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専属魔女は王子と共に  作者: ちゃろっこ
いざ総力戦へ
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ミリアとアナベルが塔へと入る。

するとキースがガウルに木箱を手渡した。


「これが貴様の分だな…。

大事に使えよ」


「おっありがと」


ガウルは木箱を受け取ると地面に置き中から小瓶を取り出し胸ポケットに何本か仕舞い始める。

中にはまだまだ沢山の小瓶が並んでいた。


「なんすかそれ」


「んあ?

聖水だけど」


「えっいっぱい過ぎません?」


「実際大戦を経験した国からしてみたらこれ位は必要だってシュタール帝国側から送って来たんだよ。

つかこれだけじゃねえぞ。

騎士1人に付きこの数だ。

しかも予備も潤沢にある」


「まじすか!?

めちゃくちゃ太っ腹じゃないすか」


「…レイモンドのお陰だな」


「……え?」


「貴様のゼッペルでの魔獣殲滅戦への礼と謝意らしいぞ。

だから貴様の手柄だ」


キースの言葉にレイモンドは唇を噛み締める。

碧い瞳に薄らと膜が張った。



ーー無駄じゃなかったのだ。



本当に小さな変化しか得られなかったけれど。


本当に小さ過ぎる変化だけれど。



ーー歩んだ道は決して無駄では無かった。



胸の奥から込み上げてくる物が抑えきれなくて。

喉の奥の震えが治まらない。

強く噛み締め過ぎて血の滲んだ唇の隙間から堪えきれない嗚咽が漏れた。


何もかも無駄だと絶望したあの日々も。


自分が死なせてしまった彼等の犠牲も。


決して無駄なんかじゃなかった。


ーー生きてきた道は確かに意味を成した。


それが堪らなく嬉しかった。


そんなレイモンドの頭をキースがグシャグシャと掻き回した。


「泣くな。

男だろうが」


「ーーーっ。

泣いて…ません…っ」


俯き肩を震わせる弟の頭を掻き回しながら兄は優しい顔で見詰めた。

キースだって嬉しかったのは同じだった。

シュタール帝国からの返信を見て、本当は1人で泣いてしまった位には。


そんな事を弟に言ってやる気はさらさら無かったが。


「…貴様の情緒不安定リストに涙脆いも追加だな」


「何ですか…そのリスト…っ」


「最近の貴様の挙動不審を纏めたリストだ。

兄上との娯楽品だな」


「趣味が悪いです兄上っ。

しかも何でアイザック兄上とまで共有して楽しんでいるんですか!?」


「単純に面白いからだ。

珍獣の成長観察記録みたいな物だな」


「弟の扱いが酷いと思いませんか?」


「玩具に丁度良い行動をする貴様が悪い」


「もうやだこの糞兄貴共…」


レイモンドが項垂れるとさっさと行くぞとキースが歩き出す。


「…まっ最近の貴様は嫌いじゃないがな」


「玩具としてでしょう」


「人の顔も覚えない上に、何も興味を持たず、生きる事すら諦めている人間を好きになれなかっただけだ。

玩具にする価値もない」


「……なるほど」


「ほらさっさと行くぞ。

目撃情報はあったんだ。

いつ来てもおかしくはないんだぞ。

…ほら貴様もだシルフィー嬢。

今貴様何を懐に入れた?」


「…………エール」


「出せ」


「嫌です」


「出せ馬鹿者!!!!」


「嫌です!!!!!!」


ギャイギャイと騒ぐシルフィーとキースを眺め思わずレイモンドは笑ってしまった。


この封印の儀に参加して良かったと、今ならそう思えた。


これが生き延びた意味だったのだと。


この為に生きたのだと。


この先もし死んでしまうとしても悔いなどないと思える程に。


それほどまでに幸せだった。




「うわぁお。

いっぱい集まったんだねえ。

弱いのばっかりい」


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