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俺の転生×転性ライフ  作者: 卯村ウト
第8章 帰郷編
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121 思いがけぬ出会い



 翌日。午前中、ルーナには仕事が無かったため、久しぶりに郊外で魔法の練習に付き合ってもらうことになった。もちろん、ジュリーも一緒だ。


 馬車で市街地の外まで移動する。そこから少し歩いて、魔法の練習場である野原に到着した。


 野原の様子は、二年前とほとんど変わっていなかった。強いて言うなら、多少草が伸びているくらいだろうか。


 しかし、魔法の練習には何ら問題はない。早速始めよう。



「『ロックパイル』!」



 地面に手をついてそう詠唱すると、少し先の野原からは、高さ二、三メートルほどの岩の杭が、ランダムに何本も出現した。


 これで準備完了だ。俺は浮遊魔法で宙に浮くと、続けて詠唱する。



「『マニューバ』」



 次の瞬間、俺はぐんぐんと加速していく。このままでは真っ直ぐ遠くへ行ってしまうため、減速して進路を変え、野原の上空を周回する。


 目線を地面に向けると、事前にお願いした通り、ルーナが『ロックウォール』を発動して、自分とジュリーを保護しているのが見えた。



 よし、早速訓練開始だ。


 俺は少しスピードを上げると、地面へ『ファイヤーボンバー』をまず一つ放つ。


 それは、真っ直ぐ地面へ落ちていくと、岩の杭の一つにぶつかる。火球が当たったそれは、破片を撒き散らして少し低なった。


 俺は『マニューバ』を細かく調節して上空をグルグルまわりながら、次々と火球で岩を破壊していく。


 かなりスピードが出ているので、正確に岩に当てていくのはなかなか難しい。だが、これが上達すれば、相手の攻撃が届かない高度やスピードでの一方的な精密攻撃が可能になる。


 しばらく続け、全ての岩を破壊した後、俺は着陸する。



「ふぅ……」



 かなり魔力を使ってしまった。とはいえ、残りは半分くらいある。もう一セットできるだろう。


 すると、『ロックウォール』が解除され、二人が出てきた。



「見ない間に、またものすごいことになっているわね、フォル……」


「え、そうかな?」


「そうだよ……クリークでも、いつもこういうれんしゅうしてるの?」


「ううん、いつもは『魔力視』のれんしゅうばっかりしてる」


「魔力視もできるようになったの?」


「まあ、だいたいね」



 『魔力視ができる』と一括りに言っても、いくつかの段階がある。


 一番未熟な段階では、生物の体外に放出されている魔力の存在しか認識できない。それも、強い魔力だけだ。

 しかし、練習を重ねると、魔力が放出されていない場合でも、体内にある魔力量を推定できたり、弱い魔力でも感じ取れるようになったりする。また、魔法発動直前の魔力の変換を観測できるようになることで、相手が発動しようとしている魔法の系統もわかるようになるのだ。


 現在の俺の魔力視レベルは、真ん中くらいといったところだろう。まだ体外に放出される魔力しか認識できないが、発動しようとしている魔法の系統はかなり判別できるようになった。

 今は、魔力を放出していない生物の体内の魔力量を推定する技能を身につけている途中だ。実際、これはかなり難しい。でも、上の方の先輩やジェラルド先生、それにジュリーだってできているのだから、俺にだって練習すればできるはずだ。



「んじゃ、もう一セットやってくるね」



 俺は再び『ロックパイル』で岩の杭を地面から生やすと、飛び立って爆撃し始めるのだった。






 ※






「はぁ……はぁ……はぁ……」


「おつかれさま、これ、水」


「ありがとう」



 魔力切れになった俺は、野原に仰向けに倒れ込んでいた。そこにジュリーが水を持ってきてくれる。


 水を飲んで少し気分が楽になったので、俺は起き上がった。



「今、何時くらい?」


「十一時くらいね。まだ練習する?」


「ううん、もういいや」



 ルーナの問いに、俺は横に首を振る。魔力が満足に回復していないのに練習してもあまり意味がないからな。それに、今は魔力電池を持ってきていないので、手っ取り早く回復する手段が無い。



「ところで、フォルってまりょくりょういくつ?」



 ジュリーそう聞いてくるが、俺はすぐには答えられない。そういえば最近全然測ってないな。


 普段、学園にいるときはほぼ毎日同じようなトレーニングをしていたから、魔力量が一次関数的に増えていると仮定すると、今はだいたい九千くらいになるのかな?


 すると、ルーナが提案してくる。



「ハンターギルドで測ってもらいましょうか」


「うん」



 というわけで、俺たちは馬車を拾うと、ハンターギルドまで移動した。


 久しぶりに訪れるハンターギルドの中は、相変わらずの賑わい具合だった。この様子から、王都で流行り病が広がっていると想像するのは難しい。



「ここがハンターギルド……」


「ジュリアナちゃんは、ハンターギルドに来るのは初めてかしら?」


「はい……ちょっとこわい人が多いです」



 気持ちはわかる。魔物狩りや危険地帯での採集など、ハンターの仕事は危険なものばかりだ。そのため、必然的に腕の立つ人ばかりが集まり、その中にはガラの悪い人も多数含まれる。


 実際、ギルドではしばしば酒に酔ったハンター同士の喧嘩が起こるらしい。そんなときは、たいてい他のハンターや警備員がすっとんできて止めるのだ、とバルトが言っていた。



「ジュリーはハンターギルドに入る気はないの?」


「うん……だって、これから先、まものをたおすつもりなんてないから」



 確かに、王都で、それも何重もの壁の内側で生活していたら、魔物を斃すどころか、見る機会も無さそうだ。生活に関わらないのなら、わざわざ加入する意味もない。


 俺は受付のカウンターで、魔力量の測定を申し込む。そして、お金を払うと、カウンターの上に出した機械に手を乗せるように言われる。


 昔は抱っこされないとできなかったのに、今なら少し背伸びをするだけで届いた。成長したなぁ、俺。


 そして、成長したのは身長だけではない。



「こちらが結果です」



 そうカウンターの上に差し出された紙には、魔力量の測定結果が記載されている。その数値は……。



「九千七百五十五か……」


「すごい、フォル……」


「一万まであと少しね……」



 ついに大台が見えてきた。この調子なら、あと二、三ヶ月で一万に到達するだろうな。


 一万を超えれば、上級魔法のもう一段階上の特級魔法の発動も視野に入ってくる。このランクは、人が詠唱して発動できる魔法の上限だ、と学校の魔法学では習っていた。


 いずれ、特級魔法も使えるようになりたい。そんな魔法を使う自分を想像して、俺の胸は高鳴っていくのだった。



 ギルドを出ると、ちょうど正午を知らせる鐘の音が響き渡った。



「じゃあ、私は仕事に行ってくるわね。そこの乗り場から馬車に乗って帰るのよ」



 そう言って俺たちに馬車代を渡すと、ルーナは州庁舎の方へ歩いていってしまった。



「じゃあ、帰ろうか」


「うん」



 というわけで、俺たちは馬車乗り場の方へ歩いていこうとしたそのときだった。


 急に死角から誰かが飛び出してきた。咄嗟のことで避けきれず、俺はその人にドンとぶつかってしまう。



「わ!」


「おおっと、ごめんなさ……って、フォルじゃん!」



 俺の名前を呼ぶ聞き覚えのある声に、俺は思わず顔を上げ、次の瞬間、驚きの声をあげる。



「レイ先ぱい……⁉」



 そこにいたのは、実習施設に行ったはずのレイ先輩だった。



 2024/09/04 更新

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