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 リゲルは1万ある兵をまず5つに分散させることにした。番隊は東の海から迂回して北部に入るよう指示をする。

 2番隊はトンネルを掘るよう指示、3番隊は武器の調達、4番隊は冷山を越えるよう指示をした。

 5番隊は適宜他のチームのサポートへと回るよう遊軍としての立ち位置を各隊に指示を出した。


 冷山を越えるよう指示した4番目の隊は、更に4つに分け、冷山を越えるルートを細分化した。


 4番目の隊については山越えをした方が簡単というのが一番時間を短縮できるからだ。だけど、襲撃を受ければ一気に2千の兵を失う恐れがあるから、500の隊で分けた。これにより、内通者がいた場合炙り出せるし、単純に見つけにくくなるからだ。


 ポルクスは地図を見て、4つのルートに印をつけて行く。

「で、リゲルと僕は5番目の隊に置いた理由は、他の隊だと動けなくなるし、地下道を作るうえで、体力の温存は必須。だからこそ、動きの少ないこの部隊にいる」


 リゲルとポルクスは焚き火の側で、昼に採ったウサギの肉が焼けるのを待っていた。


「山越えしている4番隊と海辺からの1番隊に防寒具をほとんど渡してしまったし、2番隊と5番隊からは文句で始めるぞ」

「そうだな。早く3番隊が武器と防寒具を運搬してくれるのを待つだけだ」


 リゲルが肉の様子をうかがう。ちょうど良い頃合いのため、リゲルは地面に突き刺した串を抜き、ウサギの肉をポルクスに充てがう。


「複雑な気分だよ」


 ポルクスがそう言ったのは、ポルクスは動物を使って情報収集を行なっている。故に、ポルクスもカルトスも基本的には野菜や果物をメインに食べている。

 しかしここでは豆腐や動物の父はあまり手に入らない。それ故に、うさぎ貴重なタンパク源なのだ。


「嫌なら私が食べる」

「ごめんよ」


 ポルクスはポツリと謝り、うさぎの肉を食べた。普段食べている食物よりも硬いのか、少し眉を寄せていたが、食べ進めるうちに慣れてきたらしく、寄せていた眉は緊張がほぐれていく。


「カルトスから連絡は?」

「ないよ」


 北部の出兵の3日前から、カルトスから連絡が途絶えていた。それから、およそ10日ほど経過しているので、かれこれ半月ほど音沙汰がない。


「そうか。ご両親は?」

「リゲルの用意してくれた屋敷で、薬を売っているみたい。北部は痩せこけた土地だけれど、良質の薬草や、漢方がよくとれるから、北部を離れる前に採ってきたみたい」

「それは、良い知らせだ」


 リゲルはウサギ肉を食べながら、これからのことを考える。


 北部には未だに土地を離れないものがおり、それ故に派手に雪崩を起こすことができないでいた。

 かと言って、彼らは作物も底を突きかけているだろうが、それでも堪えている。


 それはきっと、鳳国に亡命しても、自国のそれも自分達が暮らした家屋を自ら破壊しなければならないことを理解しているからだろう。


 だからこそ、リゲルや兵士が少しでも早く、到達する必要がある。


 リゲルはうさぎ肉を食べ終わるとすくっと立ち上がる。

「さ、地下道を作るぞ」


 前向きなリゲルの様子を見て、ポルクスがニヤリと微笑み、ウサギ肉を持って隣を歩く。



 ☆彡☆彡☆彡


 ポルクスが地下道を作ろうとしている場所は冷山から少し西に離れた位置にある。


 ポルクスは水を8割ほど入れた瓢箪(ひょうたん)を100個ほどを地面に置いた。

 奇妙なのが、瓢箪の開け口を地面に突き刺し、通常使う向きとは真逆の状態にしていることだ。


「水が沸騰して水蒸気となるときの熱量(エネルギー)を使う。リゲル、思いっきり炎を出してくれる?」

「わかった」


 リゲルは左手を瓢箪に向け、フーッと息を吐く。

 すると、リゲルの左手から炎が()ぜ、瞬きをする間に瓢箪もろとも燃え尽くした。


 それと同時に爆発音がなり、瓢箪を置いていた場所は大きな穴となって土や瓢箪もろとも燃えて吹き飛んだ。


 リゲルはあまりの衝撃に固まっていると、ポルクスがリゲルの肩をポンポンと叩く。

「うわあ、思いの外吹き飛んだね。これは作業早く終わりそう」


 ポルクスはネズミのサイズに変化する。


「何なのだ! これは! 吹き飛んで20尺はありそうなほど深い穴ができたぞ!」

 リゲルが珍しく動揺を隠せないでいる。


「あ、これ? 水素爆弾。じゃあ、僕中の様子見てくるから、同じ要領でやっていこう。


 ポルクスの声が意気揚々としていた。

(とんでもなく危険な人間だ)


