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俺の転生×転性ライフ  作者: 卯村ウト
第4章 シャルゼリーナ編
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51 タイムリミットに間に合わない



 あの後、俺たちは伯爵邸に戻ると、シャルをテクラスにおいて、ラドゥルフへ戻った。



 遺跡のトイレで聞いた、フリードリヒの『ハルクは、確実におしまいだな』という言葉。奴ら兄弟が何かを企んでいることは明らかだ。


 しかし、肝心の何をしようとしているのか、ということがわからない。彼らが直接、ハルクさんに対して危害を加えようとしているのかもしれないし、ハルクさんの立場を悪くさせるような、何か重大な情報を知っているだけなのかもしれない。


 とにかく、よくないことが起ころうとしていることは確実だ。


 そして、その内容を知るヒントは、彼ら自身が言っていた。『十日後の同じ時間に、またここで』と。つまり、その時に同じ場所に行けば、彼らがそれについて話しているところに出くわせる。



 問題は、そのことを誰に、どのように伝えればよいか、ということだ。


 もし他の人を経由すれば、その人数が多ければ多いだけ、奴らにバレる可能性が高くなる。

 それに、大勢の前で話すのも、余計な詮索をされてしまい、話がむやみに広がってしまうかもしれない。


 一番良いのは、狙われているハルクさん自身に、二人きりの状況で伝えることだ。

 それが最も、俺が話を聞いていたこと、それをハルクさんに伝えたことが、フリードリヒらに漏れないだろう。


 しかし、テクラス滞在中に、それは叶わなかった。あの話を聞いた後、彼と二人きりになるチャンスは無かったからだ。


 結局、その日中に俺がとれた行動は、シャルと二人きりになった隙に、簡単に警告することだけだった。


 しかも、『フリードリヒさんとディートリヒさんが、ハルクさんに何かしようとしているから気をつけて』としか言えなかった。当然、シャルには不思議そうな顔をしたが、俺の真剣な表情で察したのか、何も聞き返すことなく『わかった』と言ってくれた。


 だが、これだけでは明らかに情報不足。もっと詳しく説明する必要があった。



「ねえママ」


「なに、フォル?」


「つぎにテクラスにいくのはいつ?」


「次はシャルの結婚式の時よ。だから、一ヶ月後ね」



 翌日、ルーナに次にテクラスに行くタイミングを尋ねると、彼女はそう答えた。


 それでは遅すぎる! 十日後……いや、九日後に行われるであろう密談に間に合わない。


 俺は床にひっくり返って駄々を捏ねる。



「やだやだ〜! もっとはやくいきたい〜!」


「だめよ! わがまま言わないの!」



 ピシャリと言われてしまった。シャルには効果覿面だったのに、ルーナには通用しなかった。ちぇっ、ダメか……。



「あのね、フォル。テクラスに行くのにも、お金がかかるのよ。私たちは市民の税金で暮らしているわ。あなたのわがままで、そんなホイホイ行けるようなところではないのよ」


「……どのくらいかかるの?」


「片道で、一万くらいかしら」


「いちまん……」



 確か、俺の口座に入っているお金は四千弱だったはず。一人で勝手に行くには圧倒的に足りない。

 バルトも忙しそうだし、頼んでもノーと言いそうだ。彼らを説得して、次の密談までにテクラスに行くのは無理そうだった。



「……どうしよ」


「もしかして、忘れ物でもしたのかしら?」


「ううん、ただ、シャルにいいわすれたことがあって」


「それなら、手紙を出したらどうかしら」


「てがみ!」



 そうか、その手があったか!


 俺は、早速シャルに手紙を書こうと準備する。

 が、最も重要なことを把握していないことに気づいた。



「ねえママ」


「何かしら?」


「でがみをだしてから、いちばんはやくテクラスにとどくのは、どのくらいあと?」


「そうね……だいたい半月後くらいかしらね」



 それじゃあ間に合わない! 手紙もダメそうだった。

 ちくしょう、インターネットがあれば、瞬時に通信できるのに……。なんて時代に生まれてしまったんだ!


