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俺の転生×転性ライフ  作者: 卯村ウト
第3章 ラドゥルフ編
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34 ぼくのかんがえた(嘘)さいきょうのけんじゅつ




「……ル、……!、…………フォル!」



 そんな声とともに、俺の体が激しく揺さぶられる。


 俺は重い瞼をゆっくり開く。

 目の前にいる人物に焦点が合わず、ぼやけていて誰なのかも判別不可能だ。



「フォル⁉︎ …………よかった、起きた!」



 次第に俺の視界がクリアになり、目の前の人物が徐々に判別できるようになる。

 そこにいたのは、さっきから俺に呼びかけていた声の主、シャルだった。



「わぷっ」



 思いっきり抱き着かれて、俺の喉から変な声が出た。


 ……ルーナに比べて息苦しくないな。


 いや、なんで俺はこんなことを考えているんだろう? 俺は今、自分でも不思議なくらい冷静だった。



「頭とか、体とか痛くない?」


「うん……。だいじょうぶ」


「ほんとに?」


「うん」


「そ、それならよかったぁ……」



 シャルは安心したような、それでいて少し疲れたような表情を見せた。



「ごめんね、手加減できなくて……」


「ううん」



 むしろ、シャルが手加減なしに戦ってくれたということは、それだけ俺の剣の技術がシャルに肉薄していた、ということを意味している。


 結局は負けてしまったが、これで、俺の今の実力も大体把握できた。それに、大した怪我もなさそうだし、結果オーライだ。



「とにかく無事でよかったよ」



 そう言って、シャルは俺を放すと立ち上がり、自分の木剣を拾い上げた。


 俺もシャルに続いて立ち上がろうとするが、全身を襲う倦怠感と頭痛でなかなか起き上がれない。

 やっぱり、魔力切れになるまで魔力を使い切ったからかな……。本当に全力を出し切った感じがして、清々しい気分になる。


 なんとかゆっくりと起き上がると、俺は近くに転がっていた木刀を手に取る。

 その瞬間、腕全体に伝わるずっしりとした感覚。


 こんなに重いものを、俺はさっきまで振るっていたんだ……。

 やっぱり、魔法って偉大だな。

 今の身体強化魔法無しの俺では、持ち上げることが精いっぱいで、振るうことなんて到底できそうにない。



「フォル、聞きたいことがあるんだけど」


「ん?」


「正直に答えてほしい。それ、どこの流派?」


「……」



 ついにこの質問が来たか。いつかは聞かれると思っていた。


 そりゃ当然だろう。フローズウェイ流剣術しか教えていないのに、ある日突然『木刀』とかいう見慣れないものを作って、訳のわからない剣術を練習しだしたのだから。しかも、先程手合わせをしてみたら、思わず本気を出してしまうほどの完成度の高さ。実用的ではない遊びの剣術とは、確実に違う。きっとシャルには、俺がそう映っているだろう。


 このときが来ることに備えて、あらかじめ、俺はどう答えるべきか考えていた。


 ここで正直に答えた場合、話の流れ上、ほぼ確実に俺が転生者であることをバラすことになる。

 しかし、できるだけそれは避けたい。なぜなら、俺が転生者だと相手に信じさせることは、とても困難だからだ。


 おそらくは、子供の世迷い言だと捉えられるだろう。そして、それが真実であるにもかかわらず、本当のことを言うように催促されるかもしれない。

 それに、俺が転生者であるという客観的な証拠は一切ない。


 また、可能性は低いが、転生者であると明かした場合のリスクもある。例えば、この国には転生者を忌避する習慣や宗教がある、とか。


 ということは、それっぽい嘘をつくことになる。

 真っ先に思いついたのは、バルトの書斎にあった本で独学で学んだ、という言い訳だ。外部からの情報源として俺が手に入れられるのは、基本的にバルトの本しかないから、信用されるだろう。


 しかし、これも却下だ。なぜなら、俺が確認した限りバルトの書斎に、そのような本は無いからだ。そのため、もし相手が俺の話を間に受けて、バルトの書斎を探したり、バルト本人に聞き込みを行ったら、すぐにバレてしまう。


 とすれば、相手が信じるような筋の通った他の理由は、これくらいしか考えられない。



「なまえはない」


「……名前は無い? どういうこと?」


「じぶんでかんがえた」



 俺が考えたことにしてしまえばいい。


 誰も俺の頭の中を覗けないのだから、嘘をついている証明ができるわけがない。


 デメリットとしては、少し、いや、かなり言い訳が苦しいってところか……。剣術未経験が考えたにしては、シャルに本気を出させるほど強いからな……。



「……じゃあ『刀』という木剣については? あれは何で知っていたの?」


「このりゅうはにあうものをかんがえたら、そのかたちをおもいついた」



 本当に苦しい。


 恐る恐るシャルの表情を見るが、『こいつ嘘ついてるな』と思っている感じはしない。



「じゃあ、技とか足捌きも?」


「うん、うまいやりかたをおもいついたから」



 俺の手柄ということにしてしまってマジで申し訳ない、七之宮! 許してくれ!


 シャルは俺の言い訳を聞き終えると、ほぅ、と息を吐いて。



「……まあ、フォルは天才だから、剣術を自分で開発してもおかしくないか」



 一応、納得してくれたみたいだ。天才って、ちょっと俺のことを買い被りすぎだと思うけど……。まあ、今はそれがプラスに働いているみたいだから、ツッコまないでおこう。



 ギュリュギュリュギュル~



 次の瞬間、俺のお腹が盛大に鳴る。

 今日は盛大に動いたから、消化器官の中がもう空っぽだ。


 シャルが窓の外の、赤く染まった空を見ながら呟く。



「今日はもうおしまいにしよっか」


「うん」



 俺たちは道具を片付けると、母屋へ向かう。


 こうして、シャルとの初めての手合わせは終わったのだった。



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