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俺の転生×転性ライフ  作者: 卯村ウト
第4章 シャルゼリーナ編
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61 番外編② シャルからの手紙



 コンコン。



「失礼します!」



 シャルの結婚から半年が経ったある日、俺がリビングでくつろぎながら本を読んでいると、玄関のドアがノックされ、その向こうから声が聞こえた。



「フォル、ちょっと玄関まで行ってもらえる? たぶん手紙だと思うから」


「うん」



 洗い物で手が離せないルーナに代わり、俺は本を閉じてテーブルの上に置くと、急いで玄関へ向かう。


 俺がドアを開けると、そこにいたのは、門番をしている二人のうちの一人だった。



「ごくろうさま。どうしたの?」


「はっ、手紙が届きましたので、持って参りました!」


「ありがとう」



 俺は、丁寧に差し出された手紙を労いながら受け取る。



「失礼します!」



 門番はビシッと敬礼を決めると、振り返って警備に戻っていった。

 俺は玄関のドアを閉めると、リビングに戻って、机の上に手紙を置く。



「てがみ……」



 何の変哲もない、真っ白な封筒に入った手紙。



 『ラドゥルフ州ラドゥルフ市麦街道

 エル・フローズウェイ伯爵家の皆様』



と表には書かれている。


 それにしても、この筆跡、どこかで見たことあるな……。


 そう思いながら裏返すと、差出人の名前が書いてあった。

 俺はそれを見て息をのむ。



「シャル……」



 『テクラス州テクラス市砂漠街道

 シャルゼリーナ・ヴァン・フロイエンベルク』



とそこには書かれていた。


 いつもの癖で、ミドルネームを『エル』と書きかけたらしく、ヴァンの横にぐちゃっと黒で塗りつぶされた丸がある。


 俺は心の中で苦笑しつつも、リビングのソファーに腰を下ろした。



「誰からの手紙だった?」


「シャルから」


「あら、そうなの? ママにも見せて」



 ルーナは手を止めると、俺の隣に座る。


 シャルが手紙を送ってくるのは初めてだ。というか、そもそもシャルが手紙を書いているところなんて見たことがない。



 いったい何が書かれているのだろうか。



 俺は少しワクワクしながら封を開けると、中の手紙を取り出し、ゆっくりと文章を読み始めた。






 ※






『親愛なる伯爵家の皆様へ



 そちらでは春の兆しが見えていることでしょう。ですが、こちらはまだ日中は夏と変わらないほど暑く、夜は冬よりも寒いです。


 皆さんは元気にしていますか。私は元気に過ごしています。



 今は、お義父様からハルクへの、業務の引き継ぎが、少しずつですが進んでいます。頭が切れ、政治的な感覚も優れているので、きっと将来は良い為政者として、活躍してくれるでしょう。


 そちらでも、パパからお姉ちゃんへの業務の引き継ぎが進んでいると思います。引き継ぎ自体はハルクよりも先に始めていたので、お姉ちゃんはハルクの先輩ですね。


 ただ、お姉ちゃんは、フォルの世話もあるのでこちらよりはるかに大変だと思います。でも、フォルは賢い子だからそこまで心配しなくてもいいのかな、とも思っています。フォルは、私たちが思っているよりもずっと賢いです。だから、お世話しすぎる必要はないと思います。って、このことはお姉ちゃんが一番よくわかってますよね。



 私のこっちでの日常生活は、とても面白さに満ちています。つい最近、これを書いている私にとっては一昨日ですが、ハルクの業務の一環である、テクラスの北にある軍の基地の視察についていきました。


 そこにいた兵士の中に、私の剣術の腕を知っている人が何人かいて、ついでに、その場にいた兵士に軽く剣術の指導をしました。そうすると、瞬く間に上達していきました。やはり軍人とだけあって、体を動かすのが得意な上に、元となる体ができているからでしょうか。

 その基地の司令官が強くなった兵士を見て、「軍隊に入って、うちの兵士に剣術を教えてくれないか」と私に頼んできました。その時は、ハルクがやんわりと断りましたが、暇があったらまた行って指導したいと思いました。



 そういえばフォルの剣術指導はどうなりましたか? きっとパパがフォルの訓練してくれていると思います。ただ、訓練内容は私以上の鬼なので、耐えられるか少し心配ですが、フォルなら大丈夫でしょう。


 フォルは見たこともない剣術を操る、特殊な剣士です。あとは体が完成さえすれば、魔法と剣術の二刀流で、きっと誰も見たことがないほどの強さになると思います。勿論、比喩抜きで。だから、今は愚直に体づくりを頑張って欲しいです。



 少し早いですが、きっとフォルなら王立学園に無事に入学するだろうと思うので、人生の先輩として学校生活についてアドバイスをしておきます。



 王立学園は、この国で最高の教育が受けられる学校です。その学校に入学するのは、とても素晴らしいことです。それほど、フォルの実力がついているということです。

 だから、この機会を無駄にしないで、充実した学園生活を送ってほしいと思います。詳しい話は、きっと卒業生であるママが教えてくれるはずなので、今のうちにいろいろと聞いておくんだよ。


 あと、魔法に熱中するのはいいんだけど、学校に入った後もきちんと毎日運動をするんだよ? せっかく鍛えたのにおじゃんになってしまうのは、本当にもったいないことだから。


 それに、学校では信頼できる友達も作っておくこと。フォルには同年代の子供と接する機会が、ほとんどなかったと思います。だけど、これから先、生きていく上では友達というのはとても大切になります。だから、数が多くなくてもいいから、その人を信じられるような、そして自分を信じてもらえるような友達を作ってください。


 フォルのコミュニケーション力がなら、きっと大丈夫! 頑張ってね!



 そろそろ書くことがなくなってきたので、今回はこの辺にしたいと思います。多分、この手紙を出し終わった直後から、これも付け足すべきだったー! となる気がするけどね。


 暇があったら返信をください。いつでも待ってます。

 それではお元気で。


 シャルゼリーナ・ヴァン・フロイエンベルク



 追伸


 私、妊娠しました。

 このまま予定通りに行けば、今年の夏位に出産する予定です』






 ※






 俺は三枚に渡って綴られた便箋を机の上に置くと、一息つく。



「何というか、シャルらしいわね」


「うん」



 特に、最後に慌てて追記したような、妊娠の報告とかね。



「あとでジージにも見せましょうか」


「うん。ね、ママ。おへんじかきたい」


「そうね。ママもジージもいろいろ伝えたいことがあるから、一緒に書きましょう」


「うん!」



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