 俺は、二階のシャルの部屋に行くと、ドアを閉め、ほとんど帰ってこない持ち主のベッドにダイブする。



「どうしよ……」



 フリードリヒらがことを起こすのは、早くとも九日後以降だ。しかし、情報があまりにも不足している。九日後の密談の内容を把握するのは必須だろう。



「フォルー、魔法の練習に行くわよー」


「……はーい」



 もやもやした気分のまま、俺はベッドから降りると、階下へ向かったのだった。






 ※






 バババババ、と爆音が野原に響き渡る。


 その音源である俺は、上空三十メートルほどを、空気を切り裂いて飛行していた。



「フォルー! あまり遠くに行っちゃダメよー!」


「わかってるー!」



 エルの風魔法で音声を捉えた俺は、眼下でこちらを見上げているルーナに向けて叫んだ。


 もちろん、これは魔法の練習である。



『だいぶ慣れてきたっスね〜』


『いい感じいい感じ!』



 火精霊、ルビの力を借りて、小規模の指向性のある爆発を連続して起こし、推進力を生み出す。

 風精霊、エルの力を借りて、俺の周囲の風の流れをコントロールし、姿勢や進行方向を制御する。


 飛び立つ際は、『フロート』である程度の高さまで浮きつつ、姿勢を整える。


 これが、俺が開発した魔法、『マニューバ』。通称は飛行魔法、といったところだろうか。



 エル、今の速度はどのくらい?



『毎時五十キロくらいっスね〜』



 エルが教えてくれた速度は、厳密には正確ではない。なぜなら、あらかじめエルに教えていた時間の単位と距離の単位が、俺のなんとなくの感覚に依存しているからだ。それでも、だいたい合っているとは思う。


 今は鳥くらいの速度だ。飛行機にはまだ全然及ばない。


 まあ、ルーナに低速巡航に制限されているから、仕方がない。本気を出せば、もっともっと速く、それこそ飛行機と同じくらいの速度が出せるはずだ。



 あーあ、『マニューバ』でテクラスと往復できたらな……。



『テクラスとは、どのくらい離れているっスか?』



 家にあった地図には、王都まで約四百キロ、テクラスまで約六百キロって書いてあったな……。



『それだと、今のフォルの魔力量じゃあ全然足りないっスね。往路の途中で力尽きるっス』



 マジか。俺の魔力量、今六千はあるんだけどなぁ……。

 でも確かに、この魔法は魔力をゴリゴリ消費するし、高速巡航したらすぐに尽きてしまう気がする。



『どこかで魔力を補給できればいいのにねー?』



 それがあったら、どんなにいいことか……。


 最良の解決策は俺自身の魔力量を増やすことだが、あと九日で少なくとも二倍にしなければならない。そんなの無理だ。


 もし仮に、休み休みで行くとしても、今度は時間の心配が出てくる。

 現状、俺一人での外出は許可されていないので、俺が外出しているとバレないように、素早く往復する必要がある。



 これもダメなのかなぁ……。


 ため息をついて、俺は速度を落として着陸する。そして、ルーナのところへ歩いて行った。



「今日はもういいの?」


「うん」


「わかったわ。じゃあ帰りましょうか」



 俺は魔法の練習を終えると、ルーナと家路につく。



「「ただいま」」


「おお、帰ったか」



 玄関のドアを開け、中に入ると、リビングのソファにはバルトの姿。



「どうしたのお父さん、仕事は?」


「今日は早めに切り上げてきた。それよりも、フォルに頼みがある」


「たのみ?」


「うむ」


「ちょっとお父さん、まさかクエストじゃないでしょうね?」



 すると、ルーナが目を釣り上げて、バルトに問いかける。

 そういえば、俺にはルーナからクエストの受注を禁止されているんだった……。


 しかし、バルトは首を横に振って否定する。



「いいや、今回はクエストではない。だが、絶対にフォルでないといけないことなんだ」


「それはなに?」



 俺が問いかけると、バルトはその内容を口にした。



「フォルに、地底湖の調査に同行してほしいんだ」



 2024/02/27 更新

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[気になる点] 主人公は精神障害を持っていますか? なぜ自分の家族と話し合わなかったのですか?
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