 リゲルは絶対にポルクスを敵にまわすまいと誓った。


 水素爆弾で穴を開けたい方向に瓢箪の口を土に入れ、リゲルが炎を出すと破壊され、穴が広がる。

 しかし、横に穴を広げる際、リゲルにも炎が来ないように、配慮しなければならなかったので、これが割と大変だった。


 リゲルが中に入って炎を出すと、確実に被害に遭う。故におよそ10尺ずつ等間隔で終着点に着くまで縦に穴を掘り、地下道の縦と横に炎で燃やす。

 横に燃やす時は上からリゲルの炎を充てがうので、垂直に穴を掘るよりも難儀していた。


 終着点まで縦穴を作ったところで、リゲルを穴にいれ、思いっきり炎を出すようポルクスから指示され、リゲルは渾身の一撃で炎を出した。

 すると、終着点まで等間隔で掘った縦穴から爆音と共に水蒸気と煙と土と炎が湧き上がった。


「リゲル! 早く出るよ」

 鳥の姿になったポルクスが、ポカンとして疲れ切っているリゲルを足に掴んで空高く飛んでいく。


 リゲルのいた穴からも数十秒遅れで炎、水蒸気、外へ飛び散った。

「死ぬところだったぞ」

「喋れてるなら大丈夫だね。縦穴間の隙間にある壁のような岩や土を根こそぎ削るにはこの方法が1番早かったから、ごめんね」


 ポルクスは冷山近くの川辺に降りると、丁寧にリゲルを下ろし、自身は鳥の姿のまま川に入った。

「火傷してるのか?」

 リゲルはポルクスの質問に応えない。

「残らないように冷やしてる」


 リゲルは自身が放つ炎の影響を受けにくいのか今まで火傷をしたことがない。

 だが、今回は炎だけでなく、水蒸気や瓢箪の破片、熱した岩、土、石が飛んでくる可能性があるから、ポルクスがリゲルを避難させた。

 その過程でポルクスは怪我をしてしまった。

「すまない」

「この程度の火傷で済んで良かったよ。普通なら命を落とすレベルだが、羽毛で覆われていて直接皮膚の熱傷は免れた。しかも、今冷やしているから恐らく問題ない」

「だが」

「リゲルが官吏の学校で、手を貸さなかったら僕たちは恐らく学校を追い出されて、とっくに死んでいた。リゲルが屋敷を貸してくれたから両親は生きている。だから、気にするな」


 ポルクスは人の姿に戻り、川の中に立っていた。右腕が真っ赤に腫れ上がっていて一部皮膚が爛れていた。

「男の裸を見る趣味があるのか? すけべだな」

「ない」

 リゲルはポルクスに背を向け自身の上着を脱ぎ、地面に置く。

「風邪をひくぞ」

「ありがとう」


 リゲルは長袖の肌着の姿のまま、地面に胡座をかく。

「他の者は巻き込んでいないことを願うばかりだ」


 ポルクスは川から出るとリゲルが置いた毛皮でできた服を纏う。リゲルの腰までの上着だが、ポルクスが着ると、肘までの長さとなった。

「避難は済んでるよ。そもそも、あそこは人が寄り付きにくいし、動物達も避難するように伝えていたし、見張りの動物も置いてたから問題ないよ」

「そうか、それなら良かった」


「中に煉瓦を敷き詰めて頑丈にしないといけないけれど、それは後で補正すれば良い。奇襲をかけるための道としては出来上がった。ありがとう」

「あんな爆音で周囲に勘付かれやしないか心配なのだが」

「人通りが少ないからその可能性は最小限にしてる。でもまあ間者がいたら、それはそれで好都合だから」


 リゲルがポルクスの言葉を考えていると、ポルクスはリゲルの側に近寄り馬の形になった。リゲルを背負うと首を屈めるが、リゲルは首を横に振る。

「私が運ぼう。小さくなってくれ」

 

 リゲルが言った通りポルクスはうさぎの姿になり、リゲルの腕の中に収まることにした。

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