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俺の転生×転性ライフ  作者: 卯村ウト
第3章 ラドゥルフ編
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40 私たちと契約しませんか?



『……その、私たちと、契約、しませんか?』



 え? 契約?


 どういうことだ?



『何を言い出すっスか、イア! フォルゼリーナさんは今急いでいるんスよ!』


『でも! こんな凄い量の魔力を持った人、二度と出会えないかもしれませんよ!』


『それはそうっスけど……』


『皆だって、フォルゼリーナ様と契約したくないのですか?』


『アタシはさんせー!』


『養ってもらいたい~~』


『フォルゼリーナはいい魔力を持っておる‼』


『ボクたちにとって、いい場所でしゅかりゃね』



 ちょちょ、ちょっと待ってくれ。俺だけ話から置いてけぼりになってるじゃんか!


 まず、『契約』って何だよ?



『契約というのは、我々の魔力供給パスを契約者の魔臓に繋ぐ行為のことです』



 ……つまり?



『あーもう、イアは難しい言葉を使いすぎなんスよ……。

 要するに、契約した人から、魔力を供給してもらう代わりに、魔法を発動するお手伝いをする、っていう約束を交わすことっス』



 なるほど、何となくわかった。でも、なんで俺?



『それは、全系統に適性があるっていうのと、単純に魔力量が多いってことっスかね。まだまだ年齢が若いので、これから魔力量も増えていくはずっスし』



 なるほどね……。しかも、何気に全系統使えるってこと、バレてるし。


 でも、上位精霊って魔力をたくさん使うんでしょ? 今の俺の魔力量で賄い切れるかな……。



『大丈夫っス』


『それくらい、あなたの魔力量は規格外、ってことなんだよー!』


『だから、安心してください』



 そ、そうか……。


 今の話をまとめると、俺の魔力量は精霊たちを維持するのに充分量あり、魔力をあげる代わりに、魔法を行使するときに補助をしてくれる……と。悪い話ではなさそうだ。


 一応聞いておくけど、精霊たちと契約してから、何か俺の体に悪影響があるってことは……。



『その可能性は限りなくゼロに近いです』


『むしろ、あたしたちが自由自在に使えるよー!』


『まあ、其方の魔臓から少しずつ魔力を使うじゃが。それは必要経費ってやつじゃ』


『それに、私たちは、それぞれの系統の魔法が使えます。勿論、複合魔法も私たち複数を使えば可能です』


『さすがに系統外は使えないけどねー』


『でも、ウチらが中に入れば、それぞれが魔法を使えるっスから、元々使えるのと合わせれば最大で魔法を同時に七つ出せるっス』



 七重発動(セプタプルキャスト)⁉

 現状の二重発動を大きく上回る数だ。



『あ、元々二重に使えるなら、八重に魔法が使えるっス』



 あ、そっか。


 それにしても、八つも同時に魔法を使えるなんて……。

 現実味の無い話が急に現実的になって来てちょっとくらっときた。


 そんな強大な力が手に入るのだ。ワクワクを通り越して、少し怖いまでもある。



『……どうですか? 契約しませんか?』



 ……はい。


 結局、俺は精霊たちとの契約の魅力からは、逃れられなかった。



『それでは、私たちは、フォルゼリーナ・エル・フローズウェイ様と契約いたします』



 そう言うと、イアを先頭に、次々と上級精霊が俺の中に入っていく。


 魔臓の周辺に何かが動き回っているような感覚。

 それはやがて沈静化すると、もとから俺の身体の一部だったかのような状態になった。



「……とにかく、もどらないと」



 今は放心している場合ではない。一刻も早く、上へと戻らないと。


 俺は浮遊魔法を調節して、安全を確認しながら、最大限の速度で元の場所へと、上昇していくのだった。






 ※






 しばらく上昇していると、やがて上の方に微かな光が見えてきた。地下湖の魔水晶の灯りとはまた違った雰囲気の光。人工的なランプの光だった。


 それがどんどん大きくなっていき、ついに垂直な壁の上の柵も目に入ってきた。



「よっと」



 俺は柵に足がかかるくらいまで上昇すると、それを乗り越えて着地する。


 そして、前を向くと、そこにはたくさんのハンターたちがいた。



 まず、目の前にいたのは、柵にロープを縛り付けている屈強な剣士の人。そして、そのロープを胴体に巻きつけた魔法使いのお姉さん。ロープをしっかりと握りしめている数人の男性ハンター。その後ろには、大勢のハンター。


 皆、俺の方を見て、驚いて固まっている。全員がポカーンという擬音を出しているかのように感じた。


 次の瞬間、集団の中から誰かが飛び出してきた。そして、俺を押し倒す勢いで抱きついてくる。



「フォルううぅぅ! 無事だったんだねっっっ!」



 クォーツアントの強烈な体液の臭いに混じって、微かに覚えのある匂いがして、俺は抱きついてきた人がシャルだとわかった。


 それに呼応するように、後ろからハンターたちの声が聞こえてくる。



「フォルゼリーナ様が戻ってきた!」


「ご無事でよかった!」


「よかったぁ〜」


「吹っ飛ばされた時は、マジでどうしようかと思った」


「本当に戻ってくれてよかったです!」



 どうやら皆、俺のことを心配してくれていたようだ。迷惑をかけて申し訳ない気持ちになる。



「シャル……ちょっとはなれて」


「はなれないよぉぉぉぉぉ! もう、クォーツアントに吹っ飛ばされて、柵の向こうに落ちたって聞いた時は、本当に助からないんじゃないかって思ったんだからね!」


「……しんぱいかけてごめん」



 それは申し訳なかった。だけど……。



「シャル、まもののたいえきでくさいからはなれて」


「あ……ごめんごめん……」



 ようやくまともに見えたシャルの目は、真っ赤になっていた。


 ところで、本題のクエストはどうなったのだろうか。見たところ、クエストに参加したハンターは、皆この場に集まっているようだけど……。


 その時、群衆をかき分けて、バルトがこちらに来た。



「フォル! 無事だったか!」


「うん」


「怪我はないか? どこか具合の悪いところは?」


「へいき。それよりクエストはおわった?」


「ああ。クォーツアントは全部退治できた」


「このばしょにきたクォーツアントも?」


「ああ。……フォルが何体か斃してくれたおかげでな、大事には至らなかった」



 確かに皆の後ろの方には、クォーツアントの死骸が積み上がっている。その横では、こちらに手を振る剣士とタンク、回復要員のお姉さん方、そして、怪我を負って運ばれてきた魔法使い。


 よかった、なんとかなったみたいだ。



「フォル、大丈夫だとは思うが、一応回復魔法をかけてもらおう」


「うん」



 俺はバルトに抱えられて、魔法使いのお姉さん方のところへ運ばれる。



「フォルゼリーナ様、ご無事で本当によかったですっ!」


「本当に、クォーツアントを斃してくださって、助かりましたわ!」


「どういたしまして」


「すまないが、この子に回復魔法をかけてもらえるか?」


「もちろんです! 『ヒール』」



 お姉さんの杖から淡い紫色の光が滲み出し、俺の体に回復魔法が作用する。元々どこも悪くなかったけど、なんだかさっきよりもコンディションが良くなったように感じた。


 そして、バルトは俺を地面に下ろすと、ハンターたちへ宣言する。



「それでは、ギルドに帰還するぞ!」



 こうして、俺に思わぬ出会いをもたらした今回の公共クエストは、無事に目的を達成したのだった。



 2024/02/26 更新

 2024/03/22 更新

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