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専属魔女は王子と共に  作者: ちゃろっこ
いざ総力戦へ
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パサリと黒いオーバーコートが風に揺れる。


気だるげな立ち姿で空に浮かぶ男は興味深そうに紅い瞳で周囲を見渡した。


「君達が集まった気配がしたから、そろそろ準備出来たのかなあ~???って思って来たんだけど。

当たってるう???」


「……」


キースは無言でアリオクを睨むと片手を上げた。

騎士がぐるりと取り囲み戦闘態勢へと入る。


シルフィーも掌に魔素を集めた。

身を屈めいつでも飛び出せる様にと風の魔素を身に纏う。


「人間てさぁ、そのままだとすぐ死んじゃうからさあ過去の大戦でも準備が整うまで待ってあげてたんだよねえ。

なんてフェアプレイなんだろうねえ魔族って」


「…長く遊ぶ為だろうが。

玩具で遊ぶ為の癖に何がフェアプレイだ」


「まあその通りだけどねえ~。

気長に待ってあげるこちらの優しさに気が付いてくれても…」


最後まで語ること無くアリオクの姿は視界から消えた。

次の瞬間アリオクのいた場所に嵐の様に弓矢が降り注ぐ。


「…奇襲ねえ。

まあ弱い者が考える手としては悪くないよお」


そう言って再び現れたアリオクはニタリと笑みを浮かべた。


「圧倒的な戦力差がある場合、そこを打破する為には不意を付くか、大勢で取り囲むしかないからねえ~。

だから戦法としては悪くないよお」


でもねえ…とアリオクは長い舌でペロリと唇を舐めた。

その右手が微かに動かされたのを視界に捉える。



ーーーっ見えた!!


飛ばされた魔素にぶつけるようにシルフィーは魔素を投げ付ける。


それらはアリオクを取り囲んだ騎士の目の前でぶつかり合い、爆発を起こした。


激しく土埃が舞い上がり視界を奪った。


口の中に入ったそれがジャリッと不愉快な音を立てる。


だがそんな事を気にする余裕も無く、シルフィーは自分の掌を見詰めた。


前回は見る事さえ叶わなかったが、今は目も魔術の発動も追い付いた。

これが魔族の力なのだろう。


これならいけるかもしれない。

これならば抗えるかもしれない。


そう思い顔を上げるとこちらに紅い瞳を向けるアリオクと視線がかち合った。


「あぁ、穢れの精霊ちゃんかあ。

半魔なのに見える様になったんだねえ。

まあ私がしてあげたんだけど」


「……ありがとうございます?」


「うんそうだねえ。

ちゃんとお礼を言える子は嫌いじゃないよお」


「………」


「でも勿体ないねえ。

せっかく良い血があるのに君では私には勝てない。

こんなゴミ共を庇いながら勝てる訳がないんだよお」


残念だよねえと言いながらアリオクは笑う。


「まあ良いかあ。

じゃあ始めようねえ。

私から動こうかあ???

それとも君達から来るかい???」


アリオクの言葉に騎士達が剣を構えジリッと詰め寄る。

その光景にアリオクは腕を組んだまま微笑んだ。


シルフィーの脳裏に前回この塔で魔獣に取り囲まれた時の光景が流れる。


前回は独りであったが、今度はこちらが群衆だ。


呼吸を合わせろ。

怯えを見せるな。

目を逸らすな。

獲物を喰らい尽くす事だけを考えろ。

そして呼吸があったその瞬間。


一斉に飛びかかるのだ。


ザッと言う土を踏み締める無数の音が同時に響く。


それを合図に騎士達が一斉に獲物であるアリオクに向かって斬り掛かる。


だがそれを避ける事すらせず、その中心でアリオクは指先を動かした。


爆発が起こり後方の騎士は跳ね飛ばされ、手前の騎士達の首がごとりと地面に落ちる。


手応えなど何もない。


ただただ圧倒的な力の差であった。


アリオクがつまらなそうに目を細める。




その瞬間、アリオクの鼻の数ミリ前を氷の刃が掠めた。


その刃は彼の前髪をパラリと切り、それを寸前で躱した男の身体を一瞬にして炎が呑み込んだ。


そして次の瞬間、前後から同時に刃が振り下ろされる。


アリオクはぶわっと空に飛び上がった。


そして魔素に少しだけ溶けた肉体を修復させると、彼はちらりと視線を動かした。




氷の刃を構えたシルフィー。


炎の魔素で出来た鳳凰を従えたレイモンド。


聖水をかけた剣を構えるガウル。


ガウルの正面で聖剣を構えたキース。




その光景にアリオクは嬉しそうに笑った。


やはりこうでなくてはつまらない。


簡単に殺されてくれるなど退屈しのぎにすらならないのだから。


その為にわざわざ準備が整うのを待ってやったのだから。


「あはははは。

…いいねえ、ゾクゾクしてきたよお」


睨み付けるシルフィーを嘲笑うかの様に、彼はそう言って愉しげに笑った。


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