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専属魔女は王子と共に  作者: ちゃろっこ
いざ総力戦へ
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キース達との集合場所は、手紙で打ち合わせた結果マシュガルであった。

例の塔周辺でアリオクの目撃情報があったのだと言う。

恐らく来いと言う意味でわざと姿を目撃させたに違いないだろう。


だがこちらとしても封印の儀をしたあの場所ならば街から離れている為に戦いやすい。

そこだけは有難かった。


「ガウルがさ謝っておいて欲しいって。

直接だと照れるから」


「謝る?」


「魔術師を嫌いだって言った事。

訂正するって」


「んあ?

なんでっすか?」


「ガウルはね、父君が魔術師だったんだって。

身体が弱い母君を残していきなりいなくなったらしいんだけど」


「ほうほう」


「それを棄てられたんだと思ってたんだってさ。

…でも実際はゼッペルの殲滅戦に参加してたんだって。

私からの手紙を読んであまりにも時期が被ってるから、母君に会いに行ったら話して貰えたらしい」


「………………それって」


「そう。

私が死なせてしまった1人だ」


レイモンドは馬を走らせながら少しだけ目を伏せる。

だがすぐにまた前を向いた。


「……誇りに思うってさ」


「……え?」


「自分達の国を、自分達の国の未来を、自分達の国の成り立ちを、自分達の名誉を守る為に死んだ父を。

誇りに思うって」


「……騎士の考え方って高潔過ぎて意味分かんないっす」


「…そうだね。

そして、同じ様に国を守れる立場になった事を幸せだと思うって。

ただ理不尽な怒りをぶつけてしまったフィーには謝っておいて欲しいって」


シルフィーは歯を食い縛った。

自分ならそんな事言えるだろうか。

大切な家族が死に、その理由が国の為などと受け入れられるだろうか。

正しいのだと。

誇りだなどと。

自分は言えるだろうか。


彼は間違いなく騎士なのだ。

国に忠誠を誓った、紛うことなき高潔な騎士なのだ。


そんな彼と共に闘える自分こそ、幸福だとすら思えてしまう。


「私…酷い事を言いました」


「…フィー?」


「私は魔術師として、家族愛なんてないと。

会いたいとなんて思わないとそう言いました」


「……」


「私は彼の父親を侮辱しました。

誇りを持って戦った彼を侮辱しました。

そして彼を信じたいと願ったガウル様を傷付けました」


「……」


「知らなかったから傷付けて良いなんて、そんな話はありません。

知らなくとも傷付けてしまったなら、それは罪です。

知らぬ間に傷付けたなら、己の無知を責めねばなりません」


紅茶色の瞳に後悔の色を載せ、唇を噛み締めてそう言ったシルフィーの頭をポンとレイモンドは撫でた。

その手は酷く優しくて余計に心が重くなる。


「なら謝れば良いんだよ。

フィーの行為に悪意が無かったとは言え、君が誰かを傷付けた事を悔やむのならば謝ったら良いだけだ」


「……はい」


「…そんな情けない顔しないの。

謝罪出来ると言うのはとても幸せな事なんだよ。

誰かを許し、許される機会があると言うのはとても特別な事なんだ。

それすら叶わない事が沢山ある中で、その機会を得られた事は有難いと思って良い」


「……」


その言葉にシルフィーは再びギュッと唇を噛み締めた。

気が付いたのだ。

立場上レイモンドは謝る事すら許されていないのだと。


謝ると言う事はガウルの父の死が間違っていたと言う事になってしまうから。

彼の誇りに傷を付けてしまうから。


本当にその機会が欲しいのは彼に違いないのに。

それすらも許されないのだ、と。


「…私より」


「ん?」


「…私よりその機会をレイモンド様にあげられたら良いんすけどね」


「フィー?」


「そうすれば…少しだけでも軽くなりませんか?」


ーーその背に乗っている重過ぎる罪が。

そう意味を込めて呟くと、レイモンドは碧い瞳を瞬かせた後、ゆっくりと首を横に振った。


「…ありがとう。

でも大丈夫だよ。

この荷は私が負うべき物だから」


「…それじゃあいつか潰れますよ」


「でもこれは降ろしたらいけない物だからね。

だけどそうだね…。

じゃあ私が潰れそうになってたらフィーは笑ってよ」


「それ私が鬼畜みたいじゃないすか」


「違うよ。

多分私はねフィーの笑顔が好きなんだ。

だから例え潰れそうになったとしてもフィーが笑っていてくれたなら頑張れる気がするからさ」


「……なんすかそれ」


セリフが重たすぎると苦笑いを浮かべるシルフィーにレイモンドは柔らかな笑みを浮かべる。

その笑みがあまりにも綺麗過ぎて、シルフィーは思わず視線を逸らしたのだった。

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