ってたっけ……」
床に座り込み、花の保存方法について、調べ始める。
と、着信。
「……ミクト?」
なんだ突然。
「もしもs『ナツキ』……」
食い気味に。
「愛しい姉への第一声がそれかね?」
『キモいこと言うな』
「はいはい。で、どした? なんかあった?」
『……年末、どうすんだ』
「ん? 一応、帰る予定だけど?」
私は毎年、会社が休みの年末年始、実家に帰っている。逆に言えば、緊急時以外、その時しか帰らない。お墓参りとかも、有給使ったりして行ける時は行くけど、駄目な時は、その期間にやっている。
『それ、アレには言ってんのか』
「アレってなんだ」
『…………車崎』
「ああ、いや、まだ」
『連れてくんのか』
「え? どうだろ。あっちの年末年始も、まだ未確定な部分があるみたいだし。てか仕事上、その時期は稼ぎ時だし」
セイに送ってもらった予定をサラッと見たけど、結構詰まってた。
『……あっそ。切る』
切られた。
「……なんだったんだい?」
未だにセイを訝しむのは、まあ私が招いたことだから仕方がないとして。
急に電話かけてくる意味が分からん。やり取りするにしても、いつもラインなのに。
「てかミクトよ。大学は大丈夫か?」
今日は土曜だけど、君、土曜も講義があるんじゃなかった? あとゼミとサークル。
「……まあ、今はいいか」
一応、どうした? と、トラのスタンプを送って、調べるのを再開する。と、ミクトからなんか来た。
「……」
はぁ? という、ウサギのスタンプだった。
*
「花、は、これで良いかな」
目途をつけ、時間を確認すれば、まだ昼まで一時間以上ある。
「さ、て。……プレゼントがなぁ……」
ただのって言うと変だけど、気軽なそれが、今や恋人への初めての贈り物である。
「あー、あと、ネックレス……は、一旦置こう」
同時進行は流石に無理だ。
「でもまあ、最初だし。なるべく気軽にね、重くならないように」
言葉にして、言い聞かせ、調べる。
そのまま昼になった。ので、休憩がてら、お昼を食べる。因みに、昼も夜も、セイの分を作る──途中から一緒に作ってくれたけど──のと同時に作ったので、同じものだ。
「セイ、食べれてるかな……ラインすれば良いか」
*
撮影はトラブルもなく順調に進み、昼休憩の時間になった。
セイは、自分が昼を楽しみにしていることを自覚しつつ、それを顔には出さず、割り当てられた休憩室に入る。そして適当に座り、鞄──の中の空間──から、おにぎりとお茶を取り出した。
自分もいつか、ちゃんととまではいかずとも、料理ができるようになりたい。ナツキにそれを食べてもらって、美味しいと言ってもらいたい。
そんなことを思いながら、おにぎりを食べる。美味しいと感じる。有り難いと、愛おしいと感じる。
そこに、ノックの音がした。
「……はい」
叩き方からしてマネージャーだろう。そう思いつつ、返事をする。
「失礼します。アジュールさん……」
大きなショルダーバッグを持って入ってきたマネージャーが、セイを見て、驚いた顔をした。
まあ、食べているからだろうな、と思いながら、「どうしました? 何かありましたか」と声をかける。
「……あ、いえ。特には。……えー……別件の報告と相談をしようかと、思ったんですが……」
「別件ですか。食べながらでいいなら、大丈夫ですが」
「……では、失礼します」
別件の、とは、クリスマス当日のショーについてだった。ネットでの生配信の、段取りが着いた、と。そのまま食べつつ打ち合わせをし、
「では、このように進めます」
「はい、お願いします」
マネージャーは書類やその他諸々を、ショルダーバッグに仕舞い、立ち上がり、
「では失礼します」
「いえ、こちらこそ」
部屋から出て、ドアが閉まり。
『……食べるんだ……』
マネージャーの小声が聞こえ、まあ、そう思うよな、と思う。
彼は、自分が食事をしているところを、初めて見たのだから。
*
こっちから聞く前に、セイからラインが来た。
『お昼、美味しかったです。ごちそうさまでした』
スマホを横に置いたままにしていたから、すぐそれに気付き、開いてしまった、という次第。
『こちらこそ。食べれて良かったよ。美味しいって言ってくれて、ありがとね』
と、送信して、サンクススタンプを送る。
「で、だ」
プレゼントの考えが纏まらなかったので、ローテーブルで来週の献立をざっくり考えていた私は、その作業に戻る。
「もーねー。あと少しで十二月だしねー」
本格的に、根菜が美味しい季節だよね。あと白菜とかの葉物が。
冷蔵庫の在庫を確認しつつ、スーパーの値段を思い出しつつ、組み立てる。
一段落し、コーヒーを飲んで。
「……あー、ミクトの誕プレも考えなきゃだった」
まあこれは、もうほぼ決めている。ので、目星をつけていたものを確認し、カゴへ入れ、プレゼント用の包装とメッセージカードを設定し、メッセージを入力し、誕生日前日に届くように設定して、決定。
「一つ、片が付いた」
……もう一回、やることやりたいことを、整理してみようか。
ソファで寝ている三匹をそのままに、パソコンを持ってくる。開いて、ざっと書き出して。
「んまあ、こんなもん、か?」
呟いた。
・セイへのプレゼント
・ネックレスのデザイン
・薔薇の保存方法
・花瓶
・今日は泊まれるのか
・クリスマスどうするか
・寝る時の格好
・年末年始を伝える
・徳屋でまた一緒に呑みたい
徳屋は、セイと初めて会った居酒屋だ。ある意味、思い出の場所である。
寝る時の格好というのは、セイが寝ていた時の服装。シャツにスラックス、なのはまあ、気にはなったけど、それだけなら、まあ、だった。けど、併せてそこにベルトまでしていたから、ちゃんと寝れたのか気になってる。ホントはセイが仕事行く前に聞きたかったけど、色々あって機を逃してしまった。
「……そういや」
伯母さんから半強制に買わされたネックレスとかイヤリングに、気に入るものは無かったけど。
セイがくれたコレは、当初は驚きはしたけど、嫌ではなかった。
「こういうのが、好きなんか?」
石をつまみ、見つつ、言う。
ケイコ伯母さんから買わされたのは、ハートのデザインだったり、ピンクだったり、黄色はまあマシに思えたけど、小花のデザインで。
内心うへぇと思っていた。今も思っている。
「あー、なー……服もなー可愛い系ばっかでなー……そういうのはあんまりな」
スカートもあんまりだし。スラッとカッコイイ系とか、気楽なやつが好きだ。
「……うん、ネックレスの方針が固まった」
それらをセイに伝え、今日も泊まれるかも伝え、一旦このくらいでいいかと、パソコンとスマホを閉じる。
「さって。洗濯物をしますか」
それが終わったら、買い物だ。




