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専属魔女は王子と共に  作者: ちゃろっこ
いざ総力戦へ
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日が傾いて夜の帳が降りる。


月の無い闇夜では視界が利かない人間は余りに不利であった。


松明は焚かれているが、アリオクの真っ黒な容姿は余りにも見えづらく紅い瞳を頼りに剣を振るうしかない。


同時に守備についているシルフィーもアリオクの指先が見えず攻撃のタイミングが読めない。


魔素を見れば居場所は見えるが細かい輪郭までは分からないのだ。


「弓隊は夜明けまで待機!!

剣士隊は引き続き粘れ!!!!

手を止めるな!!!!

夜明けまで耐えろ!!!!!!」


キースの怒号に騎士達がおお!!!!と返す。


必死なこちら側とは違い、アリオクの顔は変わらない。

斬り掛かったガウルを躱し、オーバーコートをはためかせながらくるりと回ると長い脚を繰り出した。


刃でその足を受け止めるがその衝撃を受け流しきれず、地面を抉りながら吹き飛ばされた。


ガウルは呻きながら身を起こし、口の中に貯まった血を地面に吐き捨てた。

その量の多さから、内臓に損傷があったのだろうと分かる。


「…っつっ…てぇな畜生…」


「人間の癖に中々頑丈だねえ」


「…嬉しく…ねえっての」


アリオクの上から目線の褒め言葉を聞き流しながらガウルは血の着いた口元を袖口で拭う。


その次の瞬間。

シルフィーの右側で爆発が起きた。

慌てて身体を滑り込ませるが間に合わず、足元に転がった遺体に思わず悔しさから目を伏せた。


守ると誓ったのに。

それすらも上手く出来ないのかと。


せめて動きさえ見えれば。

せめて何かで照らせたら。


火球でも打ち上げようかと思うが今のシルフィーでは保って1時間だろう。

魔素の回復が遅い今、纏っている魔素では朝まで照らすなど絶対に無理であった。

いやフルにあったとしても夜明けまでずっとこの広い戦場を照らすなど不可能だった。


しかも明るくした所でその後に突然暗くなれば余計に見えなくなってしまう。

諸刃の剣にも程があった。


どうする…と唇を噛み締めたシルフィーの目の前に、フワリと白い光の玉が浮かんだ。


周囲を見渡すと無数に浮かんだそれは周囲を照らし、地上から3m程の高さまで上がるとそこに留まった。


これは一体なんだ。


白い魔素で思い浮かんだのはミリアだったが、彼女の魔素の量でこの量の光源が生み出せる筈が無い。


状況を理解しようとくるりと周囲を見渡すと睨み合うレイモンドとアリオクの姿がそこにはあった。


まさかこの光源を発生させたのはレイモンドなのだろうか。


「…へぇ。

さすがハイエルフだね。

光属性も使えるんだあ???」


「……」


「まあそりゃあそうだよねえ。

魔術の長だもんねえハイエルフ。

半端者でも出来て当然かあ」


ちょっとだけびっくりしちゃったよと笑うアリオクに言葉を返さず、レイモンドは氷剣で斬り掛かる。

そんなレイモンドの横で剣を構えながら脇腹を抑え、眉間に皺を寄せたガウルが口を開いた。


「照らせるんだったら早く照らせっての…」


「…ごめん。

私の覚悟が足りなかった」


「はあ?

覚悟?」


「主属性を全部差し出す覚悟」


「なんだそれ…」


「まあこれだけの光源出せばねえ。

朝までとなるとねえ~。

命を差し出す様な物だからねえ。

そりゃ怖いよねえ怯えちゃうよねえ」


氷剣を躱しながら唄う様に言うアリオクの言葉に、もう一度ガウルはなんだそれ…と呟いた後、再びアリオクに斬りかかった。


「てめぇ後で一発殴らせろよな!!!!」


「本当にごめん。

いくらでもどうぞ」


「顔面に行かせろよな!!」


「私の取り柄がなくなるなあ…」


「はっ!!!!

ざまあみろ!!!!

モテなくなっちまえ!!!!」


「ん、ごめん」


「なんで怒られてるか分かりもしねえで謝んじゃねえよ!!!!」


「……」


「怖いなら怖い位言えや気持ち悪ぃ!!!!

出来ねえ事まで1人ですんじゃねえよ!!!!

てめぇ1人で何でも背負う気ならずっと1人で生きてけや!!!!!!

声に出す事を覚えろや!!!!

声に出して叫ばなきゃ誰もてめぇを助けてなんかやれねえんだよ!!!!」


「……」


「キース!!!!!!

今の内に松明を増やせ!!!!!!!!」


「了解だ」


「…準備が出来るまでの間だけ頼むぞレイモンド」


ツンっとそっぽを向きながら長剣を構えたままガウルが呟く。

レイモンドもアリオクに斬りかかりながら小さく頷いた。


自分達は個人戦ではない。

これはあくまで総力戦なのだ。


全員が全員を庇わねば勝てないのだ。

1人で勝てないからこその総力戦なのだ。


シルフィーもまた、自分が守る事の意味を教えられた気がした。

1人でやろうとしては駄目なのだ。

1人でこの状況を打破しようとしては駄目なのだ。


自分が守っている騎士達を信じる事こそが一番大切なのである。

そして隣を歩む仲間を信じる事だけが唯一の救いなのだ、と。




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