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専属魔女は王子と共に  作者: ちゃろっこ
渇望した物は
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翌日。

レイモンドの手紙を受け取ったキースは暫く頭を抱え、長過ぎる溜息を吐いた。

聖水が必要だと分かった所でどうやって手に入れろと言うんだと、目の前にレイモンドがいたら怒鳴っていたに違いない。

簡単に手に入れられるはずがない事はレイモンドが一番分かっているだろうと。


「……シュタール帝国に借りは作りたくないんだがなあ」


「んあ?

人間の国?

仲悪いのか?」


「…貴様騎士団所属なのに知らんのか?」


「全く知らねえ」


「そんなはずは…。

ガウル、貴様所属は?」


「ジンファ辺境伯領の東部国境砦」


「あぁ…なるほどな。

魔族の国の国境沿いだったのか。

そちらなら知らなくても不思議ではないな」


「だから何をだよ」


「王都の騎士団ならばシュタール帝国の名前を聞くだけで激怒する位には仲が悪い」


「えっなんでだよ」


「………」


「えっなんで黙るんだ?」


「……いや、何から話せば良いのかと思ってな」


キースは眉間に皺を寄せ目を閉じた。

思い出したくもない記憶だった。

思い出すだけで反吐が出る位に。

ガウルはキョトンとした顔をしているが。


「……すまない。

俺も中立な立場で語ってやれそうにないんでな。

聞きたいならレイモンドから聞け」


「レイモンド?」


「…あいつは当事者だ。

あいつに聞くのが一番正確な情報が得られる。

それかゼッペルの死の行軍について調べてみろ。

理由が分かる。

…まあ資料は秘匿されてるから調べ様もないがな」


「…死の行軍って時点でヤバい奴だろそれ。

資料も隠される位の内容の上に第三者のあんたですら口にするのも嫌な話なら、当事者なんて聞いても話しそうになくないか?」


「…さあな。

あいつに俺は話せと言った事がない」


ただその詳細は知っていた。

ゼッペルから戻ったレイモンドはその一部始終を報告として語ったのである。


淡々とただ事実だけを彼は語った。

色を失った瞳で、痩けた頬で、欠けた鎧を纏ったまま彼は語っていた。

正に死んだ目とでも言うのだろうか。


その瞳には生気など欠片も無かった事をよく覚えている。


「まあ手紙で聞いてみるかな…」


「好きにしろ。

とりあえず私もシュタール帝国に文を書かねばならん。

過去の大戦については調べは済んだのか?

対抗策があるかもと言っていただろう」


「…魔族にはな。

だけど4眷属に関しては話が別だった。

方法は1つしか思い付かねえ」


「1つ?」


「あぁ…。

歴史の繰り返しだな」


「…………総力戦か」


「…」


キースの問いにガウルは無言で小さく頷いた。

キースは組んだ両手に額を押し当て目を閉じる。

そうしなければ無理だと分かっていた。

けれどそれだけはしたくなかった。


深い溜息が口から漏れる。

自分はやはり根っからの文官なのだろう。

騎士に死にに行けと言える程に精神的に強くは無かった様だ。


「……分かった。

兄上に手紙を出しておく。

お前も大事な人がいるなら今のうちに手紙を出しておけよ」


「不吉な事言うんじゃねえよ」


「過去の大戦について調べたなら分かるだろうが。

希望など持つだけ無意味だ」


「いや心折れてんじゃねえかよ。

元気出せって」


「…貴様分かってないのか?」


「あん?

何をだよ」


「あの封印の儀が魔王産みの儀式だと昨日分かっただろうが。

俺達が4眷属の役だとも。

4眷属が真っ先に殺すとすれば、魔王を軽視し4眷属を勝手に名乗った我々なんだぞ」


「………あっ」


漸く気が付いたのか遠い目をするガウルにキースは呆れを込めた視線を向ける。

何故こいつは楽観視など出来るのだろうかと。


「…アナベル嬢やミリア嬢にも心残りがあるなら解消しておく様に伝えておけ」


「あいつらは避難して貰えば良いんじゃないのか?」


「ミリア嬢はともかくアナベル嬢は魔王役だぞ。

必ず狙われる。

ミリア嬢も儀式に参加したんだ。

無事に済むとは思えん」


「…あーなるほど。

えっそれ俺が言うのか?」


「どうせこの後書庫に行くんだろう?

ついでに伝えておけ」


「いやついでに言う話じゃねえだろ…」


ガウルは心底嫌そうな顔をした後、小さく肩を落とした。

さすがに他人に死の宣告が出来る程図太い精神は持ち合わせていない。


「…泣かれたらどうしよう」


「慰めてやれば良いだろう」


「俺泣かれるの弱いんだよなあ…」


「涙位ただの塩水だと思え」


「あんたどんだけ涙慣れしてんだよ」


「今まで散々慰め役をしてきたからな」


「……ちょっと尊敬するわ」


まあ行ってくると肩を落としたまま客室をガウルが後にする。


キースは暫く目を閉じた後、覚悟を決めた様な目でペンを手に取ったのだった。


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